OAFF2日目(3/11)
『シャンカルのお話』
2021年/インド/93分/監督:イルファナ・マジュムダール
悠然たるものだ。商業的成功など眼中にないかのような映画づくり。
1962年。インド北部、ネパールに近い地方都市・ラクナウ。その街の、さらに郊外の深い森の中にある豪邸が舞台。その家には警察署長が家族とともに住み、執務もそこで行なっている。ライフルを携えた警官が、門番に立っている。
9歳になる署長の娘アンジャナと、使用人シャンカルの交流がお話の中心。シャンカルは、忙しい仕事の合間に、幽霊や妖精の話をアンジャナに語って聞かせる。アンジャナは、何不自由ない守られた生活の中で、感性豊かに育っていく。
穏やかな、ほほえましくもある生活が淡々と描かれていくが、泥棒(?)が理不尽に銃殺されたり、ラジオからは中国との国境紛争のニュースが流れてきたり、シャンカル自身も厳しい階級制度の中に置かれているという「現実」が徐々に見えてくるのだ。
使用人たちを差配するアンジャナの母親役を、監督自身が演じていて、堂々たる女優ぶりである。
『自分だけの部屋』
2022年/中国/25分/監督:シエ・イーラン(謝依然)
このトシになると、男と女の痴話喧嘩はどうでもよく、芸術家志望の男なんて自意識過剰なろくでなしと相場は決まっていて、別れて正解だったと言うしかないが、グリーンを基調とした色彩設計、開け放たれた窓から入ってくる空気やアパートの住人がたてる物音や声が、どこか風通しの良さを感じさせ、好感をもった。
特に、自分たちが愛の営みを繰り返した大きな赤いマットレスを、彼女がよっこらしょと立ち上げ、部屋の外まで押していって捨て去るところには爽快感さえ覚えた。