【質問】典型事例の習得,「潰す」こと,処理手順,「理解」について | 司法試験のあるきかた

司法試験のあるきかた

試験合格を運任せにしないための方法論を考える

典型事例の習得について

 

「論証集を読んでも何の論証でどう使うのか分かりません」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143205242858?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「予備論文でFをとった科目は入門講座からやり直すべき?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143041922538?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

 

教材を「潰す」ことについて

 

「教材を『潰す』とはどういうことか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143033611754?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「潰すというのは全て他人に説明できるレベル?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143408422378?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

 

処理手順について

 

「現場思考型の問題に対する処理手順はあったか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143019476970?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「論文問題の処理手順はどうやって身につけるのか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/142784544234?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「処理手順は各科目でどの程度精緻化していたか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143098882282?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

 

理解について

 

「一つの論点についてどこまで深く理解していたか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143384134890?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「ある問題を理解しても答案を書けないが,何が足りないか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143259868138?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「理解中心の勉強でも,実際に書く練習は必要か?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143233010666?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「判例はどこまで押さえるべきか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143260515818?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

「論証のど忘れはあったか?」

https://ask.fm/Ernie2326/answer/143523531498?utm_source=copy_link&utm_medium=iOS

 

 

司法試験の勉強は,数学に似ている所があるなあと受験生の時によく感じていたのですが,その理由の一つとして,基本的・典型問題をしっかりと自分の中に定着させることの重要性が高いということが挙げられます。

論証パターンと呼ばれるものは,基本的には数学の「公式」みたいなもので,数学の公式と同じように問題に応じて公式を変形させて使わなければ適切に問題を解くことができません。しかし,公式を変形させる応用力を身につけるためには,まずは公式をそのまま使えるようになる必要があります。そして,公式の使い方を覚える,身につけるために数学の問題集はまず,「公式をそのまま使えば解ける基本問題」を掲載している場合がかなり多いと思います。

そのような問題をまずは自分で解けるようになって初めて,応用問題へ挑戦するための前提が整うのです。

このような数学の勉強方法というのは,司法試験でも威力を発揮するように思います。「この論証はどうやって使えば良いのか分からない」という事態に陥ったときは,その使い方が分かるまでそこで立ち止まって考えるようなことはせず,とりあえず典型問題の演習をしてみるのです。そうすると,論証集を読むだけでは分からなかったその論証の実用性や場合によっては論証内容の問題点などが手に取るように分かります。読む・講義を受けるだけでは分からない,情報の必要性を自分の肌で感じるようにしましょう。

 

 

話は変わって,「潰す」「回す・○周する」「理解する」という司法試験受験の勉強においてよく耳にするこれらの言葉について述べておきたいと思います。

まず,「潰す」という言葉を,「一周した」とか「一通り解いた」という程度の意味で使わない方が良いと思います。言葉の用法は個人の自由ですし,厳密な定義も規定もありませんから強制はしませんが,使わない方が良い理由はきちんとあります。

それは,「教材を潰した=その教材に用は無いと錯覚して力を付けられないままどんどん色んな教材に手を出してしまうという泥沼状態を避ける」ためです。

僕の知っている人で,周りから「優秀だ」と言われ,すごく簡単に「司法試験合格に○○先生の本(演習書でも可)は足りない」「○○の本はとりあえず潰した」と平気で言ってのけてしまうような人がいました。読書量は僕なんかより断然多かったのですが,司法試験・予備試験の勉強は長期化しており,試験に合格するまでになかなかの苦労を重ねているようでした。

僕はその人を見た時に,こちらのブログの記事を思い出さずにはいられませんでした。↓

https://ameblo.jp/getwinintest/entry-10984336481.html

ロースクールでは特に,司法試験に向けた勉強をどれだけしているかというよりも,学生が興味ある本や演習書にどれだけ精通しているかという点が学生同士の評価軸になることが多いです。

その時点で既に司法試験合格という目的を見失っているような気がしていましたが,僕には彼らを咎めるだけの説得力も,止めるだけの影響力もありませんでした(説得力が無いというのは,理屈が通っていないということではなく,彼ら自身が説得力を感じるような状態・状況に僕自身がなれていなかったということです。話者の属性で説得力を判断するのはとても馬鹿馬鹿しいとは思うのですが,相手が,合格者でないなら説得力が無いと考えておりかつ自分が合格者でない状況では,僕が説得力を感じさせるようなアドバイスをすることなど到底不可能なのです)。

