
シュラスコ
9/2
昨晩の夕食は、アサード(BBQ)のブラジル版、シュラスコを食べた。
牛のしっぽや鶏の心臓の焼き鳥までかなりのボリュームだった。
クリティバの町からクリスの実家まで車で2時間。
町を外れるとすぐ、背の高い熱帯の木々に包まれ、その間から雲に見え隠れする形の定まらないギザギザの山が見えた。
日が高くなるごとに気温もどんどんと高くなり、タンクトップで十分な暑さだ。
真っ赤な花の咲いた家の入り口から、クリスのお母さん、レオニさんと、お父さんのシオデさんが迎え出てくれた。
クリスの家は、以前写真で見せてもらった通り、ジャングルの中のような緑の中に建つ家だった。
広い敷地内には、鶏小屋や蓮の花が見事に咲く池などがあった。
へナタさん達も彼らに会うのは久しぶりだったのか、世間話に花が咲いていた。
お昼ご飯は、レオニさんが絞めて料理した鶏の煮込みをごちそうになった。畜殺を行う人には何度も会ったことはあるが、女性では初めてだ。
レオニさんの謙虚でおっとりとした性格からはとても想像できない。
レオニさんにクリスの写真を渡すと、『サウダージね』(サウダージ=郷愁)と言って、写真を胸に当てた。
彼らの子供達はみんな日本で暮らしている。
南米にいる期間が長くなって来て、距離を考えないようになってしまっていたが、日本はここから遠い場所にあるのだ。
レオニさん達が住む家のキッチンは、風通しが良いようにと網戸のようになっていた。
他の国では考えられないことだが、ここはきっと治安が良いのだろうと思った。
近所を散歩し、家に戻って、イチジクの入ったプリンをごちそうになった。プリンを食べながら、私たちのためにこれらを準備するレオニさんの姿が思い浮かんだ。
帰り際、『クリスに伝えておくことはありますか?』と聞くと、『あなたが言ってちょうだい』と、レオニさんは旦那のシオデさんの方を見て照れながら言った。
彼らの口からなかなか言葉が出てこなかったので、私が『サウダージね、ムイト サウダージ』と言うと、『スィー』と言って大きくうなずいた。
クリティバに向かう帰りの車内から、遠くに沈んでいく赤煉瓦色の太陽が、空を真っ赤に染めた。
ERIKO