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 友人との約1年ぶりの再会。Osamuがアルゼンチンへ引っ越すと聞いてからもう8ヶ月が経った。いつも東京の渋谷でランチをしたりしていたのに、久しぶりの再会がブエノス・アイレスだなんて、その頃は何も想像もしていなかった。

  TVの仕事や通訳として活躍していたOsamuは今、生まれ育ったアルゼンチンで暮らしている。ニッカイ共剤会クリニックの待合室に現れた彼は、白衣がすっかり似合う病院の医院長になっていた。冷静で優しい雰囲気はまったく変わらない。

 ニッカイ共剤会はアルゼンチン唯一の統合医療(西洋医学と東洋医学)を行っている医療施設。受付や診察も日本語とスペイン語の2カ国語で対応できるようになっている。院内にはODAのマークが貼られた機械がいくつか並べられている。
 アルゼンチンの医療機関は無料であるが、検査予約も2ヶ月以上かかったりと、不便なことが多い。
Osamuがここへ医者として戻ってきたのは、そんな状況を緩和させるためという思いもあっただろう。

 

 日本から遠く離れた地で、病院へ来る患者さんと家族のような親しみを持って話をする彼の姿。知らない私にも気さくに笑顔で話しかけてくる人々。私はアルゼンチンにいるのだと改めて思う。
 人との出会いが、その場所をより豊かに見せてくれる。
Osamuとまた会う約束をして、クリニックを出た。
 急に夏が始まったような太陽の匂いが風と一緒にやってきた。

ERIKO