
何ヶ月振りだろうか。朝プエルト・マデーロの公園内を5kmほど走った。
日本を出てからずいぶんの間運動という運動を怠っていた。
走り始めてすぐ、鼻を擤もうとしてポケットからティッシュを取り出す際、石につまずいて見事にこけた。
両手と両足が完全に伸びた状態で地面に着地し、まるでコントである。
一瞬に出来事でとっさに何が起きたのか分からなかったが、右手に持ったままのティッシュは無傷だった。自分に傷を負ってまでティッシュを守るなんて、体の本能はどうかしているのだろうか。
笑いが冷めないまま走り続けると、家族のマウリシオと初めて出会った場所を通りがかり、『まさか3年後にここを一緒に走っているなんて想像できない』などと話しながら、気持ちのいい緑の中を満喫した。
右腕と右ひざにかすり傷を負いながら、アルゼンチンの日系協会“Centro Nikkei”(セントロ・ニッケイ)を訪問した。
ブエノスアイレスでお世話になっているコーディネーター、モニカさんのパートナーである、リカルドさんが会長を務める団体で、アルゼンチンと日本の架け橋となる活動を行っている。
ここでは日本語のレッスンも行っており、私が訪問させてもらった中級クラスの授業には、約15名の生徒が参加し、生徒はほぼ全員アルゼンチン人だった。
日本語を勉強している理由について尋ねると、アニメやマンガがきっかけとなったのはもちろんのこと、日本の社会の仕組や言語そのものに興味を持って始めた人など様々だった。
日本語で私の地元である鳥取県についてや、旅の話などをさせてもらった。授業が終わった後は、Centro Nikkeiの若者達が、彼らが行っている日系国際交流の“DALE”や、“COPANI”、“パナアメリカ日系大会”に活動について説明してくれた。“DALE”は主にペルー、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、コロンビアを中心とした日系の若者達の国際交流である。
それに対して“COPANI”や“パナアメリカ日系大会”は、アメリカ大陸全土の日系人対象に行われている国際交流である。
アルゼンチンへ来てから、ラ・プラタを始め、日系人の方と交流を持たせてもらったが、ここに住む日系人は、アルゼンチン社会に広くなじんでいるように思う。
『自分自身に対して日系と思うかアルゼンチン人だと思うか?』という質問に対しては、ほぼ100%の確率で『自分はアルゼンチン人である』と答える。この辺りは、私がこれまで訪問した他の国との大きな違いである。
しかし、どちらにしても他の国同様、日系人がアルゼンチン社会に対して大きく貢献していることは間違いない。
大きな世代交代を迎えようとしているアルゼンチン日系社会の中で、日本や他国との交流を積極的に取ろうと頑張る日系人の若者達。
今後はこれまでと違う新しい日系社会の形が築かれていくだろう。
日本語クラスの生徒さん達。日系人よりアルゼンチン人の割合が多い。
ERIKO