~チャンミン~
─────どうしてあんな事しちゃったんだろう、・・・
そう後悔しても、────遅いのに。
「おい、今週中に課題提出ってさ、いつ帰ってくんだよ?」
我慢の限界、って感じの声で電話があったのが昨日。
当然のように、帰ってくる、って言い方をするユノに思わず頬が緩んじゃって。
「明後日には帰れると思う。」って答えたけど。
少しでも早くユノんちに帰りたい僕と。
「・・俺、絶対この何週間かで誰よりもユノさんに詳しくなったと思う。」って意味不明のボヤキをかますキュヒョンの頑張りによって、予定より1日早く提出する事ができた。
仕事だと思ったから連絡せずマンションへ来たのに、
見上げた先に明かりのついた窓。
────よし、驚かせよ。
なぜかそう思っちゃって。
珍しく玄関には鍵が掛かっていなかったし、中からはテレビの音もしていたから、気づかれず入れてしまって。
薄暗い廊下、明かりの漏れるリビングの扉が少しだけ開いたまま。
「前に来た時はキレイに片付いてたのに、・・彼女に振られたか?」
ドアノブに伸びた手がピクッと止まる。
どこかで聞いた声。
「うっせ。急に来るなよな。今日はたまたま居たけどさ、普段はこの時間めったに居ないからな。」
親しげに話すユノの声が聞こえて。
どうしよう、・・・誰かいるなんて思ってもみなかった。
「この間の食事会でおまえとも久しぶりだったろ?せっかくの兄弟なんだし、まあ、色々気になってな。」
兄弟、と言った男性が扉の隙間の先を横切るように歩くのがチラッと見えて。
いつか珍しくユノがスーツを着ていた日、・・あの駅前でユノと一緒にいた眼鏡の男性。
そういえば、涼しげな目元が似てる。
なんて、悠長にしてる場合じゃない。
バレないうちにここから出て行かなければ、・・なのに焦れば焦るほど一歩も足が動かない。
「それにしても、スンヨンは綺麗になっていたな。まだまだ子どもだと思っていたのに。」
「知るかよ?急にイ家と食事会だから来い、とか呼び出されてさ。仕事だ、っつの。」
聞きたくなくても自然に入ってくる2人の会話。
固まった身体は指先ひとつ動かす事も出来なくて。
「ふん、あんな道楽のような店。あのビルのオーナーなんだから、何も自分で店やらなくても賃貸料だけで充分だろ?」
「親父は昔からやんちゃなおまえばかりに甘くて困る。」
はぁ~、・・大きなため息と共に、ドサッとソファーに腰掛ける気配。
「いいんだよ、店の経営は楽しいし。」
ユノはキッチンに居るのか、カチャカチャとグラスを取りだす音。
─────まって、ユノ?
ビルのオーナーとか、店の経営とか、意味が分からない。
僕を好きだから、・・僕のすべてを知りたい、って。
──────そう、言ったよね?
「そういえば、スンヨンもおまえの店に行きたがってたぞ?」
「お嬢さまの来るような店じゃねえよ。・・ほら、お茶しか出ねぇから早く帰れよ。」
「はは、冷たい弟だな。それに仮にもスンヨンは赤ん坊の頃からの許嫁じゃないか?────なぁ、ユンホ。」
そして、キスをくれたよね?
───────────ユノ。
