#5 Understanding the Effects of Forest Uses
5.森林の効用を理解する
このアクティビティでは、生徒は世界の森林のさまざまな利用が与える影響を分析し、ある定義に従えば、どれが持続可能ではない使い方かを決定します。
Subjects 科目
社会、科学、国際理解(International Studies)
Searchable Key Words 検索語
林産物、森林の効用、森林の利用、木製品、木材の利用
Concepts 概念
2.6 資源を節約し環境を守ることへの国際協力は、人間の健康および他の生命体にとっての健全性を生み出します。
2.11 すべての人は製品を消費することによって再生可能および再生不可能な自然資源の有効性に影響を与えます。
4.3 地球を一つの生態系システムとして調べられるとき、スケールにかかわりなくすべての行動は何らかの方法で生物圏に影響を与えます。
Skills スキル
分析する、評価する、中心となる考えを同定する
Materials 準備物
生徒用ページのコピー
Time Considerations 必要な時間
準備:15分
アクティビティ:50分×1コマ
Related Activities in Other PLT Guides 他のPLTテキストに掲載された関連アクティビティ
Far Reaching Decisions(「私たちの住む場所」)
A vision for the Future(「私たちの住む場所」)
Objectives ねらい
➢ 生徒が、便益や正負の効果の観点から、様々な森林の利用法を分析する。
➢ 生徒が、どの利用法が持続可能かを決定する。
Assessments 評価
➢ 生徒用ページ「どのような結果になったか?」の回答を用いて、様々な森林利用による長期的及び短期的な結果、便益と正負の効果、持続可能性についての生徒の理解度を判定する。多くの質問が一つの「正しい」答えを有しているわけではないことに留意する。例えばケースAでは、質問8の答えには別の場所から葉を持ち込む、肥料になる別のものを見つける、人の数を少なくする、などの答えが考えられる。
➢ 生徒に、次の質問に対する回答を書かせる;「それぞれのケースの持続可能性を高めるために、あなたは何をしますか?どのようにしますか?」
Background 背景
人間による森林の利用法は、森林のタイプや場所、所有形態や生産性などによって、時間とともに変化してきました。伝統的に-そして今日の多くの発展途上国では-、人々は実に多様な有用な生産物を生み出すために森林を利用しています。彼らは、動物の狩猟、果実や木の実の採集など、食料を得るために森林に頼っています。木の葉を家畜の飼料にしています。調理のための燃料や建築の材料にするために、木を伐ります。衣類や住まいとして利用するために様々な繊維を加工したり、薬や道具にするための原材料を手に入れたりします。かつて森林は、これらの多様な利用形態を長期にわたって支えてきましたが、世界の人口が増加するに従って、森林への圧力も高まってきました。
薪と木炭の燃料材としての利用は、人間の、森林に対する増加する圧力の一例です。世界のほぼ30億人の人々-発展途上国の世帯の約80%-が、調理、採暖、照明を森林から得た燃料に頼っています。エネルギー源として、木材は多くの地方で姿を消しつつあります。家や村から近い場所の薪炭材が枯渇するにつれて、女性(と少女)はこの基本的なニーズを満たすためにより多くの時間を使うようになっています。例えばネパールでは、女性は薪を集めるために、一日に平均三時間を費やしています。
日本やヨーロッパ、北アメリカなどの先進国では、木材は通常、家庭でのエネルギーとして直接使われることはありません。代わりに人々は、水力、天然ガス、石炭その他の資源を使用します。オーストリア、フィンランド、スウェーデンでは、国の一次エネルギー供給の12~18%を木材のエネルギーで賄っています。
(P.66)
先進国では、森林は主に建築用材、紙、梱包用材として使用され、燃料生産ではなく木材生産を目的として集約的に管理されています。他の選択肢もあるため、これらの国々では森林やレクリエーションや野生生物の保全の目的でも重要視されてきており、森林植生の増加がみられる地域もあります。それでも、林産物の供給は需要を満たしておらず、先進国の多くは自分たちの需要を満たすことができず、他国から林産物を輸入しなければなりません。
先進国では、エネルギーとして利用される木材でなく、林産物としての需要が多くを占めています。例えば、北アメリカとヨーロッパの国々、そして日本は、世界の人口の6分の1しか有していませんが、世界の紙・板紙の3分の2、産業用木材の半分を消費しています。さらに、林産物に対する需要は、更なる薪炭材の需要とともに発展途上国でも増加しつつあります。
