~チャンミンside~
「帰さねーよ。」
低く抑えたような声。
まるで感情をよめない固い表情。
「気楽な関係ならいいんだろ?・・乗れよ?」
店の前に横付けした車を指さした。
「ユ、ユノ?」
昼間は完全に無視していたのに、───どうして?聞きたいけど、有無を言わせないその背中。
とてもそんな気分でも雰囲気でもないのに、なぜか抗うことが出来なくて。
「・・連絡しなくていいの?」
対向車のライトに浮かんでは消えるユノが、真っ直ぐ前を向いたままポツリと。
「え?」
「イリヤ兄さん、だっけ?・・一緒に住んでんだろ?」
淡々と話す口調に、逆にユノの憤りが痛いほど分かって。
────イリヤ兄さんとは、・・・
隠すことでもないし、ありのままの経緯を話した。
「・・べつに、どーでもいいけど?」
────まったくそんな雰囲気じゃないよ。って言った時、少しだけ口端があがったのを見逃さなかったけど、悔しいのかわざと冷たく言い放つユノ。
「ま、別にユノには関係ないけどね?」
意識して軽い調子で言ってみれば、
「まーな、」
って冷たく返される。
僕の恋人を奪ったり、それでもフラリとユノんちへ行く僕を優しく受け入れたり、
その頃の2人に戻ったようで、・・・
ホッとしたような、───
それでいて胸を刺すような痛みには気づかないフリをする僕もいて。
久しぶりのユノの部屋は酷い荒れようだった。
呆然と立ちつくす僕の背後から首筋に唇をおとして、
「気にするな、・・おまえはベッドさえあればいいんだろ?」
両手がさわさわと身体中を弄ってきて、執拗なほど首筋を往復する唇。
「────先にシャワー!!!」
思いっきりユノの身体を押しやった。
嫌だ、と言うのを、じゃあ、帰る!!と脅したらしぶしぶ身体を離して。
ユノのいない隙に手っ取り早く部屋を片付けた。
駄目だよ、ユノ?
こんなんじゃあ、やっぱりユノには僕が必要だと、・・勘違いしちゃうだろ?
シャワーから出てきたユノが部屋を見た途端、なぜかムッとしてキッチンに行ったまま戻ってこないし。
僕の着替えを入れてあった引き出しはそのままになっていたから、適当に下着と部屋着をだしてシャワーへ向かう。
チラッとユノに視線を向けたら、シンクに両手をついてジッとしたまま動かない。
─────なんだよ?
そう思ったけど、聞くのはなんだか怖い気がして、そっと視線を外した。
────そういえば、くたくただったんだ、とシャワー浴びたら嫌でも思いだして。
ソファーに座るユノの膝にちょこんと座ったら、
「・・重い。」
冷たく言われたけど、ユノの両手は自然に僕の腰に添えられる。
「ね、・・僕、疲れて寝ちゃいそ。早くシよ?」
ユノの髪に指を差し入れて梳くように撫でる。
触れるか触れないかのキスを何度か、
ユノの右手が僕の後頭部にまわったのを合図に深くなる口づけ。
スルッと入ってきた舌を絡めだしたら、・・もう止まらない。
「・・ハァ、・・ユノ?・・ん、・・ベッド、・・行こ、・・?」
角度を変える隙になんとか言葉を発して、ゆっくりと立ち上がった僕を、少しでも離れることは許さないとでも言うように後頭部と背中にまわる腕はさらに力強く、絡ませた舌も離れそうになかった。