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約2ヶ月に渡ったアルゼンチンでの定住旅行も終わりを迎えようとしている。北部のサルタからブエノスアイレスへ戻ってすぐ、ウマワカで滞在させてもらっていたフアン・クルスのお父さん、世界的に有名なチャランギスタのハイメ・トレスさんのライブに招待していただいた。約100席しかない会場に200人を超すお客さんが詰めかけている。
ハイメさんがチャランゴを弾く姿は、嬉しい朗報を聴いた子供のように無邪気で楽しさが全身から溢れでていた。ハイメさんが最高に楽しい時、それはお客さんも一番楽しい時だった。ハイメさんと同じステージに立ってケーナを吹いていた日本人のヒカルさんとの出会いも、私にとってはとても刺激的だった。
2014年に中南米の旅を終え、再びラテンの地を踏みしめた今回の旅。2014年以降、私はネパール、ヨーロッパ、ロシアに定住旅行したが、それが本当に良かったと思った。違う土地に行って初めて、その土地の持つ意味のようなものがわかるとはこのことかもしれない。
正直私の感覚はラテン化してしまっていていた。例えば、地下鉄やバスの扉が開きっぱなしに走っても、偽札を渡されても、お金を騙し取ろうとされてもそれが当たり前のことのように感じるようになっていたのだ。ラテン国を離れていた間に接した違う国や違う人々との生活経験が、私の麻痺した感覚を客観的な視点に戻してくれたのだと思った。
一定の場所にい過ぎると、人は慣れてしまう。慣れが習慣になって次第に飽きてさえくる。そのありがたみや物事の本質が見えなくなってしまうこともある。目の前にある常識を常に疑いながら、世界を受け止める心を育てていきたいと思う。そして、さらに様々な人々がどのようにこの世界を見ているかを知りたいと思う。
今回滞在した、ブエノス・アイレス、パタゴニア、サルタ、フフイ、ウマワカ。揺れ動くアルゼンチン社会の中で逞しく、そしてしなやかなに生きていく人々の姿を忘れずに、また会いたいと思う。
今回の旅に多大なご協力をしてくださった、駐日アルゼンチン ラウル・デジャン大使を始めとする、文化部の柏倉恵美子様、大使館の皆様、在アルゼンチン 福嶌教輝大使を始めとする大使館の皆様、現地でのコーディネートをフルサポートして下さったモニカ・小木曽さん。そして、私を受け入れてくれたアルゼンチンの家族の皆様に感謝をこめて。
ERIKO