人間はどうすれば世界の森林を維持することができるでしょうか。その答えは決して単純ではありませんが、この疑問に答えるために多くの国際的な取り組みが導入されてきました(その複雑さを内包する一例として、以下のコラム「森林での昼食はタダじゃない」を参照のこと)。その重要な最初の一歩として、持続可能性とは何かを定義し、維持されなければならない重要な森林の側面を明らかにする取り組みがなされてきました。これらの取り組みについて詳しく知りたい場合は、「Activity 6.持続可能性を求めて」を見てください。
「森林と持続可能な開発に関する世界委員会報告書」の執筆者たちの説明では、「持続可能な開発とは、次の二つの概念を含みます。ニーズの概念と限界の概念です。現在世代と将来世代のニーズは人類の叡智に支援によって満たされなければなりませんが、それは安定的な生物圏の範囲内でなければなりません。森林についていうと、森林から原材料やサービスなどの便益を得たいのならば、その生態学的な機能を損なわないような方法でなされなければならない、ということを意味します。森林と開発の双方が維持されなければいけないのです。
脚注
(コラム) 「森林での昼食はタダじゃない」
コパイバのハンドローションやレインフォレストクッキーのような生産物がアマゾンの熱帯雨林を保全するのに役立つことを消費者に納得させることは、アメリカや他の国々においてマーケティング戦略として成功し続けています。
しかし、執筆者の一人が説明するように「木は切られていないし、森林は破壊されていないといえばその通りだが、熱帯雨林から果実や油をとるための種子、ゴムなどを商業的な量で採集することは、全体的にみて持続可能だとはいえない。実際には、これらの活動は最終的に森林を害することになるだろう。」この潜在的な危害は、大きくて生産性の高い木が永遠に生き続けるわけではなく、絶えずより若い木に入れ替わっていく必要があるために生ずるものです。この事実を考えないで果実や種子を採り続けることは、その種にとって非常に有害です。例えば、ブラジルの木の実を栽培する畑では苗木や若木が不足し、その種が既に過剰に搾取されてしまったかもしれないということを示しています。
天然の熱帯雨林の樹木はあまり密集していないところで育つので、種子や果実を持続的に収穫することも難しくなっています。温帯林では、大面積の森がわずか一種か二種の樹木で構成されていることもありますが、それとは異なり、熱帯雨林にはある特定の種が1エーカーあたりわずか2~3個体しか存在しないのです。このような種の密度の低さのために採集者は特定の果実や木の実、その他の資源を商売できるだけの量集めるために、何百エーカーもの森林を踏破しなければならないのです。それはまた、最も行きやすい森林が、同時に繰り返し収穫される地域でもある、ということを意味します。
同じような問題は世界中の他の森林でも起こっています。例えばアメリカの太平洋岸北西部では、コケやキノコのような林産物を採集することは、木を切るよりは森林にとってよいことだと多くの人が思い込んでいます。しかし、コケは栄養分を吸収したり、湿度や水の流量を調節したりするうえで重要な役割を果たしていることから、大規模にわたってコケをはぎ取ることは森林の仕組みにとって非常に有害ですし、キノコの供給が限られてくると、採集者の間では時に暴力的な口論になることもありました。
(P.67)
準備する
生徒用ページをコピーする。
アクティビティの進め方
1. 生徒に次の質問をしてアクティビティの導入を行う。
世界の人口の何%が、調理、水の温め、暖房のために木を使っていると思うか?[答え:約40%]
世界中の多くの世帯で、家族の一人が毎日一時間かけて調理に必要な薪を探し集め、家に運んでいる。調理用の薪をとるためだけに毎日ほぼ一時間を費やさなければならないとしたら、あなたの一日の生活にどのような影響があるだろうか?
この基本的なニーズを満たすことは、森林にどのような影響を及ぼすだろうか?
燃料用材に加え、世界の人々は森林をどのように利用しているだろうか(黒板に列記する。)?
同様に、これらの利用は森林のどのような影響を及ぼすだろうか?
森林により大きな、あるいは小さな影響を及ぼすのはどの利用法だろうか?
2. クラスを二人組もしくは少人数のグループに分け、生徒用ページ「人々の森林利用」のコピーを配る。各グループでそこに記載されたケースのうちの一つを読み、生徒用ページ「どのような結果になったか?」の質問1-8に答えることにより、そのケースを分析させる。
3. 次の質問について議論する。
それぞれのケースについて、なぜ森林をそのように利用するのかに対する、地元の人々の考え方はどのようなものか?
各グループは「必須の」という言葉をどのように定義したか?利用の仕方が必須かどうかを決めるためにどのような判断基準を用いたか?
短期的そして長期的な影響の点で、これらの利用法はどのように比較されるだろうか?
ある行為が及ぼす影響の大小を決める条件は何だろうか?
その影響を減少させるためには、どのようなことが考えられるだろうか?(生徒に、自分たちの回答を共通のカテゴリーに分類し、グループ化させる。)
どのような追加の情報があればよかっただろうか?
