Farol da barraの海岸


 雨音が窓を叩く音で目が覚めた。私が寝ている部屋は道路側にあるので、外の色んな音がよく聞こえる。
キッチンへ行くと、朝食を済ませたジョアンさんと八重子さんがウォーキングに出る準備をしている。
Vamos(行きましょう!)と、言われ、急いでマンゴーとメロンを食べ着替えて出かけた。
『外、雨が降ってるんじゃないんですかね?』私がそう聞くと、間髪入れずに『No tem problema』(問題ない)と返って来た。
車でしばらく走り、Farol da barra(ファロウ・ダ・バハ)の海岸沿いに着いた。雨はすっかり上がって日が射し始めている。
実は昨日の夜も公園に歩きに出かけている。きっと彼らの日課なのだと思った。八重子さんは今年で70歳を迎えたそうだが、ほぼ毎日早朝の水泳に出かけて何キロも泳いで帰ってくる。

 初めてのブラジルの海。広い水平線は丸みを帯びた日本の海と違ってどこまでもまっすぐだった。
灯台の辺りを行ったり来たり3kmくらい歩いただろうか。近くのレストランに入り、Carangueijo do farol(蛤みたいな貝)とチーズのパステル(パリパリに揚げたパイ)を食べた。
カランゲイジョはパクチと玉ねぎと煮込んだ汁を一緒に食べる変わった貝料理だったが、苦みがあって美味しかった。



          ココナッツを売るへジさん



 昨日、
Dique do Tororo(ジケド トロロ)の池の周りにあったココナッツジュース屋さんで、働いていたお兄さんと話が弾み、
『文化に興味があるなら、ブラジルのアフロカルチャーを教えている場所があるから、行ってみたら?あ、ちょうど明日授業があるよ』
と、住所を渡してくれた。なんてタイミングだろうと、早速今日行ってみることにした。




 場所は昨日来たばっかりのペロリーニョにあり、バイーヤ州立大学が行っているコースだった。
先生にここへ来た経緯を説明すると、『へジから話は聞いていたわ!』と、歓迎してくれた。
教室へ入ると約30人の生徒達が、挨拶をしてくれるも不思議そうな表情を浮かべた。それもそのはず、クラスの生徒はほとんどが黒人とメスティソで、白人すらいない。そこに突然、アジア人の私が入ったものだから皆不思議に思っただろう。

 今日のテーマは『
Raça e Sexualidade』(人種とセクシャリティーについて)。
授業の前半はほぼホモセクシャルやレズビアンについてだったが、後半は女装という観点から、ベナン共和国のレグバ像へデモをする、女装をした男性の話などが出て来てとても興味深かった。
レグバ像は世界的に有名な写真家アービング・ペンが生涯に渡って撮り続けたことでも知られている、トリックスターのような像である。
見た目は気味が悪いが、ペンが撮影したレグバは、奥に秘めた美しさを浮き上がらせている。ペンが撮影した中でも私がとても好きな写真のテーマである。

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時間の授業の間中、気になってしょうがないことがあった。
それは、全身白のレースの服を着て女装をした男性が頭に付けていた鳥の羽である。カーニバルかと思ってしまうほどの派手は格好だった。
話しかけてみるととても親切で、授業が終わった後には手紙までくれた。
他の生徒さん達も、色々な情報をくれたり、イベントに誘ってくれたりした。

 人との出会いが人を呼び、場所に出会わせ、経験を与え、感動を生み出す。自分の隣にいるさりげない人は素晴らしい所へ導いてくれる人かもしれない。そう感じた1日だった。


ジデワさん。授業中、鳥の羽はヒラヒラと・・・

ERIKO