3日目(10/20)ベースキャンプ2へ



 他のブラジル人グループの雄叫びで5時に目が覚めた。辺りはすでに明るかったので、少々早いが起床することにした。
川の水で顔を洗う。昨日より水が透き通っている。
朝食は揚げパンに野菜と肉の炒め物としっかりしたメニューだった。
今日は
9km先のベースキャンプまで移動する。川に差し掛かり、靴下履いて川の中をゆっくり渡る。靴下で歩くと以外と滑らない。ポーターやガイドさんはみんなスリッポンで登山している。さすがである。

 砂利道と湿ったピンクの砂地の道が交互現れ、小高い山をいくつも越えていく。燦々と太陽が照りつけ、体力を奪っていく。
男子達はスタスタと表情一つ変えず登っていく。
みんなで一緒に取った休憩はたった1回。私は川縁に着く度ザックを降ろし、ペットボトルに水を補充して休憩を取った。
ロライマは
10分と同じ天気がもたないといわれるほど、天候が変わりやすい。今日も幸運にも登山中、一度も雨は降らなかった。



                 ベースキャンプ


 BCに到着し、日が傾き始めるまで体を洗ったり、洗濯をしたりした。川の水温は5秒も浸かっていられないほど冷たい。
遠くに見えていたロライマが目の前にある。日を増すごとに非現実的な景色の中へと身を投じていく。

 夕方頃、我々のグループにハンガリー人のマルトンが加わることになった。到着早々、マシンガンのようによく喋る。リュックも1泊
2日かと思うほど小さく、虫よけスプレーの準備を怠るほどラフである。
夕食時に
15分ほど雨が降ったがすぐに止んだ。お腹がいっぱいで眠たくなり、6時半に就寝。


               BCから見たロライマ山



4日目(10/21) 頂上へ




 寒さとトイレで目が覚める。小さなテントに設置された簡易トイレは、昨夜の暴風で吹き飛ばされていた。トイレは準備されている専用のビニール袋にしなければならないのだが、慣れないせいかいざとなると意欲が薄れてしまう。
カレンはいびきをかいて朝食ギリギリまで寝ていた。

 今日は今回の登山で一番キツイ登り坂が待っている。安全を考慮して、荷物はポーターさんに持ってもらうことにした。
昼食のハンバーガーを持たされ、出発。
出発早々、両手を使わなければ登れない坂がしばらく続く。山の緑の匂いが濃くなってくると、辺り一面湿った木々に囲まれた。木の根が交差しあう足下には、澄んだ水が、張り巡らされた木の根の間をかき分けて流れている。
森の中に一人。時折聞こえて来る甲高い鳥の鳴き声に耳を傾けながら、ひたすら岩に足をかけた。


                    滝の下


 そびえ立つ壁に突き当たり、さらに急でゴツゴツした岩場に差し掛かる。
ここからは、何百メートルも上から落ちて来る滝の下を通過する。滝の長さが長いため、流れる水は水滴となって雨のように降り注ぐ。
上を見上げると、クラクラしてしまうほどの大きさと高さ。
水滴が太陽に反射し、目の前は水晶が散らばっているかのように美しい。
滝の下をくぐると、溶岩のような黒い巨大岩が現れた。すでに道はなく、先が見えないほどの大きい岩々が立ちはだかる。
大きな一歩を踏み出す度、山は太陽と雲の加減と共に、多様に表情を変えていく。一瞬だって同じ景色はない。

 登頂は静かなものだった。先に到着していた仲間やポーターは、思い思いの場所で体を休めている。
音のない世界は、自分と空間という関係をより際立たせる。
全員が揃った所で、本日のキャンプ地、通称“ホテル”へ移動する。
雨や風が凌げる岩の割れ目は、6つのテントを張るのにピッタリのサイズだ。
歩く度泥が浮き上がる澄んだ川の水で、お風呂に入り、夕日を見るためビューポイントまで向かう。
頂上一帯は、沼地になっており、岩を飛び越えながら進む。



                  高台からの眺め


 高台の上から見渡す光景は、神秘的で他の惑星に来たかのようだった。
神秘的なものは時に恐ろしく、畏怖の念を抱かせる。自分の肝を試されているかのようだった。
真夜中に見た夜空の星は、湿った空気のせいか、ミルク色に発色していた。


                夕暮れのロライマ

ERIKO