4. 生徒たちで話し合わせたり、インターネットで調べたりして「持続可能な」という言葉の定義を考え出させる。各グループの定義を共有する。そして、共有された定義の核となる要素を明らかにさせる。「『森林の持続可能性』という用語は、どんな意味だろうか?ある森林の利用法が持続可能である場合、どのような条件が当てはまると考えるか?」と尋ねる。生徒の考えを黒板に書き出す。
5. 生徒用ページ「森林の持続可能性の三要素」のコピーを配る。それを読み、そこに書かれた森林の持続可能性についての考え方の長所と短所、そして自分たちが考え出した定義とどう違っているかを生徒に議論させる。
写真キャプション:グァテマラのエコツーリズム
6. 各グループに、もう一度自分たちのケースに戻り、生徒用ページ「どのような結果になったか?」の質問9に答えさせる。
7. 自分たちのケースについての各グループの結論をクラスで共有する。持続可能性は、概念としてはシンプルだが、実行するのは非常に複雑であることに生徒が気づくよう支援する。質問9に対する生徒の回答に着目し、ある要素を変更することが他の人々や資源にどのような影響を及ぼすかに生徒が気づくよう支援する。ある意味では生産物が持続的に収穫されているが、別の点で森林に影響を及ぼしているという、背景の項目からの例(コラム「森林での昼食はタダじゃない」を参照)を生徒に示す。
8. 以下の質問について議論する。
持続可能性の三要素は、地域的な視点と地球規模の視点から検討される必要がある。自分たちのグループのケースでは、地域の視点は外部の者の視点とどのように違っているだろうか?
地域の人々の考えと外部の人の考えが異なる場合、どんなことが起こると考えられるだろうか?
どのような場合に、地域の人々は森林の利用法に関する完全な発言権を持つべきだろうか?どのような状況の下で、外部の人々は意思決定に加わるべきだろうか?
発展途上国と先進国は木材を同じような割合で、しかし別の目的で使用している。発展途上国で最も多い利用は薪(木炭を含む)であり、先進国では紙である。与える影響の点から、これら二つの利用法を比較するとどうだろうか?
(P.68)
写真キャプション:グァテマラの材木
展開
森林と持続可能性の問題を扱ったニュースの記事を探し、クラスに持ってきて他の生徒と共有させる。
持続可能性の他のモデルを調査し、このアクティビティで実施したモデルと比較させる。例えば、教育者のMax Oelschlaegerは、持続可能性に関する6つの中核的な、相互に関連性のある変数を特定している。適切な技術、民主的な手続き、生態学的な健全性、経済効率性、人間の尊厳、社会的公正である。
職業:生徒に、森林官、商店経営者あるいは、地域レベルもしくは国際的なレベルで森林の多様な利用の持続可能性に関係する地域の人々と話をさせる。生徒は、それぞれの人の(a)森林の持続可能性に及ぼす人間の影響を考慮に入れた持続可能性、(b)持続可能性は達成可能か、(c)どんな人々が持続可能性の達成に向けて働くことができるか、についての考えを尋ねる。
資料
関連メディア
(P.69)
生徒用ページ「人々の森林利用」
ケースA:インド・ヒマラヤ地方における肥料
インド・ヒマラヤ地方の人々は、年二回の収穫期に頼って生存している。雨季の米とキビ、冬季の小麦である。集約的な農業が土壌から多量の栄養分を奪うので、農家の人々は森林から得た葉を使って、栄養分の不足を補っている。
ヒマラヤの農家の、肥料としての葉の使い方は、根おおいとして直接畑に敷くことである。また家畜の牛や水牛に葉を飼料として与え、堆肥として土にすきこむための肥料に変えている。堆肥にすることに加え、農家は畑の耕作や、家族のために乳や肉を得ることを目的として家畜を利用している。
インドの多くの地域では、森林は急峻な斜面や人が行けないような場所にわずかに見られるだけである。毎年、女性は葉を集めるためにより一生懸命働き、遠くまで出かける。このことは木の高いところで枝を切り落とすときや、重たい家畜の飼料を担いで長距離を歩くときなどに、彼女たちがけがをするリスクを高めている。時間を節約するために、彼女たちはしばしば近くにある木の葉を採取するが、葉を採り過ぎた結果としてそれらの木の寿命は短くなり、森林減少の加速を引き起こしている。
ケースB:コスタリカのエコツーリズム
コスタリカの熱帯雨林は12,000を超える在来の植物種と、約300の動物種を擁する豊かで生命力にあふれた場所である。野生生物は非常に多様性に富んでいる。コスタリカは南北アメリカ大陸の架け橋になっているので、二つの大陸を行き来する多くの種をコスタリカで見ることができる。
1960年代から1970年代にかけて、コスタリカの熱帯雨林は増大する人口のせいで危機にさらされていた。日々の暮らしの中で欠かせない作業と向き合う中で、地元の人々は農耕や放牧のための開墾と調理用の燃料材を得ることを目的として木を伐採していた。
