Bitgetが日本居住者向けサービス終了を正式発表

暗号資産取引所Bitgetは2026年8月3日、日本の規制を遵守するための取り組みの一環として、日本居住者へのサービス提供を終了すると正式に発表した。同日から日本居住者の新規登録は停止され、既存ユーザーについても段階的に機能制限が実施される。Bitgetの公式案内によると、2026年11月1日11時(日本時間)から日本居住者と判定されたアカウントは「Close-Only(決済専用)」モードへ移行する予定だ。現物、先物、P2P、Convert、Earn、コピートレード、取引ボットなどで新しい取引を始められなくなり、2026年12月31日11時以降には残っているポジションが強制的に決済される。一方、暗号資産の出金機能は12月31日以降も継続すると案内されている。

 

今回の動きは、一つの海外取引所が日本市場から撤退するというだけの問題ではない。金融庁は2024年11月、Bitget Limitedについて、日本で暗号資産交換業の登録を受けずにサービスを提供していたとして警告を公表している。金融庁は暗号資産利用者に対し、取引前に事業者が登録を受けているかを確認するよう注意喚起しているため、今後の移管先を考える場合も「取扱銘柄数」や「手数料」だけではなく、居住地域における規制上の位置付けを確認することが重要だ。

11月1日と12月31日は意味が違う

Bitget利用者が特に注意したいのが、二つの期限の違いだ。11月1日は資産を引き出せなくなる日ではなく、日本居住者のアカウントが原則として決済専用へ移行する日である。そして12月31日は「出金期限」ではなく、残存ポジションの強制決済が始まるタイミングだ。この点を混同すると、必要以上に急いで資産を動かしたり、逆にポジション整理を後回しにしたりする可能性がある。スケジュールや移行時の判断材料については、Bitget日本撤退時の期限と選択肢を整理した解説も参考になる。なお、日本国外に居住しているにもかかわらず日本居住者と判定された場合は、Bitgetが住所証明を含む本人確認手続きを案内している。

資産移動では「どこへ送るか」以上にネットワーク確認が重要

取引所を変更する場合、最も避けたいのが送金ネットワークの選択ミスだ。同じUSDTでもEthereum、Tronなど複数のネットワークが利用されることがあり、送信側と受信側で対応チェーンが一致していなければ、資産が自動的に反映されない場合がある。XRPなどではMEMOやTAGが必要になるケースもある。そのため、大きな金額を一度に送るより、受取先で対応通貨・ネットワーク・最低入金額を確認し、少額でテスト送金して着金を確認してから残額を移す方法がリスク管理として有効だ。Bitgetから暗号資産を移す際のネットワーク確認方法では、こうした送金時の基本的な確認項目がまとめられている。取引所変更の際には取引履歴や入出金履歴も事前に保存しておきたい。

次の取引所は「手数料」だけで決めない

Bitgetから移る場合、手数料、取扱銘柄、デリバティブ、コピートレードなどの機能を比較する人も多い。MEXCとBitgetの2026年版比較やBitget代替サービスの手数料比較は、こうした機能面を整理する資料として利用できる。ただし、日本居住者にとっては規制面の確認を先に行うべきだ。MEXC Globalについても金融庁は2024年11月、無登録で暗号資産交換業を行っていたとして警告を公表している。MEXC自身の比較記事でも、日本の金融庁に登録されていないことを明記している。したがって、日本国内の投資家保護制度を重視するのであれば、金融庁の最新の「暗号資産交換業者登録一覧」を確認し、登録事業者を比較することが基本となる。

