まだ暗闇の中で星が瞬いているころ宿を出た。朝は電気が通っておらず、懐中電灯の明かりを頼りに手探りで支度をした。

気温-10の中、標高5000mにあるソル・デ・マニャーナへ向かった。

ホテルには暖房設備はなかったため、この2日間寝袋を被って眠った。自分でもよくこの寒さに耐えたと思う。寒すぎると思うと秋のロシアでの暖房のなかった生活を思い出すようにしている。そうすると少しは気持ちが楽になるからだ。しかしここにはこの厳しい状況でしか見ることの出来ない絶景がある。

凍り付きそうな手を暖めてくれたのは、次に向かったアグア・テルマス。




標高4500mにある温泉である。車で何時間走ってもトイレも休憩所もないこの砂漠地帯に、しっかりとした設備を兼ね備えた建物が隣接していた。

入り口へ近づくとなんだか見たことのあるマークが目に付いた。日本のODAマークである。日本からの支援を受けた場所や物などに貼られているシールで、クリスティーナさんのコメドールで見たマークと一緒だった。







 

施設のスタッフに話を聞いてみると、2006年に日本からの援助でこの建物が立てられ、それ以前はこの地帯一帯は何もない場所だったという。

ここが出来たお陰で、たくさんの人達が食事を取る場所やトイレを作ることが出来たと話してくれた。

私たちはここでホットケーキとヨーグルトで朝食を取り、最後の観光スポットであるラグーナ・ベルデへ向かった。

 

ラグーナ・ベルデは緑の湖という意味だが、通常の湖面の色はごく普通の湖の色をしている。そして突風が来ると、湖面がエメラルドグリーンへ変色するという不思議な湖なのだ。

残念ながら今回は無風のため見ることが出来なかったが、湖にくっきりと映る山との景観は素晴らしかった。

仲間のイギリス人組はここからチリへ抜けるのでお別れした。

それぞれに旅は続いていく。その道の途中で出会えたことをありがたく思う。

残った私たち4人はウユニへ戻り、バスでポトシへ移動する。ウユニまで約8時間、20kmほど進むたびに砂漠から草原へ、草原から溶岩石が転がっている地帯へと次々と景色が変わって行く。

ウユニの町に到着すると、私たちのバスがもうすぐ出るから急げと旅行会社の女性が車に飛び乗ってきた。一緒だったオランダ人2人も私たちと一緒にポトシへ向かうことになり、急遽チケットを手配した。ポトシのバスターミナルで待ち合わせることにし、別々のバスでポトシへ向かった。


バスで移動中、酸素が足りなくなったのか意識を失ってしまったが、藤田さんが素早く処置を施してくれ、なんとかバスを降りるまで助かった。

彼女の対応の早さはさすがだった。


藤田さんはボリビアの駐在員としてラパスの旅行会社に勤務している。過去に世界一周した経験を持ち、自分のやりたいことには決して妥協しない精神を持った女性だ。

彼女の素晴らしい所はそれだけではない。ボリビアへ日本人観光客を連れて来ることで、給料の安い現地のドライバーさん達へ仕事を提供している。

ただ旅行で来たお客様を満足させるだけでなく、現地の人達の為に何が出来るかを考えている。現地で働く人達に喜んで貰えるのが嬉しいと話してくれた。

 
夜中1時ポトシのバスターミナルへ着くと、オランダ人組の姿は見つからず、結局会えないままだった。彼らはどうしているのだろうか。


ERIKO