地元の人々に生活の糧を供給しながら、熱帯雨林を維持する方法を模索する中で、1980年代半ば、コスタリカはエコツーリズムの事業を開始した。エコツーリズムは旅行者に、自然環境について学び、楽しむことを目的としてその地域を訪れるよう勧める。エコツーリズムでは、ハイキングをしたり、ボートに乗ったり、森の中でバードウォッチングをしたりする。理論上は、木がそれ以上伐られることがなくなるため森が豊かになり、雇用と収入を得て地元の人々も豊かになるというwin-winの関係が成り立つ。これにより、手つかずの熱帯雨林が貴重な資源になる。1994年までにエコツーリズムは、コスタリカにとってバナナに次ぐ二番目の外貨獲得手段となった。
エコツーリズムは熱帯雨林を守ったが、新たな問題も生じてきた。例えばエコツーリズムによって、多くの人を受け入れる設備-駐車場、遊歩道、あるいはネイチャーセンター-のない公園に、何千人もの観光客が押し寄せるようになった。ごみや歩道の浸食が問題となっている地域もある。多くの外国人観光客が訪れることにより、地域独自の文化が消滅するのではないかという懸念も生じている。
ケースC:コンゴ民主共和国の木炭生産
木炭はコンゴ民主共和国において、調理や食料生産のための主要なエネルギー源である。何百年にもわたって彼らの文化の一翼を担ってきたものなので、多くの人々は木炭を好む。それらはエネルギーが集約された形態であり、薪よりも熱く、きれいに燃焼する。森林で得た肉は普通木炭によって調理され、珍味として扱われている。
木からできているため、木炭は実は薪炭材の一種である。木炭生産は森林で始まっており、そこでは木が取り除かれ、伐られている。伐られた木は炭焼き釜に入れられ、酸素を制限した状態でゆっくり燃やされる。この過程で、木は最も基本的な炭素含有物に変えられる。
木炭を生産することは地域の人々に重要な仕事をもたらし、また農作業と並行して行うこともできる。生産者は、原材料(天然林からの木材)を無料で使用し、需要の大きい、市場で売れる商品に変えることができる。しかし、コンゴ民主共和国では、木が再び成長するよりも早いペースで人々が木を伐るので、木炭生産は森林への大きな脅威でもある。この問題により森林面積は縮小し、木炭の価格は上昇した。木炭がこれまでにない長距離を輸送されるようになったため、その価格は着実に上昇している。この上昇により今度は、木を利用する小規模産業が打撃を受け、家計への圧力が高まってきた。さらに、木炭の使用により、地球温暖化の原因となる主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2) の排出量が増加している。
これらの理由により、多くの人々が木炭生産は完全にやめるべきだと考えている。しかし、コンゴの人々は調理に木炭を使用したいと考えており、代替エネルギー源はより値段が高いので、木炭の生産あるいは使用を禁止する試みは、ほぼ不成功に終わってきた。
ケースD:韓国の高齢者向け住居
韓国(以前の南朝鮮)はかつて、木々が青々と茂っていたが、何百年にもわたる過剰な利用、外国による占領、戦争などによって、1900年代までに森林がほぼ消失してしまった。1980年代になって、韓国は植林と保護林の設定を開始した。これらの森林が成熟するまで、韓国は建築その他に利用するすべての木材を輸入しなければならない。
人口密度が非常に高く、資源が限られており、輸入木材に頼る小さな国の市民として、韓国の人々は非常に効率的に木製品を利用する術を身につけてきた。彼らが現在向き合っている課題の一つに、高齢者を持続可能かつ快適で健康的な生活環境の下で暮らせる住居をいかに提供するか、がある。韓国は2026年までに「超高齢化社会」つまり人口の20%が65歳以上になると予測されているので、この問題は非常に重要である。
伝統的に、韓国の住居は建築材料として多くの木や石を使っている。今日、多くの韓国の世帯は、産業化された都市にあるセメントでできた高層のアパートやマンションに住んでいる。このタイプの住居の一戸一戸は一般的に、多世代が一緒に暮らすのを支えるには狭すぎるし高額すぎる。さらに、韓国の高齢者の多くは日照と木に満たされた、森林や山が見える住居を好む傾向がある。
(P.71)
社会的、経済的、そして環境的なニーズを考慮した高齢者向け住宅を計画することにより、韓国は持続的な成長に向けた実現可能な解を見つけようとしている。この「緑の」アプローチでは、高齢者向け住居を都市の周縁部、汚染や騒音から隔離された自然に近い場所に配置することになっている。また、持続可能な手法で伐採され、効率的に生産された木質材料を用いる。これにより、他の方法に比べ断熱性が高く、エネルギー効率もよくなるとされている。
ケースE:ペルーのマホガニー-「緑の金」
人々は、その美しい色と加工のしやすさ、丈夫さから、長い間マホガニーの木を大切にしてきた。中でもマホガニー材は高価な机、おもてなし用の設備、ギター、高級パネルなどに使用されている。一度加工されると、一本のマホガニーの木からつくられる製品の価格は10万ドルにもなる。そのため、数百万ドル規模のマホガニービジネスは、「緑の金」というニックネームで呼ばれてきた。
マホガニーの木は中央アメリカと南アメリカの熱帯雨林で成長する。かつてはブラジルが最大のマホガニー輸出国であったが、違法伐採を厳重に取り締まるようになったため、今は多くのマホガニーはペルー産である。2002年、ペルーは45,000立方メートル(160万立方フィート)のマホガニーをアメリカの港向けに輸出しており、これは1992年の輸出量の20倍にあたる。
