~チャンミンside~
「なぁ、正門のところにおまえを探してる人がいるぞ?」
そうキュヒョンから電話をもらった時、僕は教授に借りた資料を返しにきた帰りで。
「なんだろ?・・すぐ行く。」
そのまま正門までの道を急いだ。
「チャンミンッ!!」
キュヒョンによばれたのは正門よこから続く遊歩道のベンチ。
ふとキュヒョンの隣に視線をうつしたら、・・一瞬誰か分からなくて。
「チャンミンくん。・・はじめまして、・・ではないですね?」
ニコッと笑った口元で、
「ユノ、・・のお兄さん。」
───そう気づいた。
心配そうに振りかえり帰っていくキュヒョンに軽く手を振りながら、ユノのお兄さんが僕を訪ねる理由をぐるぐると考えていた。
────なぜ僕のなまえを?
それに、大学院まで来るなんて。
ユノに聞いた?・・今さら?
わからない事だらけで落ち着かない僕を見て、ふっと笑みを零す。
「突然訪ねて悪かったね。・・ここ、寒いからどこか入らない?」
近くのカフェまで案内しながら、・・・やっぱり口元が似てる、ってぼんやりと考えていた。
「ユンホには内緒なんだ。会いに来たこと。」
眼鏡の下の切れ長の瞳と真っ直ぐな鼻梁はどこか冷たそうに見えるのに、砂糖とミルクをたっぷり入れた珈琲を美味しそうに飲む姿はやはりユノのお兄さんだ。
「そうですか、・・でも、どうして?」
今さら、・・と思う気持ちが拭えない。
もうユノと会わなくなってひと月以上、明日予定されてるらしいユノの送別会で会うだろうけど、・・多分それが最後。
「んー?・・きみをこの目で見たかったんだ。・・直接確認もしたかったし。」
お兄さんの言ってる意味がまるで分からない。
何も言わない僕に怪訝な顔を向けることなく、穏やかに話しはじめた。
「若いときからユンホはやんちゃでね。親の言うことも兄達の言うことも、まるで聞かなかった。でもほら?あいつ、なぜか憎めないでしょう?親父なんてユンホにだけは無性に甘いんですよ。」
僕の兄達とは違う愛情溢れる物言いに、ちょっとだけユノが羨ましい。
「今回は急に、イタリア行くから親戚に話をつけて欲しいって言い出して。それも、最初慣れるまでお世話になるけど、その後は干渉しないでほしい、とか自分勝手なこと言ってきてね。」
「・・・店でのユンホはどう?楽しそうに仕事してる?」
急に話を振られてハッとなる。
「え?・・あ、・・まぁ、それなりに、・・です。」
売上げも好調らしいし、ドンへさんはユノの仕事っぷりを褒めるけど、仕事をさぼってまで僕を優先するイメージしかない。
「はは、厳しいな~、チャンミンくんは。」
「接客もやりがいがあるみたいだけど、どうやら厨房の勉強をしにいきたいらしくて、・・って聞いてるよね?」
え?────聞いてるわけないじゃん。
僕より余程遠い関係のバイトの女の子に初めて聞きましたけど?
なんて思っても口には出さない。
それにしても妙な雰囲気。
ユノのお兄さんは僕たちの事、どこまで知ってるのだろう?
「─────で、可愛い弟の為に、直接聞いてみたくて。」
「あいつの独りよがりかもしれないし、ね。」
─────やっぱりまるで分からない。
