コスメルの位置

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 現在滞在しているコスメル島は、マヤ語で"アー・クスメル・ペティン"と呼ばれ、"ツバメの地"という意味を持っている。イスチェルという豊穣の神様を祭る祭壇があったとこから、マヤのすべての王国から巡礼者たちが訪れていた、マヤの人々にとって大変重要な土地でもあった。
現在、祭壇は壊され教会へと変わり、ダイバーや観光客で一年中賑わう、有名なマリンリゾート地である。ホテルの周辺はレストランやツアー客の呼び込みなどが盛んに行われており、絵に書いたような観光地の雰囲気が漂う。

 この3日間、パソコンのトラブルで別の島を行き来したり、結膜炎の影響でとても仕事どころではなかった。まだパソコンは別の島で手元になく、ホテルのパソコンからこの記事を書いている。今日はコスメルへ来て、初めて観光らしいことをした。

 チャンカナブ海洋公園は、シュノーケリング、ダイビング、イルカと遊べるプログラムなどが混合したテーマパークで、メキシコ政府の管轄で運営されている海洋保護区である。
ホテルの前のツアーカウンターで働くエリックさんにツアーの相談をすると、片道送迎+昼食+ドルフィン・マナティープログラム+シュノーケリングで129ドルとのことだった。

 「上司に聞いたら安くしてくれるかもしれません」

 値段交渉に励むこと10分、ちょび髭を生やしたいかにもメキシコ人という感じのクラウディオさんがバイクに乗ってやって来た。

 「んー僕も高いと思うけど、会社で決まった値段だからこれ以上は下げられないな。まあ、外国人用の値段だし、メキシコ人でチャンカナブ公園へ行く人なんてめったにいないからね。気持ちはよくわかるよ」

 ツアーの話から世間話になり、しばらくすると情が移ったのか、「このバイクでいいなら送迎してあげるよ。ただ・・・」

 「ただなんですか?」

 「実は今妻と離婚の危機で、別の女をバイクに乗せたとうわさが広まると、もう未来がないんだ。ここは人通りが激しいから裏道で待ってるからそこで乗せてあげるよ。あと、公園の手前で下ろすね。なんせ知り合いばかりだから」

 私はまったく問題ないと言って、クラウディオさんのバイクの後ろにまたがった。彼は公園に着くまでの20分、家庭のことや人生の話を語った。その話の大半を占めていたのは、女性をめぐる問題であった。メキシコに来てからこれに似たような話、何度聞いただろう。南米、中南米、カリブを周ったが、誰もが納得するこれぞラテン!といえるのはもしかするとメキシコかもしれない。メキシコは南米、中南米、カリブ諸国とはまったく違う雰囲気を持っている。肩のこらない人たちで、私はとても気が合う。観光地のこの値段を許せるのも、メキシコ人の対応のよさと融通がとても効くこと、そして気前のよさがあるからだろう。



                   チャンカナブ海洋公園


 赤信号でクラウディオさんの友達に「あ!お前奥さんに言いつけるぞ!」などと言われながら無事到着。公園内は99%がアメリカ人で、スタッフも全員英語で対応している。
コスメルの海は40m~50m先まで見えるほどの透明度があるといわれており、魚たちも人に慣れているのか近づいてもまったく逃げない。1mはあるかと思われるターポンの群れやカラフルな小魚たちと泳いだ。私は魚を見るのも食べるのも得意ではないので、恐る恐る楽しむと言った感じだが、好きな人は足をばたばたさせてしまうほど興奮するアクティビティーであろう。
 
 イルカと遊ぶプログラムは10人ずつのグループに分かれて行われる。私と隣になったのは、イスラエル人の家族。奥さんは疲れて眠ってしまった娘と見学し、お父さんと息子2人で参加していた。
イルカのヒレに捕まって一緒に泳いだり、水の中で抱っこしたり、手をつないだりと、普段できないような貴重な経験となった。イルカが疲れてしまわないか心配になるほど、スキンシップの時間が長い。イルカの肌は赤ちゃんの肌のようにすべすべしていて、弾力がある。体は2m以上もあるのに、恐怖を感じさせてない不思議な生き物である。

 イルカと1時間十分に戯れた後は、マナティーの場所へ移動した。こちらはどういうわけか、マナティーの巨体を見ると怖くなって水の中に入れなくなった。トレーナーにしがみつき、何とかマナティーに接近して肌に触れた。感触はうろこのない蛇のようで、触れると一層恐怖感が増した。

 
 病院の先生には「しばらくは海水に目をさらさないように」と言われてきたが、小さいころから持っていたアトピーも、ちょっとした体の悪いところも、海に入れば治っていたので、気にせずに海に入った。
案の定、痛みはずいぶん和らぎ、腫れも収まった。
私にとって海は邪気を浄化する場所、山は神聖なエネルギーを吸収する場所である。
明日はカンクンへ移動する。







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ERIKO