取引所撤退から考えたい「資産を預けるリスク」

今回のBitget撤退は、暗号資産取引所を選ぶ際に「現在使えるか」だけでなく、「環境が変化した場合に資産をどう移せるか」まで考えておく必要性を示している。取引所を比較する場合には、サービス提供地域、規制状況、出金条件に加えて、Proof of Reserves(準備資産証明)、資産保管方法、セキュリティ対策なども確認材料になる。取引所撤退時の資産管理とセキュリティに関する解説では、MEXCが公開しているProof of Reservesやリスク準備制度について確認できる。実際に利用する場合は、こうした取引所自身の情報だけでなく、規制当局や第三者による情報も組み合わせて判断することが望ましい。

Bitget日本撤退で最も重要なのは「期限前に選択肢を整理すること」

2026年9月時点では、Bitget日本居住者向けサービスはすべてが即時停止されたわけではない。しかし、11月1日のClose-Only移行と12月31日の強制決済という具体的なスケジュールはすでに示されている。保有資産、未決済ポジション、Earnやコピートレードなどで運用中の資産を確認し、「決済する」「金融庁登録済み取引所へ移す」「自己管理ウォレットなど別の保管方法を検討する」といった選択肢を早い段階で整理しておくことが重要だ。海外取引所を含めてサービス内容を調べる場合はMEXC公式サイトなど各社の最新情報も参考にできるが、利用可能性や規制状況は将来変更される可能性があるため、実際に資産を移す直前にも最新の利用規約と金融庁の情報を確認したい。

 

免責事項: 本記事は暗号資産および取引所に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の取引所の利用、金融商品の購入・売却、投資行動を推奨するものではありません。各サービスの提供状況、手数料、規制上の位置付けは変更される可能性があります。利用前に各事業者の最新情報および金融庁などの公的情報をご確認ください。

2026年下半期は「全面強気」より選別相場になりやすい

2026年下半期の暗号資産市場は、上半期までの調整局面から徐々に回復へ向かっているものの、すべての暗号資産が一斉に上昇するような単純な強気相場とは言いにくい状況だ。特に8月にはビットコインが約25%上昇し、2024年11月以来の強い月間パフォーマンスを記録した一方、その背景には米国債利回りの低下、ドル安、ショートポジションの清算、ETFへの資金流入など複数の要因が重なっていた。 現在の暗号資産価格一覧を見ると、BTCだけでなくETHやSOLも8月後半に反発しているが、今後は「暗号資産全体が上昇するか」よりも、どの銘柄に実需や機関投資家資金が集まるかがより重要になりそうだ。

BTCは機関投資家の需要と金融環境が最大のポイント

下半期の中心となるのは、やはりビットコインだ。8月には米国の現物BTC ETFへ30億ドルを超える資金が流入し、10カ月ぶりの高水準となったとの集計もある。 一方で、2026年上半期は現物BTC ETFから約54億ドルが流出したとされており、年間を通して見ると機関投資家の姿勢はまだ安定していない。 そのため、ビットコイン(BTC)の価格が80,000ドルを超えるかどうかだけでなく、ETFへの資金流入が数週間から数カ月単位で続くかを見ることが重要だ。特に2026年9月以降は米国の金利政策が大きな変動要因となる。FRBは9月15~16日、10月27~28日、12月8~9日にFOMCを予定しており、金融政策の方向性次第では年末までBTCのボラティリティが高い状態が続く可能性がある。

ETHは「BTCの次に資金が向かうか」が焦点

イーサリアムについては、単純な価格上昇以上に、市場内で資金循環が発生するかがポイントになる。BTCが先行して上昇した後、ETHにもETF資金や現物需要が流入するのであれば、市場全体のリスク選好が改善していると判断しやすい。8月にはBTCとETHのETF合計で週間約26億ドルの流入があり、2025年10月以来の大きな資金流入となった。 イーサリアム(ETH)の価格推移をBTCと比較しながら見ることで、こうした資金の広がりを確認できる。一方、BTCだけが上昇しETHが長期間追随できない場合、市場参加者が依然としてリスクを限定している可能性があるため、アルトコイン全体への強気判断には慎重さが必要だろう。

