船から昆布を引き上げる

7/24

 早朝2時半、朝というよりまだ真夜中だが、一階へ降りるとすでに百合子ママが35人分のお弁当の準備を始めていた。近所の人たちもお手伝いに駆けつけている。

 外は霧雨だったので、
3時半頃まで昆布を乾かすかどうかを待って、紀夫さんの判断で決行となった。昨日の夕方上げた昆布を船からトラックへ積み、干場へ運ぶ。今日は天候がどうなるかわからないので、1本(100m)だけ干すことになった。通常は4~6本干すらしい。昆布は想像以上に固く、ネバネバしている。干場には20人くらいの人たちが手伝いに来る。


     昆布を乾かしに来てくれる方へのお弁当の準備


 昆布には裏と表があり、凹凸がある方を上にして干すのだが、なかなか見分けをつけるのが難しい。「それ裏っかえしだべ?」などと言われながら、気さくなおばちゃんたちの指導のもと、ひたすら干した。






 利尻島は島の真ん中に利尻富士という山がそびえ立っている、特殊な地形をしている。アイヌ語でリーシリ、高い山のあるところという意味を持っている。この山の影響で、島の南、北、西、東の天気がまるで違う。しかし天気予報は利尻島というひとくくりでしかないので、あまりあてにならない。なので、漁師自身が山にかかる雲の具合や雲と風を見極めて天候を判断し、漁に出るかどうかを決めるのだ。

「この時期は昆布にかかりきりになるから、晴れれば昆布を干して、雨が降れば休む。普通の夏休みみたいなものはないなぁ」

 昆布を干し終わると、みんなお弁当を持って、それぞれの職場へ向かい、通常の仕事をこなすのだ。このタフさには頭が下がる思いである。家に帰ってほっとしたのもつかの間、ウニの旗が揚がったので、紀夫さんはそのまま漁へ出かけ、その間百合子ママは、紀夫さんの漁が終わる
9時まで、掃除、洗濯などの家事をこなし、昼ごはんの準備をする。私は朝6時頃うとうとして少し仮眠させてもらった。


 お昼3時半から、朝干した昆布を回収しに出かける。昆布の甘いいい香りが漂っている。木箱の中に丁寧に揃えて入れ、小さな昆布一つも丁寧に回収する。今日は幸い雨が当たらなかったが、もし雨粒に当たってしまった場合は商品にするのは難しくなるという。乾ききらなかった昆布は乾燥機へかける。昆布漁は、天気の見極めとどれくらいの量をあげるかが大きな決め手となる。

 昆布を回収した後は、みんなでおやつを食べながら談笑する。みんな本当に楽しそうで、日本にもまだこういった密な人間同士の交流が残っていることが嬉しい。

 明日からは天気が悪くなりそうだと言われているが、どうなるかわからないので、明日起きてから何するかがが決まりそうだ。なんだか、日本にいるのに最近までいた北極圏のサーミの家とほとんど変わらないような生活スタイルを送っている。笑



⭐︎今日のご飯⭐︎


              アワビのバター焼き

ERIKO