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10月25日の昨日は大統領選挙だった。投票は苗字の頭文字によって学校の場所が指定されている。アルゼンチンでは投票しなかった場合、罰金が科せられるそうで、国民のほとんどの人たちが参加する。政治に生活が左右される国民にとっては、罰金以上に自分たちの生活がかかった一票なのだ。
投票箱の横には、各党の代表がグループになって受付をしていく。大げさなライフルを持った軍人が投票ブースの前に鎮座し、周囲を見張っている。家族が投票を済ませるのに、結局2時間もかかったが、みんな友達や近所の人と話をしたり、誰も文句を言う人はいない。携帯電話やカメラは禁止の張り紙がしてあったが、受付が知り合いだったため、みんなが協力して写真撮影を手伝ってくれた。
ウマウワカで私が寝泊まりさせてもらっているのは、フアンさんの家の隣にあるヨガスタジオの中の一室。シャワーもベッドもあり、良い気が巡っている気持ちの良い場所である。アルダナさんはここで近所の子供たちにヨガを教えている。私も到着した次の日、朝5時からの大人のクラスに参加させてもらった。
フアンさんとアデルナさんが働く、「TANTANAKUY」のカルチャーセンターを訪れた。ここはフフイ県のNGOが設立した施設で、子供たちへ音楽との出会いの場をという目的で作られた場所である。広い施設内には、映画館、図書館、音楽室、ダンス室などが建物ごとに分かれており、観光客用のホテルもある。
ここへ来る子供たちは学校が終わった後、遊びに来る感覚で訪れている。今日は映画の上映、フォルクローレのダンスレッスン、サンポーニャのレッスンが行われた。
ここでサンポーニャという楽器について触れたいと思う。アンデスのフォルクローレは4~5人くらいの編成で、ケーナ、チャランゴ、サンポーニャなどの楽器を演奏するのが定番。コミュニティを大切にした音楽で、決して一人で成り立つことはない。シンクロティスモ(アンデスの土着の宗教とカトリックが混ざった宗教)の行事や巡礼の時になどに演奏される。
その中でもサンポーニャという楽器は、スペイン人がやって来る前から存在していた楽器で歴史が古い。また面白いのが、サンポーニャは2本で音階が揃うようになっている。なので、基本的には相手の吹けない音階を吹くという2人の掛け合いでコミュニケーションを取りながら演奏する珍しい楽器でもある。サンポーニャの存在はラテンアメリカを旅した時から知っていたが、楽器というのはどれも一人で演奏できるものだと思っていた。
多くの生徒たちは学校が終わると、サッカーよりもサンポーニャを習うのを楽しみにTANTANAKUYに通っている。フアンさんが生まれ故郷のブエノス・アイレスに帰るのをやめてここへ留まったのも、このサンポーニャの掛け合いのレッスンが、子供たちとの距離を縮めたのではないだろうか。
ERIKO