SOLは成長期待が高い一方、値動きも大きくなりやすい

2026年下半期に注目される大型アルトコインの一つがSolanaだ。8月にはSOLが75ドル前後から100ドルを超える水準まで上昇し、米国のSolana ETFへの累計資金流入も10億ドルを超えたとされている。さらにネットワーク面では、新規アドレス数やRWA関連の資金流入などで改善を示すデータも確認されている。 そのため、Solana(SOL)の価格はBTCやETHよりも高い成長余地を期待される可能性がある。ただし、高い成長期待が織り込まれている銘柄ほど、市場流動性が悪化したときの下落率も大きくなりやすい。SOLを見る際には価格だけでなく、ETFフロー、ネットワーク利用状況、トークン供給量の変化を合わせて確認したい。

下半期最大のテーマは「暗号資産」より世界的な流動性

2026年後半の暗号資産市場を左右する最大の要因は、個別プロジェクトのニュースよりも世界的な資金環境になる可能性が高い。9月初旬には原油価格上昇とインフレ懸念を受け、世界的に国債利回りが上昇している。米国でも追加利上げへの警戒感が強まり、BTCは80,000ドル付近で上値を抑えられている。 暗号資産は株式以上に流動性の影響を受けやすいため、金利上昇、ドル高、信用収縮が続けば、好材料があっても上値が限定される可能性がある。逆に長期金利が低下し、ドル流動性が改善する場合は、BTCからETH、さらにSOLなどの大型アルトコインへ資金が広がる展開も考えられる。2026年下半期は「半減期から何年経過したか」といった従来のサイクル論よりも、ETFとグローバル流動性を重視する必要があるだろう。

年末に向けて見るべき3つのシナリオ

2026年末までの市場は、大きく三つの展開が考えられる。強気シナリオでは、ETFへの資金流入が継続し、長期金利が安定することでBTCが80,000ドル台を定着させ、ETHやSOLへ資金が循環する。中立シナリオでは、金融引き締めへの警戒と機関投資家の買いが拮抗し、BTCを中心としたレンジ相場が長期化する。一方、弱気シナリオでは、インフレ再加速や追加利上げ、国債利回り上昇によって市場流動性が再び縮小し、8月の反発分を消す調整が起こる可能性がある。現在の状況を見る限り、2026年下半期は「全面的な暗号資産バブル」を期待するより、BTC・ETH・SOLそれぞれの資金フローと実需を見ながら選別する市場と考える方が現実的だ。

 

暗号資産市場の先行きを考える際には、BTCやETHなど個別銘柄の値動きだけでなく、金利、為替、株式市場、世界的な資金循環といったマクロ経済の変化をあわせて見ることが重要だ。特に2026年後半は、金融政策と市場流動性が暗号資産の価格形成に与える影響が大きくなる可能性がある。こうした市場全体を読み解くための補足資料として、経済環境や投資市場について考察しているビットコインの9月は「調整」ではなく「高値圏での再蓄積」か?BTC相場の次の焦点も参考になる。複数の視点を比較しながら、短期的な価格変動だけに左右されず、中長期の市場構造を確認していきたい。

 

免責事項: 本記事は暗号資産市場に関する一般的な情報提供を目的としており、投資助言、金融商品の勧誘、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本を失う可能性があります。投資判断を行う際は、最新の市場情報を確認し、ご自身のリスク許容度や資産状況を考慮してください。

8月の急騰は強かったが、すべてが新規買いとは限らない

2026年9月のビットコイン市場を考えるうえで、まず注意したいのは「価格が大きく上昇したから、市場全体が強気に転換した」と単純に判断できない点だ。BTCは8月後半に短期間で大幅上昇し、一時80,000ドルを上回った。現在の水準や短期的な値動きは、ビットコイン(BTC)の価格データから確認できる。ただし、この上昇局面では先物市場の建玉(Open Interest)が大きく減少しており、価格上昇と同時にショートポジションが大量に解消されたことが確認されている。CoinDeskも8月25日の上昇について、先物建玉の急減と低い資金調達率を背景に、ショートカバーが重要なドライバーだったと報じている。つまり今回の上昇は、新しいレバレッジロングが大量に積み上がったというより、弱気ポジションの買い戻しによって加速した側面が強い。

