
標高3,350m ヤナウルコの大牧場
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ヤナウルコへ行こうと決めたのは、駐日エクアドル大使館へ行った時に公使のボリバルさんから紹介されたのがきっかけだった。写真を見せてもらった時あまりの美しさにすぐに行こうと決めたのだった。1年前に立てた予定が今日ついに実行される。
ヤナウルコはコトパクシ山の国立公園内にあり、ケチュア語で“黒い丘”を意味する。キトからは100km、車で約3時間半、標高3,350mまで登る。
アシエンダ(大牧場)の主であるフランシスコ・コボさんの車でガイドのパトさんと料理などのお世話をしてくれる女性3人で出発した。
コボさんはヤナウルコに24,000haのアシエンダを所有しており、そこで馬を380頭(ムスタング300頭)飼っている。毎年3月中旬には馬や牛を使った伝統的なスポーツである“ロデオ”も行っている。コボさんのアシエンダはエクアドル一の広さを誇る。定年前は石油会社で働きながらアメリカで23年間を過ごし、昔から好きだったことをやろうとこのアシエンダを始めたのだそうだ。物腰の柔らかいカーボーイハットが抜群に似合うダンディーな人である。
車で高速道路をひた走り、ヤナウルコに着くまでの最後の村、マチャチ村で石炭などを買い込みコトパクシを目指してひたすら進む。車の後部座席は後ろが見えないほどの荷物である。
空は雲が覆いつくし小雨が降っていたが、時折雲の切れ間から山の頭が顔を出しては私の気持ちを舞い上がらせた。
コトパクシ国立公園に入ると湿地帯にリャマやアルパカが草を食み、馬の群れが遠くを走る姿が見える。わずかな太陽の光で草原は蛍光に発色し小高い丘が連なった先に、雪を被ったコトパクシが姿を現した。見事なまでの三角形で、山頂付近の雪は太陽に反射し、白さを越えて光となって反射している。来週あの山に足を踏み入れるのだと想像すると、待ちきれない気持ちと、大それたことを思いついてしまったという気持が入り交じり複雑な心境になってしまった。舗装されていない山道は深い沼地で、TOYOTAのランドクルーザーのヘッドライトまで浸かってしまうほどの深さの川も越えていく。
明日から一緒にツアーに参加するアルゼンチン人の男性3人と合流した。キト在住のガストンとフランシスコはそれぞれ航空会社と石油会社で働き、彼らの友達でブエノスに住んでいるニコはシェフとして働いている。
私はスペイン語をアルゼンチンで習得したため、彼らのスペイン語はとても聞き取りやすいし、彼らは女性に極端に優しいのでちょっとしたことでも何でも助けてくれ、このツアーに同行するメンバーとしてはもってこいである。
昼ご飯はロクロと呼ばれるエクアドルのチーズの入ったとろみのあるスープと、ジューシーな鶏肉、サラダが振る舞われた。お腹が空いていたので標高が高い所にいることをつい忘れ、勢いよく食べてしまい、あとで少々頭痛がした。
アシエンダの周りを散歩したり、近くの川でトゥルチャ(マス)釣りをした。山に囲まれた緑のある景色はこれまでにもたくさん見て来たが、ここはなんだか特別に気持ちが良い。
コボさんにそう話すと、『ここは方位磁石が定まらない場所なんだ。不思議なエネルギーがある所で、病気の人もここへ来て治った人が何人もいる』と答えた。日本にも方位磁石が定まらない、0磁場と呼ばれる所が長野県伊那市にあるが、そこと似ているのかもしれない。
みんなが集まる部屋
寝泊まりをする部屋はベッドも広く、バスルームを付いていてお湯も出る。3日間風呂なしを覚悟して来たが、ここには何でも揃っている。
大きな暖炉のある部屋で卓球やビリヤードをして過ごし、夜はみんなで暖を取りながらアサード(焼き肉)を食べた。
固定電話も携帯もインターネットもなければ、周りにはお店も何もない。夜10時半には電気が消えた。ベッドに足を突っ込むと温かい湯たんぽが入れてあった。小さな心使いに気持ちも温まり就寝する。
★El plato de hoy 今日のご飯★
※ヤナウルコの滞在は、駐日エクアドル大使館、Hacienda YANAHURCO様の協賛・協力頂いております。
ERIKO