成熟した木は、37メートル(120フィート)を超える高さになることもあるが、かつてはアンデス山脈東側のペルーの熱帯雨林じゅうにそびえ立っていた。伐採者たちはアクセスの容易な区域から木を伐り始め、今では熱帯雨林のより奥深いところまで移動してきている。インディアンのために留保された区域からも伐採されているし-国立公園や保護区からさえも伐採されている。
ペルーはマホガニー伐採に関する国連のガイドラインを採択しているが、ペルー産マホガニーの90%は違法伐採されたものである。輸出業者は合法的に伐採された木であることの証明書を取得することとされているが、認証システムは汚職にまみれており、証明書はわずか120ドルで入手できる、あるいは簡単に偽造できる。
出典(略)
(P.72)
生徒用ページ「どのような結果になったか?」
自分たちのグループのケースについて、次の質問に答えなさい。多くの質問には「正しい」答えがあるわけではないことに注意しなさい。
1. どのケースを分析したか?
2. そのケースでは、森林はどのように利用されているか?
3. 人々はなぜ、そのように利用しているのか?
4. その利用法により、誰が利益を得ているか?
それぞれの受益者グループについて、この利用法はどのくらい不可欠なものか?(1=それほど必要ではない、5=生存に関わるほど重要)
5. この利用法が森林そのものに与える影響に点数をつけなさい。(1=影響は小さい、5=影響は大きい)
6. その影響は短期間(1年未満)、長期間(100年を超える)、あるいはその中間だろうか?
7. もしより多くの人々が同じように森林を利用したら、その影響はどうなるだろうか?
8. どうすればこの利用法による影響を軽減できるだろうか?
9. この利用法は持続可能だろうか?そうでないならば、持続可能性のどの要素が欠けているのだろうか?
(P.73)
生徒用ページ「森林の持続可能性の三要素」
過去100年の間、人間は生態系、生物多様性、養分の循環、エネルギーの流れについて多くのことを学んできた。これらの新しい知見を得たにも拘わらず、私たちはいまだに森林を持続可能な形で利用する方法についてジレンマに直面している。
森林の持続可能性は、将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代に生きる世代のニーズを満たすように森林を管理すること、と定義できる。それは多くの場合、社会の森林に対する要求と、森林の健全性と多様性を保全するニーズとのバランスの問題として現れる。多くの人々は、三つの要素-経済、環境、そして社会-に注目することによって持続可能性を検討する「トリプルボトムライン」アプローチを用いている。
これら三つの要素を考慮する一つの手法を図1に示す。各要素-経済的繁栄、環境保護、社会的幸福-は相互に依存しており、ある特定の状況においてはその程度が大きくなったり小さくなったりする。森林の持続可能性の究極の目標は、中央の影付きの部分に示す通り、全三要素の調和がとれることである。
持続可能性の三要素について考えるもう一つの手法を図2に示す。この図が示すように、人間の経済は社会と社会的幸福に依存している。同様に、社会は大気、エネルギー、食料、工業原料などを与えてくれる環境に依存している。こうして、経済は社会に依存し、同様に社会は自然環境に依存していることになる。
森林の持続可能性の本質的な考え方は、環境、社会、経済の論点や理想が、森林に影響を及ぼす決定や行動に含まれ、同時に将来と現在のニーズについても考慮されることである。
図1.持続可能性の要素
環境保護:森林自体が健全に機能すること
社会的幸福:森林に依存する地域社会が社会、文化、政治的に健全な状態
経済的繁栄:森林に依存する人たちの経済的繁栄
(中央)森林の持続可能性の目標はこれら三要素の調和である
図2.持続可能性の「トリプルボトムライン」 経済 社会 環境
出典(略)
5.森林の効用を理解する
このアクティビティでは、生徒は世界の森林のさまざまな利用が与える影響を分析し、ある定義に従えば、どれが持続可能ではない使い方かを決定します。
Subjects 科目
社会、科学、国際理解(International Studies)
Searchable Key Words 検索語
林産物、森林の効用、森林の利用、木製品、木材の利用
Concepts 概念
2.6 資源を節約し環境を守ることへの国際協力は、人間の健康および他の生命体にとっての健全性を生み出します。
2.11 すべての人は製品を消費することによって再生可能および再生不可能な自然資源の有効性に影響を与えます。
4.3 地球を一つの生態系システムとして調べられるとき、スケールにかかわりなくすべての行動は何らかの方法で生物圏に影響を与えます。
Skills スキル
分析する、評価する、中心となる考えを同定する
Materials 準備物
生徒用ページのコピー
Time Considerations 必要な時間
準備:15分
アクティビティ:50分×1コマ