ショートスクイーズは価格を押し上げても「資金流入」とは意味が違う

ショートポジションを持つ投資家は、価格が上昇すると損失を抑えるためBTCを買い戻す必要がある。この買い戻しが連鎖すると、いわゆるショートスクイーズが発生し、現物への大規模な新規資金流入がなくても価格が短期間で急騰することがある。実際、BTCは8月後半の7日間で約23%上昇した一方、その後は79,000ドル付近で利益確定売りが増え、市場全体を示すCoinDesk 20指数もBTC以上に下落した。これは「BTC価格は強いが、暗号資産市場全体が同じ強さを持っているわけではない」という点を示している。現物ETFには8月時点で一定の資金流入が続いていたため需要が完全に弱いわけではないものの、急騰のスピードをそのまま新しい強気相場の証拠と見るには慎重さが必要だ。

BTC以外を見ると、暗号資産市場はまだそれほど健康ではない

市場の健全性を見るときは、BTCだけではなくETHや主要アルトコインがどの程度追随しているかも重要になる。BTCが上昇する一方、ETHやその他の主要銘柄が相対的に弱ければ、市場全体へ新しい資金が広く流入しているというより、流動性の高いBTCだけに資金が集中している可能性がある。イーサリアム(ETH)の価格推移とBTCを比較すると、こうしたリスク選好の広がりを確認しやすい。特に本格的な強気相場では、BTC上昇後にETH、さらに大型アルトコインへと資金が循環するケースが多い。しかし現在は、市場全体の上昇がBTCほど力強くない場面も目立つため、「BTCが上がっている=暗号資産市場全体が健康」という判断は避けたい。

根本的な問題は、依然として市場の資金が潤沢ではないこと

さらに2026年の暗号資産市場では、流動性そのものが重要なテーマになっている。年初にも市場関係者から低流動性への警戒が指摘されており、資金の厚みが乏しい環境では、比較的小さな注文でも価格が大きく動きやすくなる。 米金融市場全体を見ても、FRBは短期資金市場と準備預金の水準を継続的に注視しており、8月に公表した分析では、レポ市場が金融政策から幅広い金融環境へ波及する重要な経路であることを改めて説明している。 もちろん、これは直ちに「ドル資金が不足している」という意味ではない。FRB自身は短期金融市場について概ね安定していると評価しているが、株式市場の市場深度は年初からやや悪化しており、金融市場全体に潤沢なリスク資金が戻ったとまでは言いにくい。 暗号資産のような高リスク資産にとって、この資金環境は無視できない。

9月は80,000ドル突破より「上昇を支える買いの質」が重要

そのため、2026年9月のBTCでは「80,000ドルを超えるか」という価格だけを見るより、誰が何を理由に買っているかを確認する方が重要になる。ETFへの現物資金流入が継続し、先物建玉も健全に増加しながらBTCが高値を更新するなら、上昇トレンドの信頼性は高まりやすい。一方、価格だけが上昇し、建玉が減少し続け、ETHやアルトコインが追随しない場合は、再びショートカバー主導の上昇となっている可能性を考える必要がある。また9月15~16日にはFOMCが予定されているため、金利やドル流動性への期待が大きく変化する可能性もある。

結局のところ、現在のBTCは価格だけを見れば改善している。しかし市場内部を見ると、ショートポジションの解消による上昇、BTCへの資金集中、アルトコインの弱さ、そして依然として潤沢とは言いにくい市場流動性という複数の問題が残る。9月に本格的な強気相場へ移行できるかを判断するには、BTC価格だけでなく、ETFフロー、先物建玉、資金調達率、ETHの相対強度、そしてマクロ市場の流動性を合わせて確認する必要があるだろう。

