お盆ですよ。


 いったい、何が帰ってくるのかしら。


 お供えに、虫がたかっているわ。


 バカみたい。


 四十九日で生まれ変わるなんていってるくせに。




 古来より、人間=死ねば仏や神になるなんて考え方は、なかった。

しかし、時代がすすむにつれ、怨霊や権力者のわがままがまかり通るようになると、変化した。


 人間は死亡すると、通常死者の国(梵語・プレータローカ)に赴く。

 伝統的な神道も、同じ考え方。

 つまり、根の国へと赴く。

 

 徳のある亡者は、割と楽しい生活を送るが、そうでない者は、空腹や他の亡者による暴力に悩まされるという。


 先祖は仏にも神にもならない。

 黄泉で、亡者となって生活しているのだ。


 優しかったじいちゃんばあちゃんたちが、よれよれの姿で、他の死人に殴られ、飢えに苦しんでいる・・・。


 ふつうの人間ならば、決して信じたくない話だ。


 しかし、供え物をし、様々な儀式をしたとしても、先祖たちの苦しみは消えるだろうか?

 そもそも、いらぬ想像をして、勝手に苦しんでいるのは、残された人間のほうではなかろうか?


 瓶に石を詰めて、池に放り込んでみる。

 当然、重いので、瓶は沈んでいく。

 池のほとりで、いかにまじないをしようとも、泣き叫ぼうとも、瓶は浮上しない。


 それと同じことだ。


 真夏の熱気で急速に劣化していく花束や供物。

 亡くなった者たちにとって、なんの意味もないものだ。

 ただ、宗教家や商人が喜ぶだけだ。


 先祖たちは、冥界で安らいでいるのだから。

 人間は、今生きている隣人に注意を払うべきだ。