最もCDが売れた90年代メタルバブル
『ビッグ・イン・ジャパンの時代』
90年代、BURRN!が作り上げた“ビッグ・イン・ジャパン”路線が日本のメタル市場の主流に
日本で最もCDが売れ、BURRN!の発行部数も過去最大規模となった90年代。
METALLICAやGUNS N’ ROSESがスタジアムを沸かせ、グランジ・ブームがシーンの地図を大きく塗り替えていったアメリカやヨーロッパ等の世界とは別に、ここ日本では全く独自の現象が巻き起こっていた。本国以上にここ日本でファンを獲得した“ビッグ・イン・ジャパン”と称されるアーティスト達の活躍である。
YNGWIE MALMSTEEN
MR.BIG
FAIR WARNING
ROYAL HUNT
HAREM SCAREM
NIGHT RANGER
HELLOWEEN
BON JOVI
DOKKEN
DREAM THEATER
GOTTHARD
GAMMA RAY
JOHN SYKES
WILDHEARTS
TEN
以下はBURRN!編集長の言葉をそのまま掲載。
↓
80年代に「HM/HRは売れる」と判ったレコード会社がそれにすがるという体制が日本では出来上がっていて、90年代に入っても“ヘヴィ・メタル”の捉え方が80年代から脱却することはなかったんですよね。
何故なら、当時の日本のリスナーの好みはあくまで80年代的なものだから。
日本のお客さんに雑誌を届けるのがBURRN!の役目だから、求められているのは、あくまで80年代的なもの。
BURRN!の中のメインストリームはあくまで80年代的なものだ、という捉え方は、読者も、レコード会社も変わらなかった。
レコード会社が求めたものはとにかくメロディックなもの。
日本のレコード会社は独自に日本人好みのメロディックなバンドと契約するようになり、
アメリカでリリースされないようなものが日本ではCDで発売されるという流れができていく。
それは、ジャーマン・メタルでもそうですね。
1990年デビューのGAMMA RAYがいきなり大人気となったのも日本独自の現象だし、HELLOWEENも1994年に再び盛り上がる。
BURRN!が最も売れたのは1997年。
日本の音楽業界は日本人向けのバンドを見つけてどんどん売っていった。
いわゆる“ビッグ・イン・ジャパン”ですね。
カナダのHAREM SCAREMであるとか、デンマークのROYAL HUNTは本国では人気が無くてもBURRN!では表紙になる。
ドイツのFAIR WANINGも本国では全然知られていないのに日本ではビッグ。
イギリスのTENも本国では全然知られていないだろうけど日本ではCDが売れるという・・・。
1999年あたりから、さすがに海外で日本人好みの音楽をやるバンドが少なくなってくる。
洋楽だから、海外からの供給が途絶えてきてしまうとやるものがなくなっていくんですよね。
アメリカでもある程度認めれていて日本でもビッグと思われているものっていうのがどんどん少なくなっていったのが90年代の終わりから2000年代に向かう時期ですね。
1997年にピークを迎えたBURRN!の90年代は、言い換えると「ビッグ・イン・ジャパンの時代」だった。
アメリカのシーンでビッグなものが日本では全然ビッグじゃない、という状態がそこにあって、商業誌としてのBURRN!はどこへ向かえばいいのかと考えた時、僕としては日本の音楽業界の方向と合わせるのが一番求められている方向性だと思っていたし、だからこそ部数が増えた。
そしてそのままの路線で2000年代に突入していく。
90年代は日本のリスナー向けのリリースが圧倒的に多かった。
それらは海外では存在しないも同然なアーティストたちなので日本のHM/HR市場はガラパゴス化が進む一方。
日本の音楽市場における日本人リスナー向けHM/HRがあまりにも膨れ上がって、それをやるだけで精一杯な部分があり、だからこそ、21世紀に入ってその“ガラパゴス・バブル”が弾けて供給が一挙にしぼんだ時、BURRN!の対応が難しくなったという、そういう時代でしたね。
言ってしまえば“終わりの始まり”。
要するに、世界の主流ハード&ヘヴィ・シーンとは無関係に、
無名のメロスピ/メロパワ、メロハー、ネオクラ等を北欧などから探し出して聴くという日本独自のビッグ・イン・ジャパン路線により世界から取り残されてしまった。
しかもこれらのメロメタはメロディ愛好家向けなのでハード&ヘヴィを嗜好する今どきの若者達を取り組むことが出来なかった。
そして、今もなおこのメロディ至上主義路線が続いたままなので、日本のメタル市場はガラパゴス化しており、日本人メタル・ファンは高齢化が進んでいる。
ただし、ビッグ・イン・ジャパン・バンドが悪いわけでも年配のファンが悪いわけでもなく、
悪いのは、「海外の主流ハード&ヘヴィ・シーンを扱わなかった」こと。