免責事項: 本記事は暗号資産市場に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、投資助言、売買の推奨、または将来の価格を保証するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本を失う可能性があります。投資判断はご自身のリスク許容度や財務状況を考慮したうえで行ってください。

 

2026年8月、外国為替市場では米ドルの弱さが目立っている。8月24日にはドルが主要通貨に対して数カ月ぶりの安値圏で推移し、市場では米国の財政問題や長期金利、金融政策の先行きに対する警戒感が強まっている。

 

一方、米国企業の業績は依然として堅調で、特にAI関連企業を中心としたテクノロジーセクターの利益成長は強い。

では、今後もドル安が続いた場合、米国株式市場にはどのような影響が及ぶのだろうか。

結論から言えば、ドル安そのものは米国のグローバル企業にとって追い風になりやすい。しかし、ドル安と同時に米国の長期金利が上昇する場合、株式市場にとってはむしろリスク要因となる。

つまり、今後の米国株を考えるうえでは、ドルの方向だけではなく、**「ドル+米国10年国債利回り」**をセットで見ることが重要になる。

 

現在のドルは弱含み、背景には米国の財政問題

8月24日の市場では、米ドルが主要通貨に対して数カ月ぶりの安値圏で推移した。

Reutersによると、米財務省が長期国債の買い戻し規模を1回当たり40億ドルまで増やす方針を示したことを受け、市場では長期金利や米国債市場に対する警戒感が高まっている。また、米国の財政状況や政府債務への懸念もドルの重しとなっている。

 

8月21日にもドルはユーロに対して3カ月ぶりの安値を付けており、米国債の買い戻し政策がドルに与える影響を市場が慎重に見極めている。

 

このような状況では、「米国経済が悪化しているからドルが下落している」と単純に判断するのは危険だ。

現在のドル安には、

  • 米国の財政赤字・政府債務への懸念

  • 米国の金融政策に対する不透明感

  • 長期国債利回りの上昇

  • 他国通貨の相対的な強さ

  • 米国資産への資金配分を巡る投資家心理の変化

など、複数の要因が絡んでいる。

 

ドル安はなぜ米国企業にとってプラスなのか

ドル安が米国株に与える影響を考えるうえで重要なのが、米国企業の海外売上高だ。

Apple、Microsoft、NVIDIA、Amazon、Alphabetなどの大手企業は、米国だけでなく世界中で事業を展開している。

例えば、ある米国企業が欧州で100ユーロの売上を得ているとする。

ドル高の局面では、

100ユーロ = 110ドル

だったものが、ドル安になれば、

100ユーロ = 115ドル

となる可能性がある。

現地での販売数量がまったく増えていなくても、海外で稼いだ利益をドルに換算した際の金額が増える。

つまり、

 

ドル安
↓
海外売上のドル換算額が増加
↓
売上高・利益率を押し上げる可能性
↓
EPS改善
↓
株価の支援材料

 

という流れが生まれる。

特に海外売上高の比率が高い大型テクノロジー企業やグローバル消費ブランド、半導体企業などは、この恩恵を受けやすい。

 

ただし「ドル安=米国株高」とは限らない

ここで重要なのが、ドルが下落する理由だ。

ドル安には、米国株にとってポジティブなドル安と、ネガティブなドル安の2種類がある。

ケースA:インフレ低下+利下げ期待によるドル安

例えば、

インフレ率が低下
↓
FRBが利下げ
↓
米国金利が低下
↓
ドル安
↓
株式の割引率が低下
↓
グロース株のバリュエーション上昇

という流れなら、米国株にとって非常に好ましい。

特にNASDAQや大型テクノロジー株には強い追い風となる。

ケースB:財政不安+長期金利上昇によるドル安

一方、

米国の財政不安
↓
米国債への懸念
↓
長期金利上昇
↓
ドル安
↓
株式の割引率上昇
↓
高PER銘柄のバリュエーション低下

という流れになると、ドル安でも株価が下落する可能性がある。

現在の市場で特に注意したいのは、こちらのシナリオだ。

 