Related Activities in Other PLT Guides 他のPLTテキストに掲載された関連アクティビティ
Far Reaching Decisions(「私たちの住む場所」)
A vision for the Future(「私たちの住む場所」)
Objectives ねらい
➢ 生徒が、便益や正負の効果の観点から、様々な森林の利用法を分析する。
➢ 生徒が、どの利用法が持続可能かを決定する。
Assessments 評価
➢ 生徒用ページ「どのような結果になったか?」の回答を用いて、様々な森林利用による長期的及び短期的な結果、便益と正負の効果、持続可能性についての生徒の理解度を判定する。多くの質問が一つの「正しい」答えを有しているわけではないことに留意する。例えばケースAでは、質問8の答えには別の場所から葉を持ち込む、肥料になる別のものを見つける、人の数を少なくする、などの答えが考えられる。
➢ 生徒に、次の質問に対する回答を書かせる;「それぞれのケースの持続可能性を高めるために、あなたは何をしますか?どのようにしますか?」
Background 背景
人間による森林の利用法は、森林のタイプや場所、所有形態や生産性などによって、時間とともに変化してきました。伝統的に-そして今日の多くの発展途上国では-、人々は実に多様な有用な生産物を生み出すために森林を利用しています。彼らは、動物の狩猟、果実や木の実の採集など、食料を得るために森林に頼っています。木の葉を家畜の飼料にしています。調理のための燃料や建築の材料にするために、木を伐ります。衣類や住まいとして利用するために様々な繊維を加工したり、薬や道具にするための原材料を手に入れたりします。かつて森林は、これらの多様な利用形態を長期にわたって支えてきましたが、世界の人口が増加するに従って、森林への圧力も高まってきました。
薪と木炭の燃料材としての利用は、人間の、森林に対する増加する圧力の一例です。世界のほぼ30億人の人々-発展途上国の世帯の約80%-が、調理、採暖、照明を森林から得た燃料に頼っています。エネルギー源として、木材は多くの地方で姿を消しつつあります。家や村から近い場所の薪炭材が枯渇するにつれて、女性(と少女)はこの基本的なニーズを満たすためにより多くの時間を使うようになっています。例えばネパールでは、女性は薪を集めるために、一日に平均三時間を費やしています。
日本やヨーロッパ、北アメリカなどの先進国では、木材は通常、家庭でのエネルギーとして直接使われることはありません。代わりに人々は、水力、天然ガス、石炭その他の資源を使用します。オーストリア、フィンランド、スウェーデンでは、国の一次エネルギー供給の12~18%を木材のエネルギーで賄っています。
(P.66)
先進国では、森林は主に建築用材、紙、梱包用材として使用され、燃料生産ではなく木材生産を目的として集約的に管理されています。他の選択肢もあるため、これらの国々では森林やレクリエーションや野生生物の保全の目的でも重要視されてきており、森林植生の増加がみられる地域もあります。それでも、林産物の供給は需要を満たしておらず、先進国の多くは自分たちの需要を満たすことができず、他国から林産物を輸入しなければなりません。
先進国では、エネルギーとして利用される木材でなく、林産物としての需要が多くを占めています。例えば、北アメリカとヨーロッパの国々、そして日本は、世界の人口の6分の1しか有していませんが、世界の紙・板紙の3分の2、産業用木材の半分を消費しています。さらに、林産物に対する需要は、更なる薪炭材の需要とともに発展途上国でも増加しつつあります。
人間はどうすれば世界の森林を維持することができるでしょうか。その答えは決して単純ではありませんが、この疑問に答えるために多くの国際的な取り組みが導入されてきました(その複雑さを内包する一例として、以下のコラム「森林での昼食はタダじゃない」を参照のこと)。その重要な最初の一歩として、持続可能性とは何かを定義し、維持されなければならない重要な森林の側面を明らかにする取り組みがなされてきました。これらの取り組みについて詳しく知りたい場合は、「Activity 6.持続可能性を求めて」を見てください。
「森林と持続可能な開発に関する世界委員会報告書」の執筆者たちの説明では、「持続可能な開発とは、次の二つの概念を含みます。ニーズの概念と限界の概念です。現在世代と将来世代のニーズは人類の叡智に支援によって満たされなければなりませんが、それは安定的な生物圏の範囲内でなければなりません。森林についていうと、森林から原材料やサービスなどの便益を得たいのならば、その生態学的な機能を損なわないような方法でなされなければならない、ということを意味します。森林と開発の双方が維持されなければいけないのです。
脚注
(コラム) 「森林での昼食はタダじゃない」
コパイバのハンドローションやレインフォレストクッキーのような生産物がアマゾンの熱帯雨林を保全するのに役立つことを消費者に納得させることは、アメリカや他の国々においてマーケティング戦略として成功し続けています。
