去年ある日突然
車を買い替えた元彼に
聞いたことがある

それは前の車と同じだった
ナンバープレートの数字

『なんか思い入れや意味がある数字?』

彼は
「登録番号のひとつだ」
と答えた

それは本当に自然な感じで
さらりと流れるように
こともなげに
その仕事で使うという
登録番号について
流暢に説明していた

彼が仕事で使う
登録番号というのは
いくつかあり
その1つを会社の車に
もう1つを自家用車に
ナンバープレートととして
登録したのだと

だけど私は
何か引っかかっかるものを
感じていた
それは直感ともいうべきか
何かしらの違和感としか
言いようがないものだけれど

『嘘だ』
とそう感じた

もう1つの登録番号を
自家用車のナンバーにするのなら
まだ理解出来る
彼はその仕事に
その番号にとても
誇りをもっていたから

だけど聞いたこともない
その4桁の数字を
会社の車にならともかく
自家用車に使うなどと
到底考えられない
そこまで思い入れの強い数字なら
今までに何度も
耳にしていたはずだ

もちろん私の知らない
仕事で使っている各種の番号は
存在しているだろう

だが毎日乗る自家用車に
そのような番号を
宛てがうとは思えない

つまり彼は私に
その番号の意味を
語りたくなくて嘘をついたのだ
あれほど
『もう嘘はつかない』
と約束していたにもかかわらず

彼が私に嘘をつき
隠したいことがあるとすれば
多分答えはひとつだ

それは娘の存在
そして娘にまつわる事柄に
決まっている

どんなに私を好きでも
いや好きだからこそ
娘に関することは
伏せておきたいのだろう
それを話せば私は
いい顔はしない
いやそれどころか
深く傷つくことを
彼も知っている

だから『もう嘘をつかない』
という約束を破ってでも
私を裏切ってでも
隠しておきたかったのだろう

あのナンバープレートは
娘の誕生日の組み合わせだろう
  長女の誕生日の日にちと
次女の誕生日の日にちだ

だから私が
『長女の誕生日っていつだっけ?』
と聞いた時にも
彼は即答せず
『何が始まるの?』
と質問で返してきたのも
後ろめたさがあったのだろう

もしかしたら
『ヤバい、嘘がバレたかも』
と焦ったのかもしれない

私はあの時
『確か12月生まれだった気がして。
LIVEの日と被ってないか
ちょっと気になった』
と適当に誤魔化したが

その答えを聞いてホッとしたのか
『12月20日』
だと答えた彼

ナンバープレートの数字と
違う日にちを言い
私を欺いたつもりだったのだろう

『そっか、良かった』
と、私もそれ以上は
何も言わなかった

でも私は確信している
長女の誕生日は
12月20日ではなく
今日
12月10日だと

どんな理由があれ
私を欺き
騙し
嘘をついたという
その事実は消せない

それが私を
傷つけたくないという
その一心からであり
それが彼の愛情によるもの
だったとしてもだ

今日16歳の誕生日を迎えた
娘を見て彼は何を思うのだろう

この子が1歳になってすぐの頃
私たちは出会った
『彼女はいるのか?』
と聞いた私に
結婚しているとは答えず
『彼女はいない』
という嘘では無いが
真実でもない答えを返した彼

いつも彼という人は
嘘と隠し事の塊だった
悪意があったとまでは
思わないが
悪意がなければ
何をしても良い
ということではないだろう

何故この人は
嘘をついたことも
ずっと欺き続けてきたことも
面と向かって
私に謝れないのだろう

なぜいつも
黙って消えるという
そんなことしか
出来ないのだろう

私がその程度の女だと
そう見縊られているのか

いつかその真意を聞いてみたい

そんな日は
決して来ないのだろうけれど…