紅 -クレナイ-の人(25) | えりんぎのブログ




~チャンミンside~






───それからの僕たちはドンジュさんの目を盗んでは、宿舎で、たまに楽屋で、…軽く触れるだけのキスをしたり、ユノさんが背中からギュッと抱きしめてきたり。



「…はぁ、…2人きりにはいつなれんの?」


なんて、ため息混じりに僕の顔をのぞき込むあなた。


そんなこと、僕の方が聞きたいよ。


僕の前髪をクシャッ、と梳いて

「…おまえ、忙しいもんな?」

って、笑う。


僕は何だかいたたまれない気持ちになっちゃって。


常に側にいるのに、触れたくても触れられなかったり、…出来るだけ今までのように振る舞うのがもどかしいのは、お互い様なのに。


「あ───っ!…連れ去りてぇ!」


大きく伸びをしながらそんな事口にするから。


「…////!!ちょっと!!////声、大きい!」


咎めるように睨むけど。


ふふん、って鼻をならすあなた。


スッと長い指が顎に伸びてきて、クイッと引き寄せられては唇がおりてくる。


そんな事を一瞬でやっちゃうから、僕もドギマギしてる暇もなく、ただ呆気にとられて。


「……どうした?」


俯いて、何か言いたげな僕に不思議そうに視線を向ける。


「…あの、するなら、するって、…言ってからにして。」


「…ん?」


「…だから、…急すぎて、…何が起こったか分かんないのは、嫌だ。…損した気分になる。」


ちょっと目を丸くしたあなた、…ギュッとこぶしを握って。


「おまえ、…そんな事、言うな。…たまんなくなるだろ?」


ふい、っと椅子から立ち上がって離れてしまった。


僕はというと、…背中を向けるあなたにそっと近づいて、肩に手を置くや、…不意打ちのキス。


驚いてとっさに身体を引くあなたに。


「ふふ。……これで、いいよ。」


って、ニッコリ笑った。



「あ──────っ!!…もうっ///!」


突然、頭をグシャグシャと掻いたまましゃがみ込んで。


「……おまえ。もう今日は俺に話しかけんな。俺、…ちょっともう色々と無理。」

とか、訳わかんないこと、ブツブツ言い出した。





「おーい。そろそろ準備しろよー。」


楽屋のドアを開けながらドンジュさんが半分だけ顔をだして。


「あ?…何してんの?」


頭を抱えてしゃがみこんだ最強SPと、傍らに仁王立ちのタレント。


そりゃあ、変な構図だよな。


ドンジュさんも訝しげな表情。


「…コホ。…ん、まぁ…とにかくさ、急いで準備して。」


「あ、…はい。すぐ行けます。」


チラッと傍らに視線をうつしたら、その人はもう仕事の顔になってて。


僕はなにも言わず楽屋を出てスタジオに向かう。


───僕の半歩後ろ。

必ずあの人が見守っていてくれるから。