最大のポイントは「ドルと10年国債利回り」

今後の米国株を分析する際、ドル指数(DXY)だけを見て判断するのは不十分だ。

むしろ、

DXY + 米国10年国債利回り

の組み合わせを見ることが重要になる。

2026年8月20日時点の米国10年国債利回りは4.69%だった。Reutersの8月11日時点の市場調査でも、10年債利回りは約4.73%と18カ月ぶりの高水準に近づいていた。


つまり現在の市場では、ドルが弱い一方で長期金利が高いという、やや複雑な状況になっている。

「ドル安+10年債利回り低下」

これは米国株にとって最も理想的な組み合わせだ。

ドル安によって海外売上が押し上げられる一方、金利低下によって株式のバリュエーションも支えられる。

特にNASDAQや成長株には強い追い風となる可能性がある。

「ドル安+10年債利回り上昇」

一方、こちらは注意が必要だ。

ドル安による海外利益の押し上げ効果がある一方で、金利上昇によって株式の割引率が上昇する。

特に将来の利益成長を株価に織り込んでいる高PERのテクノロジー株では、利益が増えても株価が上昇しない、あるいは株価が下落する可能性がある。

 

FRBの金融政策も不透明

米国株の方向性を左右するもう一つの重要な要因がFRBだ。

7月28~29日に開催されたFRBの会合では政策金利が3.50~3.75%に据え置かれた一方、インフレに対する警戒感が強まっていたことが議事要旨から明らかになった。

Reutersによると、3人のメンバーが0.25ポイントの利上げを支持するなど、金融政策を巡る意見の分裂も見られた。


これは米国株にとって重要なポイントだ。

市場が期待するような利下げが実現すれば、株式市場にはプラスとなる。

しかし、インフレが再加速してFRBが利下げを急がない場合、長期金利が高止まりし、株式のバリュエーションが圧迫される可能性がある。

したがって、今後は雇用統計、CPI、PCEなどのインフレ・雇用関連データがこれまで以上に重要になる。

 

それでも米国企業の利益成長は強い

金利上昇リスクがある一方、米国株には強力な支援材料もある。

それが企業利益だ。

Reutersによると、2026年第2四半期のS&P 500企業の利益は非常に強い伸びを示しており、AI関連企業への投資や利益が全体の業績を押し上げる要因となっている。

 

また、8月5日時点ではS&P 500企業の75%以上が決算を発表しており、第2四半期の調整後利益は前年同期比31.1%増となる見通しだった。テクノロジーセクターの利益は72%増が見込まれていた。つまり現在の米国株市場は、

「金利・為替は不安定だが、企業利益は強い」

という構造になっている。

これが、ドル安や金利上昇があるにもかかわらず、米国株が大きく崩れていない理由の一つだ。

 

NASDAQとS&P 500、どちらが有利なのか

今後のドル安を前提に考えると、NASDAQは比較的大きな恩恵を受ける可能性がある。

大型テクノロジー企業は海外売上高の比率が高く、ドル安による為替換算効果を受けやすい。

一方で、NASDAQは金利上昇にも非常に敏感だ。

そのため、

ドル安+金利低下

ならNASDAQに強気になりやすい。

逆に、

ドル安+金利上昇

ならNASDAQへの投資には慎重になる必要がある。

S&P 500は金融、ヘルスケア、エネルギー、資本財、生活必需品など幅広い業種を含むため、NASDAQよりも分散効果が高い。

したがって、現時点では、

S&P 500:中期的にやや強気

NASDAQ:強気だが、金利上昇リスクに注意

という見方が妥当だろう。

 

