お世話になったかなちゃんと旦那のあつしさん(あつ兄写真許して~)


島での定住旅行も今日で最後になった。寝屋親のように私を受け入れてくれた、かずゆきさんの家族、初日にさまよっていた私を泊めてくれた勝代さん家族、毎朝メカブ削ぎを一緒にやった元気なお母さんたち。毎晩、温泉に入らせてくれた寿々波旅館さん。そして、私の滞在のほとんどをつきっきりで面倒みてくれたかなちゃん。

 

かなちゃんは、大阪からこの島の漁師のあつしさんのヤー(嫁)になった女性だ。この島には寝屋子という特殊な風習の他に、嫁いで来た女性に島の親をつけるという習慣もある。かなちゃんにもこの島に、お父さんとお母さんがいて、本当の肉親のような関係を築いている。たったひとりでやって来たかなちゃんを、この島の制度はひとりぼっちにしない。

 

 

フェリー乗り場には、お世話になった島の人たちが見送りに来てくれた。

遠くに、ジンジロ車(手押し車)を引いてこちらに向かってくる人の姿が見える。みさこさんだった。

みさこさんは、私がいつも自分のメガブ削ぎが終わると手伝いにいかせてもらっていたおばあちゃんだ。浜でたくさんの家族が作業している中で、決まっていつもひとりで一生懸命メカブを削いでいるみさこさん。そんなみさこさんの姿に惹かれて、私は勝手に手伝いをさせてもらっていた。

初めて会った日、何も言わずに横に座ってみさこさんのメカブを削ぎ出した私に、「あんた誰?」と笑顔で聞いてきて、それから毎朝やって来る不思議なお姉ちゃんに、「ありがとな、ぼつぼつやって(ゆっくりやって)」と何度も言ってくれる可愛らしいおばあちゃん。耳が遠いからほとんど話しをしたことがなかったが、私はみさこさんの横で黙ってメガブを削ぐのが好きだった。




          見送りに来てくれたみさこさん

 

みさこさんはジンジロ車に乗せたワカメと海苔、こたつの上にあったというみかんとバナナを私に持たせてくれてた。

「ありがとな、またきてーな」

みさこさんの健康的に日焼けした顔に涙が見えた。

 

手を振るみんなの姿が小さく小さくなって、いつの間にか波の景色に変わっていった。



ERIKO