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先日セラピーをしてくれた、アドリエルさんのお父さんのドクター・ラムナリエさんが、『鳥を見に行きませんか?』と誘ってくれた。
朝から小雨が降っていたが、ラムナリエさんが迎えに来てくれた時にはすっかりやんでいて、雨の匂いだけが残っていた。
『今日は誘いを受けてくれてありがとう。あなたとので出会いは、私にとってとても印象深いものです』
彼はもうすぐ60歳を迎えるというのに声も若々しい。車は山の中を進む。
曲がりくねった坂道を上がると、木に囲まれたある一軒の家に到着した。
車を降りると、鳥の甲高い鳴き声とともに、笑顔の優しい女性が出てきた。『どうぞこちらへ』テラスへ着くと、驚く数のハチドリが庭を飛び回っている。
ブーン、ブーンと耳元で聞こえる羽音と羽から出る風。同じ羽を持つハエや蚊などの羽音と違い、低音でどこか心地良い。
トリニダードは“ハチドリの地”と言われるほど、多くの種類のハチドリが見られる場所。お札や郵便局のマークなど、国のシンボルとなっている鳥でもある。
トリニダードではハチドリを、Hummingbirdもしくは、Yerette(イェレッテ:Amerindianアメリカ・インディアン諸語)と呼び、スピリチュアルな鳥と言われている。
この家は2年前、趣味で山の景色や虫などを撮影していた、グレナダ人のセオさんが、どういう訳かハチドリに惹かれ作った場所。ハチドリを観察しながらランチを食べたり、ハチドリについて詳しく知ることができるプライベートな空間である。
『私はずっと農業をしていたんだがね、思ってもいなかったけど、ハチドリと縁があって今はこうしたことをしているよ。これは神様からのギフトだと思ってる』
話をするセオさんの周りでは、ハチドリがぶつかってしまうのではないかと思うほど、ブンブン飛び回っている。
セオさんがハチドリのはばたきについて説明をしているとき、ラムナリエさんがおもしろいことをコメントした。
『ハチドリが1秒に羽を動かす256という数字は、人体のストレスを緩和させることのできる数だよ』
ラムナリエさんが話に加わると、セオさんの説明はより一層興味深いものになった。
ここで見ることのできる13種類のハチドリの写真を、セオさんがまとめたスライドショーで鑑賞した。
昔、宝石としてヨーロッパに輸出されたハチドリの姿は、まさに光の加減で輝きを変えるジュエリーのようだった。
セオさんの奥さんが作るランチも、自然の味がして本当に美味しかった。
ハチドリの家を後にすると、当然だが羽音は聞こえなくなる。すると、必要な音がなくなってしまったかのような、なんだか物足り気分になった。
世界一小さくて美しい鳥は、私に感覚的な記憶を残した。
今年102歳を迎えるヌルーンさん 後ろの絵は彼女が描いたもの
山を少し下った所にある、ラムナリエさんの親戚の家を訪ねた。
家に入ると、今年102歳を迎えるおばあちゃんと、スチールドラムで世界を回っていた、アムラル・カーンさん、そしてその家族や従兄弟が団らんしている。
インド系の人達なので当然顔はインド人だが、ヒンドゥー語は話せない。なんだか不思議な感じである。
夕食はまた別の親戚の家でご飯をごちそうになった。
招待してくれた婦人はインドから来た正真正銘のインド人で、私が家に着くなり、『あなたのマントラをラムナリエ先生のレコーダーから聞かせてもらったわ!素晴らしかったわ!』と、喜んでインド料理を振る舞ってくれた。
どういうわけか私は、ブラジル人とインド人とは特に気が合う。
みんなで話をしていると思えば、いきなり筋トレを始めたり、瞑想をしたり、前触れもなく帰宅する、そしてそれを誰も気にしない自由なインド人と一緒にいるのは楽で楽しい。
大勢が集まったが、それぞれに楽しい時を過ごした夕食だった。
※ハチドリの家での問い合わせはこちら
Theo : hello@yerette.com
ERIKO
Theo : hello@yerette.com
ERIKO