
マンションからの眺め
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タニーの家はサントドミンゴの高級住宅街にあるマンションの7階にあり、周りは高いビルが密集している。昨晩は停電で電気が付かなかったが、周囲の明かりで全く不便に感じることはなかった。
家はモダンな家具が並んでいて、素敵な絵が所どころに飾ってある。
タニーとは7年前イタリアのフィレンツェに留学していた時のクラスメイトとして知り合った。
『スペイン語とイタリア語は似過ぎててよく分からないわ』などと言って、ほとんどクラスに参加していなかったが、彼女が写真を勉強していたこともあり、一緒に撮影をすることになったことがきっかけで仲良くなった。
それぞれの国に帰ってからはたまに連絡を取るくらいで、その時撮影した写真も見ぬままだった。あの頃はドミニカ共和国が地図上のどこにあるかなんて全く知らなった。
タニーは5人家族。アメリカ人のお父さんのティムさんとメキシコ人のお母さんのフアナさんは、プエルト・プラタという町でレストランを経営しており、妹と弟もその手伝いをしている。
やっとドミニカでの滞在が始まったかと思えば残す所あと2日である。
タニーのお父さんは私を地方や色んな場所へ連れて行く予定だったようで、もっと長く滞在できないかと聞かれた。
ドミニカは私も以前からとても楽しみにしていた国の一つで、カリブで一番高いピコ・ドゥ・アルテ山や美しい湖、そして日系人が多く住んでいるJarabacoa(ジャバラコア)を訪問したいと思っていた。
ドミニカ共和国は日本からの移民船が中南米で最初に到着した場所であり、ここに降りた日本人は最も過酷な状況を体験したと言われている。
旅で一番初めに訪れた、ボリビアのサンタクルスに住む一次移民の平良さんが、『ドミニカで降りた山内さんはどうしてるかな・・・』と、何度も口にしていたのが頭の中にずっと残っていた。
何十年も前、長い航海を共にした友のことを平良さんはずっと覚え、気にかけていたのだ。私はどうしてもその方を見つけて平良さんに写真を送ってあげたいと思っていた。ドミニカを出る前に会えなくても山内さんの消息と日系社会についてを知ることができればと思う。
今晩はドミニカ料理のレストランへ出かけた。“Mofongo”というコロッケをもっと濃密にしたような味の食べ応えのある料理を食べた。
私が初日に泊まったアレックスさんが住んでいる場所は所謂貧困街であるが、今滞在しているBella Vista区域はショッピングモールやレストランがたくさんある。
今日もレストランに行く際、駐車場にフェラーリやランボルギーニ、ポルシェといった車が駐車されていた。同じ都市であるのに、場所に寄って色んな顔を持っている。明日はどんな新しい顔が見れるだろうか。
7年越しに見ることができた、タニーとフィレンツェで撮影した写真
ERIKO