ナタ家の朝は早い。私立の小学校に通うガブリエラは、7時から始まる授業に合わせて毎日6時半には家を出る。
始まるのも早いが終わるのも早く、
14時間の授業が終わると、お昼の12頃には帰宅して、一緒にお昼ご飯を食べる。
週に一度、教会でカトリックの授業がある以外に習い事はしていない。

 手洗いの洗濯を済ませ、町の中心まで一人でバスに乗って出かけてみることにした。
バス停は家の真ん前にあり、バスを待つ間は来る人来る人が『ボンジーア』(こんにちは)と言いながら話しかけてくる。
日系人の多いブラジルだが、日本人と日系人の違いはすぐに分かるようである。ポルトガルから移住していたというおじいさんと、バスが来るまで話をした。

 激しく揺れる黄色のオムニブスは、お金を支払うキャッシャーがあり、運転手以外にもう一人が常駐し、お釣りを渡したりしている。
金額は
2.6レアル(1ドル=1.9レアル)といい値段である。




 Museu de Arte Contemporanea(現代美術館)を訪ねた。立派な外観とは裏腹に、こじんまりとした館内だった。
よっぽど人がこないのだろう、鼻の下に立派なヒゲを生やした監視員は、背中にぽかぽかと当たる日差しを浴びながら昼寝をしていた。

 ショッピングセンターに足を伸ばし、ドルをレアルに両替した。
町のあちこちに
Ipe(イペ)の花が見事に咲いている。
今日みたいに天気の良い日は、地面に落ちた花びらが金色に反射して、より一層明るく見せてくれる。

 家に帰ると、無事に一人で町から帰って来れたと、家族みんなが宝くじでも当たったかのように喜んでくれた。
帰りのバスを降りる時、停留所が分からず、
5回ベルを押したと話すと、みんな腹を抱えて笑い、話の途中でかかって来た従兄弟からの電話でもその話をして盛り上がっていた。
喜びは伝染するという、素晴らしい事例を見せてもらった。彼らはイペの花のように、鮮やかで光輝いている。



ERIKO