~チャンミンside~
~♪♪~♪~~♪♪
「チャンミン?」
「・・・・。」
「・・チャンミン?・・どうした?」
「────────イリヤ兄さん。」
バックエリアの隅、PCやモニターの置かれた店長用の机まで腕をひかれて、椅子に座るよう促された。
ドンへさんに何を言われたか、・・記憶も曖昧で。
────突然、修行しにイタリアの親戚を訪ねる、とか言いだして。
────ここも、クラブも、多分オーナーが代わるけど、悪いようにはしないから、って何度も言われたけど、俺も訳わからなくてさ。
困ったように眉を寄せるドンへさんの表情だけよく覚えている。
────おまえら、・・本当にどうしちゃったの?
僕こそよく分からないよ。
でもそれがユノの出した答えなんだろう。
将来の為に真剣に修行するってこと?
イタリアって?
今からシェフにでもなるつもりかよ?
ああ、でも許嫁のあの子、・・春に大学生って言ってたから、4年後を見据えた計画なわけ?
もうユノの中に僕の存在はないんだ、って、
呆気ないな、・・・忘れっぽいユノらしいや。
それから僕は一言も喋らず、仕事帰りの枯れ葉が舞う木枯らしにたまらなくなって、・・思わず電話してしまった。
「チャンミンからの電話なんてめずらしいね。・・今、家にいるけど、・・来る?」
「ん、・・行っても、迷惑じゃないですか?」
「何言ってんだよ!ちょうどひとりで飲もうかな、って思ってた。ひとりより一緒の方がいいに決まってんじゃん。」
───つまみ、作ってるから早くおいで?と優しく言われて。
近くにリカーショップがあったから色んな種類の酒を買っていった。
どんな時も温かく迎えてくれる兄さんに、少しだけ寄りかからないと、・・・立っていられない気がした。
「はい、かんぱ~いっ!!」
カチンッとビールグラスを合わせる。
「ちょっと久しぶり。・・電話嬉しかった。」
本当に嬉しそうにサラダやチーズを盛った皿を僕のまえに差しだすから、僕も少しだけ嬉しくなる。
兄さんの笑顔は伝染するんだね。
お互い、いい感じに酔いもまわった頃。
兄さんの手がポンポンと軽く僕の頬を撫でた。
「・・・チャンミン?また恋人と何かあった?」
「え?・・や、べつに、・・///。」
俯いた僕の頬に添える手、それが知らず知らずのうちに力が入り、
その手をやんわり退けようと、自分の手を重ねた瞬間。
「チャンミンの恋人、────ユノ、だっけ?」
「えっ?///」
突然のことにビクンと肩が跳ねた。
「ホームセンターで、会ったよね?あれが、・・恋人のユノ?」
びっくりして声がでない僕を、ふふ、・・と笑った兄さんがギュウ、・・抱きしめてきた。
「あ、・・あの?///兄さん?ちょっと、離して。」
その手は一向に弱まらず、もぞもぞする僕をさらに深く胸元にいざなう。
「────チャンミン。こんな兄さんでごめんな?」
「俺は、ユノ、の代わりにはなれない?」