小説であれ、エッセイであれ、自分の知らない世界の扉を開けてくれる<本>が好きだ。
「博士の愛した数式」を、あまりの面白さに一気に読んだ記憶がある。
あれから十数年目にして再会した小川洋子さんと言う作家。
今回ご紹介するのは「妊娠カレンダー」で芥川賞を、「博士の愛した数式」で読売文学賞を受賞、
その他数々の受賞作を生み出している小川洋子さんのエッセイ。
<とにかく散歩いたしましょう>である。
本との思い出をつづったエッセイと言う内容に惹かれ購入。
読み進めていくと、小川洋子さんと私の間に多くの共通点を見つけ、嬉しくなることしばしば。
例えば、方向音痴の小川さんは芥川賞選考会にフランスからやって来る池澤夏樹氏を
<ちょっとその辺りから来ましたと言う風情を漂わせている>と表現していて、
<新大阪から3時間足らず新幹線に乗って来ただけでやれやれ今回も無事に到着できた」と
息を弾ませている私とは大違い>と書く。
私も常々、国内、国外問わず、旅行で飛び回っている身近な人達のお話を聞くにつけ、
個体値が違い過ぎる!と我が身の身体・心身能力の低さを嘆くばかりだったのだが、
小川さんにもそのような傾向がありそうと見た。
(尤も私の様にその身を嘆いてはいないと思うが…)
パン屋さんで5ミリほどの焼け焦げがついた5000円札を出したところ、店員が受け取れませんと
言うようなそぶりをした。小心者の小川さんは違うお札を出してパンを購入したが、
以来、そのパン屋さんではインチキなお札を使おうとしたブラックリストに載っているのではないかと
思い、買い物が出来なくなったとあって、凄く納得してしまった。わかるわかる~~である。
その他にも心配のツボにはまるとなかなか抜け出せない質であることなど。
読んでいて頷くことが多く、また年齢は幾つも小川さんの方が下であるけれど、
老化してきた自分の事をユーモア交じりに綴っていた事でますます親近感を持った。
各エッセイに本の紹介があってその本を取り囲むように想い出話が絡まって行く。
この本を見つけたのも、何かいい本無いかなとネットで色々探していた時に偶然出会ったもの。
その偶然の出会いがまた新たな本との出会いを運んでくれた。そんな幸せに満ちた良書だった
中でも一番惹かれたのがクマのプーさんに出てくる年寄りのロバについて書いた一編。
<イーヨのツボの中> 心配な事がある時は励まされるより一緒に沈んでくれる存在の温かみを
感じる。そんな内容。
この章を読んだらたまらなく私もロバのイーヨに会いたくなり、
<石井桃子訳のクマのプーさん>を購入。届くのが楽しみだ。
今日も日がな一日 本を読んでいる。
コロナで、ジムが2週間閉鎖。せめて<散歩でもいたしましょうか>(*^。^*)