楽しいことがあっても、悲しいことがあっても、日々の仕事や日々の生活は変わることなく続く。


14年前、東京で制作会社に入社した。その時、2人の師匠ができた。駆け出しの私に、番組制作のイロハを手取り足取り教えてくれた先輩ディレクター。


フリーになってからはほとんど会うことはなかった。その人がよく行く呑み屋さんに時々顔を出し、年に一度ぐらい近況報告をする。ここ2~3回はタイミングが会わず会えなかった。




……突然の訃報だった。




彼がいなければ今の私はいない。東京で、フリーでディレクターを続けていられるのは、彼の存在があったからだ。


悲しむとか、冥福を祈るとか、まだそんなことは考えられない。ただ…当たり前のようにやってくる明日を、当たり前のように過ごしていくことに変わりはない。彼が50年、そうしてきたように。




「ありがとうございました」




ありふれた言葉だけど、どうか彼のもとに届きますように。