~チャンミンside~
「…ねぇ。さっきのカウンターにいた人、…知り合い?」
ちょっとだけ遠慮がちに、…でも、聞きたくってしょうがない、って顔。
──────またか。
チッと舌打ちしたいのを、なんとか我慢。
わざと、ごまかすように。
「ん~?…ここの店長のこと?」
「もう。……その隣に座ってた人。」
…ったく、ユノのやつ!
誰にでも見境いなく色目つかいやがって!
ユノに初めて会った女の子は必ず聞いてくる、───あの人は誰?って。
それで僕が、ここで働いてるんだよ、…なんて言おうものなら、なぜかちゃっかりここの常連になっちゃってる彼女を何人みてきたか。
だったら大切な彼女をここに連れてこなきゃいい、って話だけどさ。
駄目なんだ。
ユノに会わせたい。
僕が今、つき合ってる恋人だよ、って。
それで、その子がユノの方がいいなら、ちょっと、っていうか、かなり悔しいけど、…まぁ、しょうがないよな?
─────ユノは魅力的だ。
それは、認める。
誰にでも誠実で、男らしい。
道端で、雨に濡れて座り込んだ見ず知らずの男を助けるくらいだから。
意外と神経質で、くよくよ考えちゃう僕と違って、大らかだったり、たまに大ざっぱすぎる事もあるけどさ、それもユノだとなぜか気にならない。
そんなユノだから、たまに気まぐれでユノを求めても受け入れてくれるのだろうか?
そしてまた、僕の恋人を奪っていくのだろうか?
「……紹介しようか?」
今日はめずらしくそんな気分。
ちょっと前に、ユノと身体を重ねたばかりだから?
───ユノの反応が知りたくなった。
パァ、と、わかりやすいくらいのご機嫌顔に。
僕の気持ちはどんどん冷めて。
あーあ。この子とは、一週間も保たなかったなぁ、…なんて、特に感慨もなく。
ゆっくり席を立って、ユノのいるカウンターまで歩いていく。
「────ユノ?」
覗いたユノはめずらしく機嫌悪そう?
「……なに?」
「あのさ、…彼女。ユノを紹介して欲しいってさ。」
「…へぇ。───いいの?」
ニヤッと笑う。
別にいいよ。
もう、好きでもなんでもないし。
いつでもユノにあげるよ?
僕の隣に座ったユノが、憎らしいほどの笑顔を貼りつけて彼女に甘い視線を送る。
あーあ、この子、僕とつき合ってんの、完全に忘れてるな。
まぁ、…いいけど。
───それが、僕の望むつき合いだから。
心が、壊れそうなほどの想いはいらない。
縛ったり、縛られたり、…うんざりだ。
僕は、ユノからも逃げた。
でもお互いの後ろ髪がひかれたのか、…なぜか今も細々と続いている。
───そんな関係がいい。
ユノとの身体の相性は最高で、やっぱり完全に手放すのは惜しいから。
僕の恋人ならいつでもあげるよ?
だってユノは、絶対に本気にならない、…この目の前の女の子にも、…これからも。