イベリア&ラテンアメリカフォーラムのFIAL協会の理事を務めている、小林さんからの紹介で、小林さんがブラジルに住んでいる時にお世話になっていたという、元バイヤ大学経済学部長のパウロ・レボーカスさんにお会いした。元大学教授だったという奥さんのマリーナさんも一緒に、市内を案内してもらった。
パウロさんは身長が高く、顔立ちもキリッとしている。反対にマリーナさんは華奢で、明るい花柄がよく似合う。

 サルバドールの町は、上流階級の人達が住むCidade Alto(丘の上にある町)と貧困街の多いCidade Baixo(下町)とに別れていて、住んでいる人達や環境が全く違う。私の家はCidade Altoにあるため、なかなか下町を見る機会がない。今日は市長選挙の日ともあって、道路は人と車で大混雑していた。
道には大量の選挙広告の紙が散らばっていて真っ白だった。



                   Bonfin教会


 兼ねてから行きたかった、奇跡を起こすことで有名なBomfin教会を訪ね、海辺裏のレストランで海鮮料理を食べた。
私が日本人なので、よく気を使って刺身や魚介類を勧めてくれるのだが、苦手なのでほとんど食べられない。この間食べて美味しかったエビの煮込み料理を注文した。



教室の前にある小林さんの名前が書かれているプレート


 パウロさんは、『見せたいものがある』と、勤務をしていたバイヤ大学に連れて行ってくれた。
2階の教室には、Toshiro Kobayashiと書かれたプレートがかけてあった。
『彼がここに残したものは素晴らしいものばかりだよ』
中の教室を覗き込みながら、こうして時間が経っても残り続けるものがあるのは素敵なことだなと思った。
小林さんは、初めて会った時から協力的で、今となってはFIALさんの協力がなければ、この旅は成り立たなかったとつくづく思う。
小林さんがこの写真を見て、喜んでくれるのが今の私ができる恩返しである。小林さんの顔を思い浮かべながらシャッターを切った。



                  パウロさん夫婦と

 今日は、ココナッツ屋のへジが誘ってくれた、カンドンブレのイベントを見に行く予定だった。
家族の人からは、危ないからオススメしないと言われていたが、なかなか見ることができない宗教儀式を見るチャンスをどうしても逃したくなかった。

 パウロさん達も同行してくれることになったので、へジと合流し、夜の貧困街へ向かった。
場所はサンゴ・サーゴという地区で、ドラッグの売買などが盛んに行われている。
薄暗い壊れかけたビル群の間を走り、
Ilê Axé Opó Afonjá:イレ・アシェ・オポ・アフォンジャ(ヨルバ語で、真っ白なアシェの家)に着いた。
車を降りると柔らかい真っ白な砂に足が沈んだ。
パウロさんにへジを紹介すると、意外な繋がりがあった。
なんとへジのお母さんは、長年パウロさんと一緒に大学で働いていた人で、連絡を取りたがっていたそうなのだ。早速電話で嬉しそうに話をしていた。この旅が始まってからこのようなことがよくあるのは偶然だろうか。



       会館の前。中の真っ白い内装が少し見える。

 イレ・アシェ・オポ・アフォンジャは、ブラジルで一番初めにカンドンブレが広まった土地である。
集会に参加する信者たちは全身白の服装。私は偶然にも白いトップスを着ていたので助かった。
集会所は携帯、カメラ、ビデオは禁止。入り口は右は女性、左は男性と別れていた。
中では、古代ローマ時代の歴史映画に出てきそうな鎧のようなものを被ったり、刀を持った人達が、太古の音に合わせて、トランス状態になりながら低姿勢で踊っていた。
周りで見ている人達は、彼らに手を合わせたり、地面に付けた手を眉間に当てたりしていた。
館内はとにかくあらゆるものが真っ白で、天井には無数の白い長方形の紙がぶら下がっており、ど真ん中にある、女性が座る王座のようなイスの後ろには、鳩とカタツムリの切り絵が貼られていた。

 カンドンブレはアフリカの奴隷貿易と共に入ってきた宗教であり、12の聖人が存在する。(地域によって数は異なる)
家庭によって信仰する聖人が異なり、信仰するにあたって、それぞれに決められた動物やテーマがあり、決してそれらを口にしてはならないという決まりがある。
集会で知り合った、へジのお兄さんの聖人はオシュラ。『ヒツジ』というテーマが彼の人生に与えられており、食べることはもちろん、その言葉を発することも禁止されている。

 集会は3時間ほど続き、終わると三々五々帰っていった。カンドンブレそのものに固執した興味がある分けではないが、バイーヤの人々の暮らしの中にカンドンブレが大きく関与していることは確かである。
彼らのことをより深く知るためにも、実際に見られてよかったと思う。
そして今日は何より、人と人との絆が繋がった1日だった。


       今日、小林さんを通して繋がった人達




Ilê Axé Opó Afonjáを夜訪ねる場合は、必ず地元の人とできる限り多い人数で、なるべく白い服装で訪ねて下さい。貧困街の真ん中にありますので、公共の交通機関の利用はタクシーを含めオススメしません。

ERIKO