KAERUのスタッフの皆さんと

 サンパウロは久しぶりに雨が降って、また一気に気温が下がった。
先日無事に郵便局で日本からの荷物を受け取り、冬服を詰め込んで日本に送った。ストライキなどで、受け取るのに1ヶ月ほどかかったが、ブラジルを出る前に受け取ることができて良かった。

 知人からの誘いで、“
KAERUプロジェクト”という団体を訪ねた。“KAERU”とは、変える、帰る、そして土と水の中で生きる両生類の蛙(ブラジルと日本で生きるという意味)という3つの意味をかけた名前である。

 親の出稼ぎなどで、日本からブラジルへ戻ってきた子供達の文化や習慣のギャップなどから生じる問題のカウンセリングなどを行っている団体である。
代表の中川郷子さんを中心に、心理カウンセラーの資格を持った6人の人達が
市教育委員会と提携組み、市立学校などでカウンセリングなどの活動を行っている。
私はこれまでに日本と南米で日系人の子供が通う学校をいくつか訪問させてもらったが、先生や生徒からこのような悩みを何度か聞いたことがあった。
KAERUプロジェクトはまさにその問題に焦点をおいて、活動を実施しており、ブラジル三井物産財団が協賛をしている。

 ミーティングでは、日頃の活動報告を共有し、意見を交換し合あう。
『子供達が日本語でしか自分の気持ちを表現できない場合のコミニュケーションはどうされていますか?』と質問すると、代表の中川さんから素敵なお話が飛び出した。
『こんな話があるんです。イギリス人の有名な心理カウンセラーで、ウィンコットという人がいました。彼はある時フィンランドで言葉の話せないフィンランド人の男の子の治療に当たっていました。ウィンコットはフィンランド語が話せなかったので、彼と絵を描いてコミュニケーションを図っていました。何年か経って彼の症状が回復し始めた頃、ウィンコットが再び彼のもとを訪ねる時がきました。そして彼に、『あのウィンコット先生が会いに来るよ!』と言うと、彼は、『あ!あのフィンランド語が話せる先生だね!』と言ったそうです。彼の記憶の中では、ウィンコットがフィンランド語を話せなかったことが記憶にないほど、しっかりと意思の疎通が取れていたのです。私たちが子供達に接するときも、彼らの心としっかりと向き合えることを理想としています』
KAERUプロジェクトのスタッフの皆さんからは、興味があるから参加しているというより、子供達の環境が少しでも良くなって欲しいからやっているという気持ちが伝わってきた。
今月末には日本で約1ヶ月に渡りセミナーも行うそうだ。KAERUプロジェクトという団体を知ることを通して、また今までとは違った日系社会の側面を垣間見ることができた気がする。

 今夜は夜行バスでリオ・デ・ジャネイロへ向かう。ブラジル最後の小旅行になりそうだ。
    

ERIKO