思い出深い会社を辞める時
会社の先輩が
退職祝いにと何話か集められたムーミンの絵本集をくれた。
20代半ばで当然子供もいなかった私に絵本をくれる、という
その行為が、会社の借り上げアパートの廊下に段ボールで巨大クリスマスツリーを
出現させた、アーティストの先輩らしくて、とても嬉しかった。
絵本の中の一話。
ムーミン谷の谷の絶壁に、誰からも遠ざかって1人住むおばあさんがいました。
おばあさんは大事な物が汚れるのを嫌がって人を家に招待することもなく、毎日長いことかかって集めた宝物達を磨いて、それを眺めることを日課として幸せに暮らしていました。
という滑りだしで始まる物語は、この谷の絶壁のおばあさんの家に嵐が来て、大事にしていた食器が
こなごなに割れ、磨き上げた床がはがれ、壁が飛んでしまって、宝物だと思っていたものがすべて
吹き飛んでしまう、という展開を迎えて。
でも次の日の朝、おばあさんは何もなくなった家で、ひとつ残ったイスに座って、初めて本当に
幸せな気分になるのでした。と終わる。
これを読んでから、モノはいらないのだ。と強く思った。
本当に必要なモノなんて本当は何もないのに。
モノに埋まったこの家はいったいどういうことなのか。
片づけても片づけても永遠に続く掃除と洗濯物の山の前で途方に暮れる。
そしてモノに溢れたこの家に、時間に追われ稼いだお金をせっせと使ってまた
せっせとモノを運びこむ
現代世界の奴隷であるところの私。
嵐を待つしかないのか。
嵐を呼ぶしかないのか。
(その前に黙って掃除をしようよ、という言い訳の)
日記。