前回に引き続き、バンドネオンの製造時期を確認していく方法を、さらに掘り起こしてみます。
前回は製造番号をベースに製造時期を判断する方法を記載しました。
今回は、昔、私が楽器を始めたばかりの頃、シリアルナンバーと教えられた番号が以下のように刻印されている楽器が少なからず残っています。
この番号がシリアルナンバーかどうかは、私自身も疑問があるところで、むしろドイツからアルゼンチンに正規に輸出された楽器にのみ刻印されている輸出番号とでもいいましょうか、その方が納得がいくのですが・・それでも製造時期を判断する材料にはなるので非常に重宝します。
 
 
このS/Nと教えられた番号は、恐らく戦前製の最新のものは21000~23000番台が最終的な番号かな・・と思います。
Alfred Arnold社製バンドネオンは1911年以降、戦前製で約30年程製造されてます。
単純計算ではこのS/Nは7000番/10年で進むと考えられます。※無論、最初の10年より、最盛期である最後の10年程の方が製造台数が多いであろうことは推測できます。
 
 
この計算で行くと、S/N15000番台中頃以降が、戦前最後の10年1930年代製造の楽器であろうとおおよそ目安はつけられます。
丁度15000番台にあたる楽器を1台所有していますが、これは右側面カバーの透かし彫りは1stTypeになります。
※現在、修繕に出しており、戻り次第ここに情報として画像アップしてみます。この楽器の製造番号を確認すれば前回の記事との整合性も出てくるかなと考えています。
 
ちなみにS/N16000番台中頃には既に2ndTypeに切り替わっていますので、こうしたことからも前回の記事通り、1930年代製造の1stTypeがごく限られた数であることが概ね推測できます。
 
製造番号は前回の記事に記載した通り、一部の楽器は既に製造年月が控えられており、それを元にすれば自身の楽器の製造年月の判別に生きてくると思います。しかし、製造番号は楽器の内部にスタンプされており、基本的には自分の楽器でなければそうそう確認することはできません。
 
しかし、このS/Nとされる番号については楽器表面に刻印されており、これを目にするチャンスは製造番号よりは遥かに多くあると思います。よって、製造番号よりもS/Nを理解できた方がより楽器の製造時期については見極めやすいと言えるのではないでしょうか。
前回及び今回についても、かなりマニアックな内容ではあります。ここまで興味がある方もそうそういらっしゃらないとは思いますが、あえて記載したのは、楽器を多数所有している人間でない限りなかなかこうしたことはわからないであろうといった観点からです。
バイオリンなどのようにラベルや鑑定書等があれば、楽器の事を把握しやすいのですが、バンドネオンにはそうした文化が無かったのでしょうね。

次回は、この製造番号、S/N(かどうかわかりませんが・・)をベースに、マイナーチェンジが多いバンドネオンならではのパーツ一つ一つから、製造時期を見ていきたいと思います。ここまでわかってくると、製造番号やS/Nは特に確認する必要性はなくなってきますね。