米国のにほんじん。エンディングの日。 | 米国のにほんじん。

米国のにほんじん。

2004年に渡米。
米国の冷蔵庫の通称を持つひえひえのミネソタ州にひんやりと在住。
2 marriage, 3 kids, one full time job and 1 divorce laterの日々のことを、
つれづれなるままに日暮らしてきにメモ。





目の前に2つの書類が並べられた。

『君の選択だよ。日本に帰るか、アメリカに残るか。』



裁判所の会議室の一室。白いテーブルの上で、さらに真白で四角い。指を切りそうなほどにパッキリと裁断された、二つの同じ形の書類。



どちらにサインするかによって、私の人生が変わる。

子どもたちの人生が変わる。



この先一生の毎日が。



今まで山ほどしてきた人生の選択。でもこうやって目の前に形として現れたのは初めてで、

言葉を失くした。こういうものだったのかもしれない。

今までの選択も。形はおなじ。だけど内容が違う。



壁を挟んで顏を会わせることのないEXが、書類の内容を巡り、どなっている声を聴いていたのは数分前のできごとで。

弁護士にも食ってかかっていた彼の声を聞いて、

『やっぱりここにはいられない』

『この人と関係を断つには、日本に帰ってしまうしかない。』とおもっていた。



でも財産の全部をEXに渡して?

『日本に帰ってもどうせ子供の面倒なんか見るはずがないくせに!どっちにしろ子供を誘拐して日本に帰るつもりなんだ!あいつはそういう女だ!』

と今も言う男に子供を奪った、ひどい女だとさらに恨まれながら、財産を渡して、ゼロから日本でやりなおす??

仕事もやめて。

それはこの人の支配に負けて、すべてを奪われて、逃げかえることにならないか。



逃げた先の場所で、子供たちはどんな生活をおくることになるんだろう。



窓から見える空が今日は美しい。あおいあおい空だ。緑がうっそうとしげる大きな木。窓越しに緑の葉が風にゆれるおとまで聞こえてきそうで、芝が美しくかがやいていて、まるで性能の良いカメラで、しっかりとピントを合わせたような、外の景色。



(こんな場所にすんで、ストレスなんて抱えることあるのかな。。。)



10年前初めて来たアメリカで、そうおもった。

当時はコンクリートしか見えない小さなアパートで、ギリギリに自分を保ちながら朝から晩まで働いて暮らしていた。

東京のビルの窓の明かりは、一晩中消えることはなくて、心にできた塊をどうにかごまかしながら暮らしていた。



EXとひどい修羅場になって、崩れるほど泣いて公園にいたときも、見上げたアメリカの空は高かった。



2つの書類を前にして、言葉を失ったままの私に、

『子供たちをどこで育てたいの?君のゴールはどこにある?』と弁護士がうながす。



私のゴールは、子供たちにのびのびと育ってもらうこと。

生まれてきて良かった。ごはんを食べて、泣いて笑って、全部こみで、人生は悪くない。

それを伝えて行きたい。



だってそうだから。人生は悪くない。今だって、悪くない。自分を信じれば、また歩いていける。

今までだってそうだった。できないとおもったことだって、できてきたじゃん。やってこれたじゃん。



『私はアメリカに残る。日本には帰らない。』

私が告げると、弁護士がもう一度確認する。

『それは君の意志?アメリカに残りたい、という君の意志だね?裁判官に告げて、記録に残したら、もうあと戻りはできないよ。』



『これは、私の意志です。I will stay in America. This is what I want to do.』



一つの書類にサインする。ここ半年夢見た日本の姿が消える。



東京の街。また帰ることになるかもしれないと頭をよぎった満員電車。

交差点で吐き出される無表情の人の波。暗い地下鉄。酒のかおりがする路地裏。

闇に灯る赤ちょうちん。



『君は強い女性だね。』サインされた書類を持って、部屋から出ようとした

弁護士が、ふりかえって私に言った。

『日本人の母は強いんだよ』日本人の母を持つ弁護士が私の答えに笑う。



裁判所の手続きが終了して、最後に女性裁判官が言った。



『これであなたたちのドラマは終わりなのよ。あなたたちの結婚はおわった。でも子どもの親としてこれからは協力して、良いモデルになって行かなくちゃならない。人生は良くなる。Life WILL get better.』



LIFE WILL GET BETTER.



これで私のドラマはおわりなんだ。

ここからまた新しい人生が始まる。



後は今日の書類をまとめて、裁判官がサインをすれば、終わる。



『絶対に別れてやる。』そう心に誓って宣言した日から6か月と1週間かかった。

いや、もっと長い長い長い時間がかかったけど。もう、どこまで我慢すればいいのか、壁を見つめてトホウに暮れることはない。



できた。別れられた。



ここからは、誰のせいにもできない私の人生だ!!!!

どんな選択も、自分の意志で。



LIFE WILL GET BETTER!
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人生の荒波よ!かかってきやがれ!こっからばっさばっさと乗り切ってイキテヤル!!