今、蘇る入院闘病日記⑦ | 北川悦吏子オフィシャルブログ「でんごんばん」Powered by Ameba

今、蘇る入院闘病日記⑦

その日、

娘が初めてお見舞いに来るというその日。

娘と一カ月ぶりに会うことになったその日。

私は、少しでもキレイにしようと思いました。

一カ月もお風呂に入れてません。

手術のところも、ちょっと膿んでるかもしれないし。


点滴を交換しに来た看護師さんに言いました。

「体を拭いて欲しいんですけど」

「あ、ごめんなさい。今、ちょっと忙しいから、夕方でいいかしら?」

「あ、はい」

 と答える私。

 看護師さんが、点滴を交換していなくなると、シクシクとまた泣きだしてしまう始末。

 娘が来る前に、体がふけない。

 汚いままで会わなきゃいけない。

 その頃、完全に精神的に弱っていた私は、そんなことで泣いてしまうのです。


 次に来た別の看護師さんが、私の異変に気がついて「あら、どうしたの?」

「娘が来るんです。一カ月ぶりに。その前に体を拭きたいんですけど」

 と言ったら、快く、引き受けてくれました。


 いつもより少しはキレイにして、娘を待ちます。


 娘は来ました。夫と。

 かわいい格好してます。見たことない服です。

 かわいいね。それ。パパに買ってもらった?

 うん。

 と娘。なんとなく、一カ月ぶりなせいか、娘も照れてるのか、やや、距離を置いてる感じ。

 ベタベタもしてきません。

 「どこで買った?」

 「六本木ヒルズのザラ」

 ああ、ザラっぽいね。

 と私。

 娘が、私の方に近寄って来ます。

 これ、なんなの?と、いっぱいの点滴見て、くったくなく。

 私、つい、こみ上げて。ポロポロと。ポロポロポロポロと、泣きだしてしまいました。

 黙る娘。黙る夫。

 ただ、ただ、泣いています。私。

 小学生の娘じゃなくて、私が泣くんです。まあ、いつもこんな感じなんだけど。

 なぐさめるでもなく、じっと私を見るでもなく、そんな気まずい風でもなく、ただ黙ってそこにいるふたり。

 いつものこと、といった感じなのかなんなのか。


 その時、私の携帯が、ピロピロリンと鳴って。メール。

 誰かしら。こんなときに。

 でも、私は、やることができてちょっと救われた気分で、すぐに、携帯をみます。

 すると「ガンバレ」と一言。

 今、ここにいる娘からでした。

 送信者、に娘の名前。

 娘をチラリと見ると、しらんふり。

 いつの間に打ったのか。気づかなかった。


 う~っ。私は、心ん中でうめいて、涙をこらえました。

 いや、もう泣いているので、よりいっそう泣きそうになるのをこらえました。


 未だ、夫は、そのときのメールが、娘からのものだとは、知りません。

 言ってないので。


 最後に、娘は私の手を握って、ふざけてギュウウッと痛いほど握って(イタイよ、と笑いました)

 帰って行きました。

 また、来るね。

 と言って。


 そして、本当に娘は、それから週に一度か二度は、病院に来るようになりました。

 都内の病院じゃないので、遠いのに、ね。




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撮影・野の花

追伸・その後、うちののんちゃんは(あ、娘ね)、パパさんと帰りながら

「いや~、泣かれちゃった」

 と言ったそうです。

 なんか、愛人に泣かれたオッサンみたいな言い方だよね、

 頭、ポリポリ掻いてそう。

 これ、ちょっと受けた≧(´▽`)≦