グンカンドリの番い


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 ガラパゴス最終日。いつもと同じように、ホテルからバスで船着き場まで移動する。今日のガイドはアレハンドロさん、グループの大半はドイツ人。話によると、ドイツでは新しい法律ができて休暇を何年がためて一気に使うことができるようになったのだそう。ハンブルグから来ていた夫婦はかれこれ5ヶ月旅をしていると話していた。ドイツ人観光客が多いのも納得である。

 昨日から同船しているキャプテンのラモンさんは、いつも
2階の運転席の隣に座らせてくれる。20年以上この船を操縦しているベテランである。運転席は見晴らしがよく、海の中もよく見える。



                リクイグアナ


 わずか40分ほどで、ノースセイモア島へ到着した。海底地震によってできたこの島は、たくさんの珍しい鳥を見ることができる。頭上では大きな翼を広げたグンカンドリが飛び回っている。熱帯の海洋に生息するグンカンドリは、ガラパゴスでは唯一この島で巣を作り出産する。さっそく大きな喉を真っ赤に膨らませて求愛をするオスを見かけた。
『メスは空を飛行しながら、巣がしっかりしているとか、色んな条件を見ながらオスを選んでるんです。良い家や車を持っている男性を選ぶ女性みたいなものです』

 木の枝にはグンカンドリの子供達がじっと何かを待っている。
1年に1匹のペースで卵を産み、子供は生後6ヶ月まで木の枝にできた巣の上で過ごすが、万が一謝って落ちてしまった場合は、歩行・飛行機能が整っていないため死んでしまうか、イグアナの餌となってしまう。
グンカンドリの餌は魚であるが、羽の
撥水性が悪いため、他の鳥達が捕獲した魚を取って食べている。



                 パロ・サント


 遊歩道に沿って歩いていると、樹からいい香りがしてくる。
『これはパロ・サントと言って、樹液が香水のようにいい匂いがすることから、昔は教会などにも捧げられていた樹です』
町のお土産屋さんでは、香水やお茶、石けんなどが売られている。



                  アオアシカツオ

 赤土のゴロゴロした岩場から、真っ白い砂の海岸沿いへ出ると、アオアシカツオのメスが子供をお腹の下で守っていた。ガラパゴスの青空のような色をした足を持つアオアシカツオは、子供を23匹生むが、争いに勝ち残った1匹の子供だけを育て、他の子供達の面倒はみない。必然的に死んでしまう運命なのだ。
島を出る手前でアオアシカツオの夫婦に出会った。オスが求愛をする時はダンスを踊り、メスが受け入れれば一緒に踊り出すという面白い習性を持っている。





 本日のダイビングスポットは、セイモアノルテ島とサンタクルス島のバチェスビーチ。水の透明度は抜群で、海底で泳ぐサメや魚、アシカを見ることができた。

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日間のツアーはあっという間だった。陸が繋がっていない“島”はそれぞれそこにしかない特徴がある。この数日間でガラパゴスのほんの一部しか知ることができなかったが、改めて特別な場所であると感じた。
ここを離れたあとも、ふとした瞬間にガラパゴスの風景が心の中で蘇り、そしてそれが未来の自分の励みになるだろう。ガラパゴスで見る最後の夜空はは、満月に照らされていた。



ERIKO

ガラパゴスの旅はSURTREKさんのサポートを頂いております。