ちょっと、難しい話をしていいですか?
ロングバケーションについて、です。
先日、再放送をしているのを、美顔器を顔にあててる10分だけ見ました。
柴門さんとのお食事に出かける前です。
10分でしたが、我ながら、勢いのある作品だと思いました。
自分で見てても、セリフや、やりとりに、笑ってしまいました。
ロングバケーションは当時、たくさんの人に愛された作品でした。
しかし、私にとっては、ある種のプレッシャーになった作品です。
あの後、何年もの間、私は、いつも自問自答を繰り返しました。
「ロングバケーション」を超える作品を書くことができるだろうか、と。
あんなにみんなに愛され(視聴率も良く)、そして評価も高かった作品。
「ラブストーリー」という中山美穂ちゃんと豊川悦司さんのドラマを書いた時が、そういう気持ちのピークでした。
やはり、ちょっと軽いラブコメディであったし。
私は「ロングバケーション」の劇盤(ドラマの中でかかる音楽のこと)がとても気に入っていたので
ロンバケと同じ、日向さんにやってもらったりしました。
私は、「ラブストーリー」の3話目くらいを書いている時に、とても行き詰まりました。
ロンバケを超えることができてるんだろうか。
もし、超えられないとしたら、なんで、こんな大勢の人の手を煩わして(キャストやスタッフということ)、私は、ドラマを書き続けるんだろうか。
もし、ロンバケがピークだとしたら、もう書く意味なんてないんじゃないか、というところまで、行ってしまいました。
その頃、私は、ビーズの稲葉さんと仲良くさせてもらっていて(ビィーティフルライフで知り合った)、
そんな話を彼に聞いてもらっていました。
稲葉さんは言いました。
自分もツアーをやっていて、今年のツアーが去年のツアーより、いいものであるかどうか、まるで自信がない。
去年のツアーの方が良かったんじゃないか、と思ってしまう、と。
でも、僕は、歌い続ける、というようなことをおっしゃいました。
いま、正確に彼のことばを再現することは不可能なんだけど(あの頃のメールを見れば、わかるんだけど、それは品のないことの気がするので、しません)、
稲葉さんは、どっちがよりいいか、ということではなく、
去年と今年では、色がちがう、というようなことを言いました。
同じ曲を歌っても、去年の僕が歌うのと、今年の僕が歌うのでは、色が違うんだ、というようなこと(ずいぶん、脚色してますが、私はそんな風に解釈して聞いてました)。
その頃は、稲葉さんの言うことが、いま、ひとつわからなかったけれど
今となっては、よくわかります。
どっちが勝るということではなく
本物のアーチストにとって、歌うとか創るとかいうことは、
多分、生きる、ということと同義語ではないのか、と思うのです。
去年を超えられるから、作るんではなくて
1位を取りたいから作るんでもなくて
生きてる限り、歌を作るし、歌うんじゃないかと思うのです。
生きることのかたわらに、常に、歌がある。
私は、自分とビーズと並べるのは非常に恐れ多いけれど、
生きることのかたわらに、書く、ということがあるんだと、今は思ってます。
そういう意味では、これを書くのも、シナリオを書くのも、変わりません。
稲葉さんだって、カラオケで歌うのも、ライブで歌うのも、基本的には変わらないんだと思います。
歌う、ということは、歌う、ということなんです。
それと不真面目に向き合うこともできないだろうし
それを切り離した人生は、ないんだと思います。
私も同じです。
ビーズの松本さんには、非常に失礼なことを言ったことがあります(彼とも、もちろんビューティフルライフつながり)。
「ラブファントム」なんて、あんなステキな歌があるんだから、もう、歌作らなくていいんじゃないですか?
ずっと、今までの歌を歌ってれば、いい。
と。
すると、彼は
「だったら、北川さんも、ずっとビューティフルライフを書いてればいい」
と言いました(ちょうど、それがオンエアされた頃に、飲んでた時の話です)。
でも、松本さんは、まるで怒らず、私たちはケンカにもならず、この前、ブログにも書いたけれど、未だに私の新作を見て、感想をメールしてくれたりします。
彼らは、とてもステキな大人たちでした。
私より、ずっと前に世の中に出て、多くの目にさらされて、しかし、ずっとストイックに真摯に歌に接してきた彼らに、私は学ぶところは多かったです。今思えば。
あの頃は、そんなことまでは、思わずに、大ファンだったビーズが、私をカボチャではなく、ちゃんと北川悦吏子として認識し、私のことばに耳を傾けてくれることがうれしく、ただ、浮かれていました。
あれ?
なんか、話がそれたけど。
だから、結論としては、自分は、気負わず、
ただ、生きるかたわらにある書くということに、自分なりに、その時その時の自分で
マジメにつきあっていけば、いい、とそう思ってるってことです。
今は、ロングバケーションを見ても、昔感じたような息苦しさは感じません。
ただ、ニコニコと、いい仕事だったよね、いい仕事したよね、ラッキーだった
と巣立ったわが子を見るような気分です。
こう思うに至るのは、やはり病気で、死に直面した、ということも大きかったような気がします。
…なんてね。
なんて言ってて、いざ、また、連ドラとか書き始めたら
「絶対に、ロンバケを超えてやるっ!」
なんて、思う瞬間もあるかもしれなくて
そういう意味では、いつまでたっても、自分が予想つきません。
でも、今は、そんな自分を楽しめる余裕が出てきたというか…
コメントの中に、「ロングバケーションは自分が見たドラマの中で一番です。それを超えられるのは、北川さんしかいません。そんなドラマをまた書いてください」
というのが、あって、うれしく
そして、こんなことまで、考えました。
その人、読んでてくれるかな?
長々と、心情吐露、すみません。
さて、仕事の資料の続きを読むか…。
のんちゃんとパパさんは、まだ、「トリック オア トリート」って夜空の下でやってます