今回は、前年にお渡しした
オーダー猫ブローチのおはなしを。
東京にて、デコアートの講師として
色々な方面で
ご活躍の方からのオーダーでした🌟
ブログから来て下さって
「やっと、探していたものを見つけました!」
と、言って下さいました。
『アビシニアン』で
もしできるならば、装飾には
星やキラキラのモチーフを入れて欲しい、
とのこと。
「バニラ'sの猫」らしさもありながら…
その方の脳内イメージよりも
「ワクワク」が増すといいな…🌟と。
細かなイメージを少しづつ、少しづつ。
何度もやり取りさせて頂きました



~アビシニアンの、小さなプリンセス~


















不思議の森の、奥深く。
野ばらの道標を辿っていくと
細くてノッポの樹々たちが
まぁるく円を描くように立っています。
円を囲んで、みんなが胸を逸らして
立っているので
昼間にはその場所だけが
眩しく暖かなリビングに。
夜には
優しく照らす月のスタンド、
屋根裏部屋に。
薄目を開けると
明かりが滲んで、ユラユラします。
そこは森の小さなプリンセス、
リトル.アビィのお気に入り。
小さな王女の丸い目は
深い森と同じいろ。
『大好きなこの森と同じだから…
私の中でも誇らしいの』
アビィにはティアラなどありません。
それでも、森の全てが
『アビィは王女』だと知っているのです。
アビィは夜が好きなのでした。
何故って…。
誰にも内緒なのだけれど。
(父さまにも、母さまにも、ね。
)


~~ひと月前の、月が糸の様になった夜。~
いつもみたいに見上げていたら
ホウキボシ
箒星がね、沢山、たくさん!!















アビィは今までに、1つ、2つは
見たことがあったのだけれど。
(その夜は、月も静かにしていたので
よく見えたのかも知れません。)
その中の1つの箒星の
寝間着の裾が大きく破れておりまして。
その裾から、何やらキラキラのカケラが
落ちて来るのが見えました。
アビィが「あ!」っと思ったのと
箒星が破れた裾に気づいたのが
同じ時。
箒星は、誰より大きく破れた裾が
恥ずかしくなって
俯いてしまったものですから、
そこから「カクン」と
真っ逆さまに!
アビィのいる、森の屋根裏めがけて
落ちて来ました。
アビィは目をパチリと開けて
1つも漏らさないように見ていました。
『あのぅ……僕の裾から落ちたカケラが
当たってしまって、ごめんなさい。』
衝撃もなく。
ノッポの樹々たちの小さな手に
捕まりながら降りてきた、箒星。
アビィの体は
箒星の散らした美しいカケラを受けて
青や緑に、瞬きました。
『いいんですのよ。お気になさらないでね』
アビィは
箒星が大変恐縮しているので
出来るだけ優しく言いました。
『ちっとも痛くは無かったのだし、
こんなに綺麗なお土産を頂いて
嬉しいくらいだわ!』
("そうなんだ…痛くないのか…")
箒星は小さく呟いて、
煌く砂の様な溜息をつきました。
そうして、2人は夜の森で暫し
お喋りをしました。
アビィの事や森のこと。
箒星が来た、遠い遠い空のこと。
箒星がおうちを飛び出す時に、
月のドアに挟んだ裾を引っ張って
しまったことなど。
……ふと気がつくと、
箒星の向こう側に、ノッポの樹々が
透けて見えています。
『さて、僕はもうすぐ、帰るんだよ』
急に寂しくなったアビィに、
箒星が続けて言います。
『また、こんな"糸の月の日"に。
いつかまた、出かけてくるからね。』
本当の本当は…。
あの、同じ箒星にはもう、
会えないのかもしれません。
それでもアビィは
またあの"糸の月"の夜を待っています。
『君は森の王女さまなんだね!
ティアラ付けて無いけど…ね。
森と同じ、綺麗な眼だね。
今夜僕が落としてしまったものは
僕のひと粒、一粒だから。
僕は屑星で、"王子さま"では無くて
申し訳ないんだけど…。
それでも……
星のカケラには違いないから。』
靄の様に消えていく、箒星は。
最後の最後まで
何もかもが煌いていました。
アビィは王女らしく、毅然として
箒星とお別れをしました。
その眼の縁にも
箒星のカケラがくっ付いて
まるで涙のように見えたのでした。

















アトリエ.バニラ'sの
ちょっぴり長い、ものがたり。
旅立ったアビィは無事に着いて。
とても気に入って下さったご様子で
心から安心しました。
今は、箒星のカケラのような
キラキラがたくさん溢れる
お部屋で暮らしています。
小さな小さな
アトリエ.バニラ'sを
見つけて下さってありがとう。
バニラの部屋に
そっと立ち寄って下さった方々にも
アビィのものがたりを最後まで
読んで下さった方々にも
ありがとうを、バニラより
🍨