複数回目の合格者に話を聞くと,必ずと言っていいほど「合格した年は教材を絞り込んだ」「一冊の教材を完璧と言えるまでやりこんだ」「使わない教材は捨てた」等,手を広げずむしろ意識的に狭めて合格したと話していました。手を広げずに一冊をとことん潰すという意識は司法試験の合格において極めて重要なことなのだと思います。

 

次に「理解」という言葉についても,どうしても言っておきたいのでここに書いておきます。

「理解しろ」という言葉は合格者のみならずローの教授や予備校の講師まで色んな方が受験生に向かってアドバイスするところなのですが,果たしてその中身は何なのでしょうか。僕が受験生の頃は不思議で仕方ありませんでした。なぜ,こんなにも中身が不透明なアドバイスがまかり通ってしまっているのだろう,一体「理解」って何なのだろうと。「司法試験は基本を押さえていれば受かる試験だ」ともよく言われますが,いやその基本っていうのは一体何でしょうか,というのと同じ種類の疑問でした。

 

結論から言えば,「理解」というのは,自分自身の言葉で自由自在に説明ができる『状態』を指しているのだと思います。

ただし,先のaskの回答でも言及していましたが,理解した瞬間に自分の頭の上に電球マークがピコーン!と現れるわけではありませんから,必ず「理解しているかを確認する作業」が必要になります。

そして,理解しているかを確認する作業のうち,一番手っ取り早いのは,他人にその分野の講義をすること…ではなく,その分野の問題演習をして答案を書いてみることです。

答案というのは,自分で問題の所在やその解決方法・具体的な事例における帰結を読み手に説明する場所で,答案の記載内容はそういう説明の集合体です。そうだとすれば,他人に説明するのにいちいちゼミ等を開いて講義する必要などなく,自分で答案を書いてみることが「他人に説明する」という行為をも含んでいると言えるでしょう(その説明の巧拙は,模範答案例と突合せたり他人に答案を読んでもらうことでチェックすれば良いでしょう)。

他人に説明できるほど自分の中に知識が内在化していれば,その知識は「理解している状態にある」と言って差し支えないと思いますが,それは結局,「ある事項について文章化して答案として書くことができるようになっているか」という点から判断するのが最も手っ取り早いように思います。

 

そうすると結局,予備校講師やローの教授,合格者がのたまう「理解しろ」という言葉は「読みやすく適切なことが書いてある答案を書けるようになれ」と置き換えられますが,ここまで来ると「いやそうなるためにどうすれば良いのかを教えてくれよ」と言いたくなりますし,本当に当たり前のことしか言っておらず中身がないように思えてきます。「理解すれば答案が書けます」なんて言葉も,トートロジーの様相を呈してきます。

 

さて,このように滔々と理解の中身を解くだけでは,僕自身も中身のないことしか言っていないことになってしまうので,「どうすれば理解できるか=他人に説明できるようになるか=読みやすく適切なことが書いてある答案が書けるようになるか」ということを考えたいと思います。

と言っても,改めて考えるまでもなく,「実際に答案を書く」ことが一番です。もはや耳タコかもしれません。

「読みやすく適切なことが書いてある答案が書けない」ことの原因は人それぞれですから,まずは自分で答案を書いてみて,その原因を浮き彫りにする必要があります。

答案を書いてみた結果,

 

⓪そもそも答案の書き出しで何を書けばいいのか分からない

①具体的な事実から法律上の問題点を見抜けない

②法律上の問題点は見抜けてもどの条文の問題か分からない

③どの条文の問題か分かってもどの要件の問題なのか分からない

④どの要件の問題か分かっても規範の内容が分からない

⑤規範の内容が分かっても理由付けのやり方が分からない

⑥規範定立や理由付けができても当てはめの方法が分からない

⑦当てはめで反対の結論を支持する事実の排斥方法が分からない

⑧結局どういう結論をとればいいか分からない

 

