
出発前のウスアイアの空港
7/25
ウスアイアからブエノスアイレス行きの飛行機が出発したのは、予定より2時間遅れた夜10時前だった。
強風と雪で、飛行機の到着が遅れ、仕舞には空港が停電となる騒ぎだった。離陸する際もタイヤが何度も滑り、滑走路を変更しながら、3回目のトライでようやく飛んだ。
空港へ迎えに来てくれた、1週間振りに会うマウリシオは、珍しく元気がなかった。話を聞くと、親友の家に強盗が入り、彼女の父親がショック死してしまったそうだった。
奥さんは無事だったそうだが、事件が起った家で、これから一人で生活する日々を迎えることを思うと胸が痛んだ。事件が起ったのは都心ではないが、このような話は滞在中に何度も耳にしたことである。
『昔は家の鍵すらかけずに外を出歩いていたのに』運転しながら寂しそうにマウリシオがつぶやいた。
数時間寝た後、ブラジル領事館へ行き、3度目となるビザの申請を行った。受付のお姉さんとはすでに顔見知りになり、今回は不足書類もなく、なんとか取得できそうである。
夕方は“セントロ日系”の会長である、リカルドさんがパーソナリティーを務める、“Japon Hoy”というラジオ番組に出演した。
放送中にペルーでお世話になった、弁護士のホセと彼の娘たちや、滞在していた家族からメッセージが届いた。滞在を終えたあとでもこうして繋がっていられることがとても嬉しい。家に帰りテレビを付けると、夜中に着いた、国内線の空港がストライキで閉鎖している様子がニュースで流れていた。あと一日遅かったら、まだウスアイアにいたかもしれない。ウスアイアへ行く前に、2日間の滞在にしようかどうか悩んでいたのを思い出した。旅人にとって直感と、自分の心の指示に従うことはとても大切なことである。明日と明後日は、この旅が始まってから初めての休息日を取ることにした。パソコンから離れて、少し休もうと思う。