しかし、執筆者の一人が説明するように「木は切られていないし、森林は破壊されていないといえばその通りだが、熱帯雨林から果実や油をとるための種子、ゴムなどを商業的な量で採集することは、全体的にみて持続可能だとはいえない。実際には、これらの活動は最終的に森林を害することになるだろう。」この潜在的な危害は、大きくて生産性の高い木が永遠に生き続けるわけではなく、絶えずより若い木に入れ替わっていく必要があるために生ずるものです。この事実を考えないで果実や種子を採り続けることは、その種にとって非常に有害です。例えば、ブラジルの木の実を栽培する畑では苗木や若木が不足し、その種が既に過剰に搾取されてしまったかもしれないということを示しています。
天然の熱帯雨林の樹木はあまり密集していないところで育つので、種子や果実を持続的に収穫することも難しくなっています。温帯林では、大面積の森がわずか一種か二種の樹木で構成されていることもありますが、それとは異なり、熱帯雨林にはある特定の種が1エーカーあたりわずか2~3個体しか存在しないのです。このような種の密度の低さのために採集者は特定の果実や木の実、その他の資源を商売できるだけの量集めるために、何百エーカーもの森林を踏破しなければならないのです。それはまた、最も行きやすい森林が、同時に繰り返し収穫される地域でもある、ということを意味します。
同じような問題は世界中の他の森林でも起こっています。例えばアメリカの太平洋岸北西部では、コケやキノコのような林産物を採集することは、木を切るよりは森林にとってよいことだと多くの人が思い込んでいます。しかし、コケは栄養分を吸収したり、湿度や水の流量を調節したりするうえで重要な役割を果たしていることから、大規模にわたってコケをはぎ取ることは森林の仕組みにとって非常に有害ですし、キノコの供給が限られてくると、採集者の間では時に暴力的な口論になることもありました。
(P.67)
準備する
生徒用ページをコピーする。
アクティビティの進め方
1. 生徒に次の質問をしてアクティビティの導入を行う。
世界の人口の何%が、調理、水の温め、暖房のために木を使っていると思うか?[答え:約40%]
世界中の多くの世帯で、家族の一人が毎日一時間かけて調理に必要な薪を探し集め、家に運んでいる。調理用の薪をとるためだけに毎日ほぼ一時間を費やさなければならないとしたら、あなたの一日の生活にどのような影響があるだろうか?
この基本的なニーズを満たすことは、森林にどのような影響を及ぼすだろうか?
燃料用材に加え、世界の人々は森林をどのように利用しているだろうか(黒板に列記する。)?
同様に、これらの利用は森林のどのような影響を及ぼすだろうか?
森林により大きな、あるいは小さな影響を及ぼすのはどの利用法だろうか?
2. クラスを二人組もしくは少人数のグループに分け、生徒用ページ「人々の森林利用」のコピーを配る。各グループでそこに記載されたケースのうちの一つを読み、生徒用ページ「どのような結果になったか?」の質問1-8に答えることにより、そのケースを分析させる。
3. 次の質問について議論する。
それぞれのケースについて、なぜ森林をそのように利用するのかに対する、地元の人々の考え方はどのようなものか?
各グループは「必須の」という言葉をどのように定義したか?利用の仕方が必須かどうかを決めるためにどのような判断基準を用いたか?
短期的そして長期的な影響の点で、これらの利用法はどのように比較されるだろうか?
ある行為が及ぼす影響の大小を決める条件は何だろうか?
その影響を減少させるためには、どのようなことが考えられるだろうか?(生徒に、自分たちの回答を共通のカテゴリーに分類し、グループ化させる。)
どのような追加の情報があればよかっただろうか?
4. 生徒たちで話し合わせたり、インターネットで調べたりして「持続可能な」という言葉の定義を考え出させる。各グループの定義を共有する。そして、共有された定義の核となる要素を明らかにさせる。「『森林の持続可能性』という用語は、どんな意味だろうか?ある森林の利用法が持続可能である場合、どのような条件が当てはまると考えるか?」と尋ねる。生徒の考えを黒板に書き出す。
5. 生徒用ページ「森林の持続可能性の三要素」のコピーを配る。それを読み、そこに書かれた森林の持続可能性についての考え方の長所と短所、そして自分たちが考え出した定義とどう違っているかを生徒に議論させる。
写真キャプション:グァテマラのエコツーリズム
6. 各グループに、もう一度自分たちのケースに戻り、生徒用ページ「どのような結果になったか?」の質問9に答えさせる。
7. 自分たちのケースについての各グループの結論をクラスで共有する。持続可能性は、概念としてはシンプルだが、実行するのは非常に複雑であることに生徒が気づくよう支援する。質問9に対する生徒の回答に着目し、ある要素を変更することが他の人々や資源にどのような影響を及ぼすかに生徒が気づくよう支援する。ある意味では生産物が持続的に収穫されているが、別の点で森林に影響を及ぼしているという、背景の項目からの例(コラム「森林での昼食はタダじゃない」を参照)を生徒に示す。
8. 以下の質問について議論する。
持続可能性の三要素は、地域的な視点と地球規模の視点から検討される必要がある。自分たちのグループのケースでは、地域の視点は外部の者の視点とどのように違っているだろうか?
