昨晩鱒を調理してくれたニコ


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 火をおこす煙の匂いで目が覚めた。相変わらず雨は降り続いている。夜中に冷え込んだせいでみんなあまり熟睡できなかったようだ。ガイドのパトさんはすでに湖に張り付いて釣りを始めている。馬達は逃げることもなく小屋の周りで草を食べている。周囲には私達が泊まっているような小屋も何もない。普段当たり前のように接する人々や物から断ち切られた世界では、目の前に広がる風の音と湖にわずかに立つさざ波がその全てであり、それ以上もそれ以下もない。

 炭火で網状にこげたパンとハム入りにスクランブルエッグを食べ、出発の準備を始める。雨用の重たいポンチョを被り、馬にまたがる。馬の歩みが痛む筋肉に追い打ちをかける。
帰りは坂道が多い。馬から落ちないように内太ももをしっかり絞め、体を斜め後ろに倒しながらバランスを取るのはなかなかの筋トレ運動である。
雨が横から叩き付けてもカーボーイハットは顔と首元を守ってくれる。ただ単にかっこいいわけではなく、よく考えて作られているなと感心する。

 川を渡りきった後、パトさんが馬から下りたので後ろを振り返ると、フランシスコが馬から落ちていた。どうやら川底の石と泥に馬の足がはまってしまったようだ。周りのみんなは酸素が足りなくなるほど笑いこけている。『アルゼンチン人はいつも笑い取らなきゃいけないからね、ハハハ』
当の本人は怪我もなく笑いが取れて満足げである。





 山をいくつか越えた辺りで一度休憩し、再び深い谷に沿って行く。アシエンダが見えると馬は一気に歩みを早め走り出した。
到着するとコボさんが出迎えてくれた。気力も体力もなくなってベンチに座っていると、ガイドのパトさんが近づいてこう言った。
『本当によくやったね、このプログラムは女性は普通やらないからね』
やっぱり・・・

 美しい景色はいつでも険しい道のりの中にある。きっと人生もそうであろう。ヤナウルコに滞在したお陰で私のエクアドルの印象はさらに素晴らしいものとなった。次に来る時は太陽に照らされる山々を是非見てみたい。








※ヤナウルコの滞在は、駐日エクアドル大使館、Hacienda YANAHURCO様の協賛・協力頂いております。

ヤナウルコへ行ってみたい方は下記へお問い合わせください。(スペイン語・英語可)
www.haciendayanahurco.com
フェルナンド・コボ(担当者) fecobo@interactive.net.ec


ERIKO