
マレク族 左:ルイスさん
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幸運にもコスタリカの先住民族を知る機会に恵まれた。コスタリカにはペルーやグアテマラのように先住民族が住んでいるという表立った情報はこれまで得られなかったが、実際にはブリブリ、カベカル、テラバ、マレク、ウエタル、マタング、ボルーカ、グアイミと計8部族の先住民が存在している。
コスタリカにそのイメージが浮かばないのは、1990年まで政府がコスタリカには先住民も黒人も存在しないと発表していたせいもあるだろう。
今回訪問させてもらうことになったのは、コスタリカの北、アレナル火山近くにあるマレク族の居住地である。マレク族はコスタリカに存在する他の先住民と言語の類似性がないことなどから、ペルー、メキシコからやって来たという説もある。
サン・ホセから4時間、アレナル火山を見るのはこれで2回目となった。居住地はそれぞれパレンケ・トンヒーベ、マルガリータ、デル・ソルと3つに別れており、人口は全部で600人。
昔は現在より広い地域に居住地が分布していたが、1850年にアメリカとニカラグアのゴム会社がこの地区に潜入し、2000人以上が大虐殺され、人口は190人程度に減ってしまった。それでもなお、彼らはマレクの言語や文化に誇りを持って生活している。
マレクの人達の主食は、リオ・フリオ(冷たい川)で獲れる魚やカメ、トウモロコシなどであるが、カメはある時期から国が捕獲を禁止したため、彼らのアイデンティティは失われつつある。
マレクの人達の主な仕事は観光客相手の商売である。工芸品を販売している小屋などを見せてもらった。昔ながらの木とトゥリモンという葉で天井が覆われた家である。
『最近はこの葉が居住地内で取れなくなってしまってね、このような家が作れなくなっているんだよ』
緑に囲まれた森の中はこれまでにも幾度となく歩きてきたが、こんなにも空気が軽く、肩の力がほぐれる感覚を味合うのは初めてのことだった。まるで体内の汚れが背中を通じて綺麗に浄化されていくようである。
マレクの人達の顔は艶々していて若く、強い生命のエネルギーを感じる。
彼らは“トク”と呼ばれるアレナル火山を神と敬い、独自のダンスやセレモニーを行う。家に入る時には靴を脱ぐ習慣があり、以前は日本のように地べたに座っていたという。また、誰かが亡くなると家の下に埋葬する文化を持っている。だた、埋めることができるのは、事故やヘビに噛まれたなど以外の理由でなければならない。インドの火葬できる条件と同じ傾向を持っている。インドの場合は、最も神聖な“知恵”を意味する“火”と接触できるのは、体に邪気のない状態でないといけないという思考からであるが、マレクは土との関係に何かあるのかもしれない。
『あれ見て!』とルイスさんが指差す方向を見ると、ナマケモノの昼寝をしている姿があった。私が出会ったマレクの人々は良心的で寛容的だった。私は彼らと会う前、随分とかまえていたが、初対面から壁はほとんどなかった。
マレクの居住地に入るまでには、2つの橋がある。この橋は、日本の草の根無償協力で作られてたもので、この橋ができてから村へのアクセスが容易なり、観光客が一段と増えた。
昔、JAICAのシニアボランティアでこの村を訪れ、ここに愛着を持った、合田ヨシオさんが大使館へお願いをして作られた橋である。
『マクレの人達にとってこの橋はとても大事な橋なんです。ただ通行が便利になったというだけでなく、たくさんの人達がこの村に訪れてくれるようになりました。この橋が友達を運んでくれ、絆という宝物を作ってくれます』
日帰りだったので数時間の滞在だったが、彼らは私との別れを惜しんでくれた。またいつかこの橋を渡って彼らの笑顔に出会いたいと願う。