
ジェネラルホスピタル小児科の入り口
気がつけばもう12月、年の瀬である。
グレナダの町でもクリスマスの装飾をチラホラ見かけるが、気温30℃以上の猛暑のせいかなかなかもうすぐ年が変わろうとしているとは思えない。
人々が忙しなく動き回り、この一年振り返りながら、“新しい年”という代名詞に生まれ変わるような自分の希望を託そうという気持ちが入り交じる空気を町の中で感じていた日本の年末を思い出す。
11月の上旬にグレナダに到着し、翌日交通事故に遭ってから今日でちょうど1ヶ月が過ぎようとしている。
私が2日間の入院でお世話になったジェネラル・ホスピタルへお礼の気持ちを込めて、小児科病棟の子供達におりがみを教えに出かけた。
私が入院していた殺風景な病室とは打って変わって、小児科の建物は入り口の受付から大きなクリスマスツリーが飾られ、子供達の病棟には壁にたくさんの魚の絵が泳いでいる。
小児科と新生児室がほぼ一緒になった病室へ入ると、ドクターのビニータさんと看護師さんたちがプレイルームへ案内してくれた。
私とサチさんが到着すると、すでに何人もの子供達とお母さん方が待っていてくれた。
みんなおりがみは初めてのようで興味津々な様子で、用意したお手製の包装紙おりがみでカブトや風船を一緒に作った。
新生児を抱いたお母さん達は16歳~20歳くらいとみんな驚くほど若い。
グレナダはシングルマザーや結婚をしない女性がとても多い。
『子供は3人いるけど、みんな違う父親よ』というような話は日常茶飯事である。初めは驚いていたが、そのうち聞き慣れてくるとそんなものかと思ってしまう。なんせみんな困った様子などないからだ。
南米でもコンクビナートと言って、宗教の信仰度や政府に対する考え方などから籍を入れずに家族を作る家庭も多いが、カリブはまたそれとは違うようである。
集まってくれた子供達の平均年齢は4~5才。初めは恥ずかしそうにしていたが、慣れてくると作ったおりがみをお母さんに見せたり楽しそうな笑顔を見せてくれた。
ほとんどの子が手首に点滴をしていて、紙に折り目をつけようと力を入れるのを見る度に痛々しかったが、子供達はそんなことまるで気にしていないようだった。
彼らは飽きる素振りも見せず、最後までいくつものおりがみを折り続けてくれた。
先生や子供達はとても喜んでくれ、とても有意義な時間を過ごすことができた。子供達が元気になって病院を出た時、病院での楽しい思い出の1つの出来事の中に今日の日があってくれたらと思う。