みたいに問題点が出てくると思います(もしかしたら上記以外の点にも問題点を感じるようになるかもしれません)。

これらに対して,自分なりに対応策を用意しておきましょう。以下は僕自身の対応策です。一例ですから,この通りにする必要性も必然性も全くありません。

 

⓪…とりあえず模範答案例を読んで,書き出しがどうなっているか確認する(民法なら請求の内容からその根拠→要件という流れだな,とか,憲法ならまずは制約されている具体的な自由を確定するんだな,とか,商法なら,会社の具体的な行為の効力を問われていればその行為を切り出してから,その行為に必要な手続の履践があったかを条文を挙げつつ確認していくんだな等)

 

①…まずはその事実関係ではそのような法律問題が出て来ると丸暗記してから,その理由を探す(平成29年民法設問3で,借地借家法10条1項の対抗要件が問題になるのは,実は土地が二つに分かれているという点が肝なんだな,とか,)。

 

②…条文の構造をだいたい覚えておく。その場合も,機械的に覚えるのではなく,条文の構造がなぜそうなっているかをうっすらイメージしておく(刑事訴訟法の捜索差押において「必要な処分」というのは刑訴法222条1項が準用する111条1項が根拠になるが,それを丸暗記せずにこれは111条1項(というかその条文の周辺)が裁判所の権能について規定しており,それを222条で捜査機関に準用するという形になっているんだな,とか)。

 

③…論証集や基本書,予備校の入門テキストで,一体どの要件の問題として位置付けられているのかを確認しておく。

 

④…規範は最優先で問題演習をしながら暗記する(暗記の時間を別に取る必要はなく,同じ問題を繰り返し解くときに,「あ,この問題はこういう結論になったよな…そういう結論になるためにはどういう規範を立てればいいんだ?」と考えながら規範を立ててみて,模範解答の規範との乖離を見ながら修正していく)。

 

⑤…規範の内容から,それに繋がりそうな理由付けを自分の頭で考えてみてから,論証集などでどのような理由付けがあるか確認してみる。自分の頭で考える時は,(i)必要性,(ii)許容性という観点から理由付けができないかを考える。

 

⑥…規範定立において,どのような考慮要素を挙げたかを確認する。また,最高裁判例や基本書・入門テキストではどのような考慮要素が挙げられているかを自分の目で見て確かめる。最高裁判例は明示的に考慮要素を挙げていなくても,実際の判断において特定の事項を考慮しておりそこから考慮要素・当てはめの方法が分かるという可能性もある。

 

⑦…反対の事実を排斥する理屈を自分でなんとかひねり出してみる。その際には,反対の事実に真正面から再反論する場合と,反対の事実を基礎づける前提の部分に攻撃する場合があり得ることを意識する。模範解答例に反対の事実に対する反論が載っていればそれを参考にする。

 

⑧…まずは法律論を離れた素人感覚で,どういう結論を導きたいかを考えてみる。法律論は突き詰めて考えると価値判断に理論武装をしたものというところに行き着くので,どれだけ論理が緻密に構成できているかと同じくらい,どういう結論を得るために頑張っているのかという点も重要だと思われる(試験委員も,あり得ない価値観を持つような人を同業者にはしたくないであろうと思われる)。

 

このように問題点に一つ一つ対応していくことによって,適切なことが書いてあり読みやすい答案が少しずつ書けるようになる=理解できている状態に近づくのです。

文字通りに問題演習をする「だけ」ではだめです。問題演習の目的は,究極的には答案を書けるようにすることですが,中間目的として「現時点での自分の問題点の発見と改善」がありますから,問題点を積極的に発見し,改善していきましょう。

 

 

上の⓪〜⑧の問題点の段階は,実はこちらの記事の思考順に対応しています。↓

https://ameblo.jp/getwinintest/entry-11261401063.html

https://ameblo.jp/getwinintest/entry-11273082770.html

 

自分の欠陥と対応策を分析する際には,ひとまず上記の思考順を参考にすると良いのではないでしょうか。

 

長くなりましたが,今回のブログ記事はここまでです。

 

 

ブログランキングに登録しました。

お手すきのときにクリックして頂けましたら幸いです。

 

にほんブログ村 資格ブログ 司法試験へ
にほんブログ村

 


司法試験ランキング