2026年後半から2027年に考えられる3つのシナリオ

今後の米国株を考える場合、私は大きく3つのシナリオに分けて考える。

シナリオ1:ドル安+金利低下

インフレが落ち着き、FRBが利下げを進める。

ドルは緩やかに下落する一方、10年国債利回りも低下する。

この場合、

ドル安 → 海外利益増加

+

金利低下 → バリュエーション上昇

という2つの追い風が米国株に作用する。

これはNASDAQにとって最も理想的なシナリオだ。

シナリオ2:ドル安+金利高止まり

これは現在最も注意したいシナリオの一つだ。

企業利益は成長するものの、インフレや財政問題によって長期金利が高止まりする。

この場合、S&P 500は企業利益によって支えられる一方、高PERのグロース株では株価の上値が重くなる可能性がある。

シナリオ3:ドル安+金利上昇+景気悪化

最も危険なのがこのパターンだ。

財政不安やインフレによってドルが下落する一方、長期金利が上昇し、さらに企業利益まで悪化するケースだ。

この場合、

 

ドル安 + 金利上昇 + 利益成長鈍化

 

という3つの悪材料が重なるため、NASDAQだけでなくS&P 500も大きく調整する可能性がある。

 

投資家が今後チェックすべき5つの指標

2026年後半の米国株を分析するなら、以下の5つを定期的にチェックすると分かりやすい。

① DXY(米ドル指数)

ドルの方向性を確認する。

② 米国10年国債利回り

株式のバリュエーションを左右する最重要指標の一つ。

③ FRBの金融政策

利下げ期待が高まっているのか、それともインフレ警戒が強まっているのかを確認する。

④ S&P 500企業のEPS成長率

株価を支える実際の企業利益が伸びているかを見る。

 

まとめ:ドル安そのものより「ドル安の理由」を見る

現在の米ドルは弱含んでいる。

しかし、これだけを見て「ドル安だから米国株に強気」と判断するのは危険だ。

ドル安には、米国企業の海外利益を押し上げるプラス効果がある一方、財政不安や長期金利上昇を伴うドル安の場合には、米国株のバリュエーションを圧迫する可能性がある。

特に現在は、米国企業の利益成長が非常に強い一方で、米国10年国債利回りが4.7%前後と高い水準にある。FRBもインフレへの警戒を続けており、金融政策の先行きには不透明感が残っている。

したがって、今後の米国株市場を判断するうえで最も重要なのは、

「ドルが上がるか、下がるか」ではなく、「ドルがなぜ動いているのか」

という点だ。

特に注目したいのは、

DXY ↓ + 10年国債利回り ↓

なのか、

DXY ↓ + 10年国債利回り ↑

なのかという違いである。

前者であれば、企業利益と株式バリュエーションの双方が改善する可能性があり、NASDAQやS&P 500にとって非常に好ましい環境になる。

一方、後者であれば、ドル安による海外利益の押し上げ効果があるとしても、金利上昇によるバリュエーション圧縮が株価の上昇を抑える可能性がある。

2026年後半から2027年にかけて米国株への投資を考えるのであれば、ドル、米国10年国債利回り、FRBの政策、企業利益の4つを同時に追うことが重要になるだろう。

※本記事は市場分析を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。為替や株価は今後の金融政策、インフレ、景気、地政学リスクなどによって大きく変動する可能性があります。

 

References

- FRED:米国10年国債利回り(DGS10)

- Reuters:Dollar trading near multi-month lows, restrained by debt nerves

- Reuters:Dollar falls to three-month low on Treasury buyback worries

- Reuters:US Treasury yields seen heading lower but strategists' conviction wavering

- Reuters:Fed policymakers' inflation concerns increased at July meeting, minutes show

- Reuters:Gains in AI company stakes juice second-quarter earnings for S&P 500

- Reuters:US stock market could ride earnings strength to more gains after S&P 500 hits record