~チャンミンside~
歌番組の収録中、いつもならどんなに遠くても視界に入るところで待機しているあなたが、…いない。
「チャンミン、…どうした?」
落ち着かない僕に、ドンジュさんが心配そうに。
キョロキョロする僕を見て。
「…もしかして、…ユノ?」
ズバリ当てられて、…ちょっと恥ずかしい。
「…え、…あー、まぁ、…ね。///」
意味不明の相づちに、少しだけ眉をひそめながら。
「アイツは、次の依頼の件で隣のスタジオに呼ばれてるよ。」
「来週からは、大物女優だってさ。」
「宿舎に寝泊まりしろ、とも言われないし、楽になるんじゃねぇの?」
なんて言われて、…チクリ、と軋む胸。
「まぁ元の慣れ親しんだメンバーに戻るだけだよ。」
「…そうだ。チャンミンのバースデーは事務所で盛大にパーティーしような?」
淋しそうに笑う僕を見て、元気づけようとしてくれてるのは、…うん、、分かるんだけど。
あの人との契約も最初から知っていたことで、今さらどうにかして欲しいわけじゃない。
ただ、…今では慣れきってしまった僕の半歩後ろを歩くあなたの気配が、誰かのものになってしまうのが、…寂しいだけ。
忘れ物をしたと、───ひとり、楽屋に戻って気持ちを整える。
負の感情は、すぐに歌に出てしまうから、…逆に近すぎない関係の方が、あなたに会いやすいんじゃないか、とか無理やり考えて。
とにかく自分で自分を応援してる感じが、何だかおかしい。
───スッ、と背中に気配がして。
振り向く間もなく、背中からギュウッと抱きしめられた。
「────ユ、、ユノさん?」
「…ん。」
僕の首筋にかかる、あなたの前髪が少しだけこそばゆい。
「…何か、…あった?」
「…え?」
「…リハでの、歌。…ちょっと淋しそうだった。」
大きく襟ぐりのあいた衣装にあなたの息がかかって、…そのたび、ピクピクしてしまう。
「……み、見てない、…くせに。」
「見てたよ。…最後のほう。」
「………次のお仕事相手の方。…綺麗な女優さんなんですね。」
ふっ、と顔を上げたあなた。
「………気になる?」
クスッと笑う。
「…べ、別に////。…僕が、あのゴージャス美人の女優さんが苦手なだけで。」
あなたは少し、考えて────。
また、僕の肩に顔を埋め。
「…うん。……おまえにはさ、…もっと、明るくて、…優しい人がいいかもな。」
って、自分に言い聞かせるような言い方。
「ユノさん───?」
妙に違和感を感じて振り向いた僕の視線を避けて、──さぁ、行くか。って僕の肩をポンポンと叩き、素早く背中を向けてしまったあなた。
どうしてだろ?
───あなたの背中の方が淋しそう。