地域の人々の考えと外部の人の考えが異なる場合、どんなことが起こると考えられるだろうか?
どのような場合に、地域の人々は森林の利用法に関する完全な発言権を持つべきだろうか?どのような状況の下で、外部の人々は意思決定に加わるべきだろうか?
発展途上国と先進国は木材を同じような割合で、しかし別の目的で使用している。発展途上国で最も多い利用は薪(木炭を含む)であり、先進国では紙である。与える影響の点から、これら二つの利用法を比較するとどうだろうか?
(P.68)
写真キャプション:グァテマラの材木
展開
森林と持続可能性の問題を扱ったニュースの記事を探し、クラスに持ってきて他の生徒と共有させる。
持続可能性の他のモデルを調査し、このアクティビティで実施したモデルと比較させる。例えば、教育者のMax Oelschlaegerは、持続可能性に関する6つの中核的な、相互に関連性のある変数を特定している。適切な技術、民主的な手続き、生態学的な健全性、経済効率性、人間の尊厳、社会的公正である。
職業:生徒に、森林官、商店経営者あるいは、地域レベルもしくは国際的なレベルで森林の多様な利用の持続可能性に関係する地域の人々と話をさせる。生徒は、それぞれの人の(a)森林の持続可能性に及ぼす人間の影響を考慮に入れた持続可能性、(b)持続可能性は達成可能か、(c)どんな人々が持続可能性の達成に向けて働くことができるか、についての考えを尋ねる。
資料
関連メディア
(P.69)
生徒用ページ「人々の森林利用」
ケースA:インド・ヒマラヤ地方における肥料
インド・ヒマラヤ地方の人々は、年二回の収穫期に頼って生存している。雨季の米とキビ、冬季の小麦である。集約的な農業が土壌から多量の栄養分を奪うので、農家の人々は森林から得た葉を使って、栄養分の不足を補っている。
ヒマラヤの農家の、肥料としての葉の使い方は、根おおいとして直接畑に敷くことである。また家畜の牛や水牛に葉を飼料として与え、堆肥として土にすきこむための肥料に変えている。堆肥にすることに加え、農家は畑の耕作や、家族のために乳や肉を得ることを目的として家畜を利用している。
インドの多くの地域では、森林は急峻な斜面や人が行けないような場所にわずかに見られるだけである。毎年、女性は葉を集めるためにより一生懸命働き、遠くまで出かける。このことは木の高いところで枝を切り落とすときや、重たい家畜の飼料を担いで長距離を歩くときなどに、彼女たちがけがをするリスクを高めている。時間を節約するために、彼女たちはしばしば近くにある木の葉を採取するが、葉を採り過ぎた結果としてそれらの木の寿命は短くなり、森林減少の加速を引き起こしている。
ケースB:コスタリカのエコツーリズム
コスタリカの熱帯雨林は12,000を超える在来の植物種と、約300の動物種を擁する豊かで生命力にあふれた場所である。野生生物は非常に多様性に富んでいる。コスタリカは南北アメリカ大陸の架け橋になっているので、二つの大陸を行き来する多くの種をコスタリカで見ることができる。
1960年代から1970年代にかけて、コスタリカの熱帯雨林は増大する人口のせいで危機にさらされていた。日々の暮らしの中で欠かせない作業と向き合う中で、地元の人々は農耕や放牧のための開墾と調理用の燃料材を得ることを目的として木を伐採していた。
地元の人々に生活の糧を供給しながら、熱帯雨林を維持する方法を模索する中で、1980年代半ば、コスタリカはエコツーリズムの事業を開始した。エコツーリズムは旅行者に、自然環境について学び、楽しむことを目的としてその地域を訪れるよう勧める。エコツーリズムでは、ハイキングをしたり、ボートに乗ったり、森の中でバードウォッチングをしたりする。理論上は、木がそれ以上伐られることがなくなるため森が豊かになり、雇用と収入を得て地元の人々も豊かになるというwin-winの関係が成り立つ。これにより、手つかずの熱帯雨林が貴重な資源になる。1994年までにエコツーリズムは、コスタリカにとってバナナに次ぐ二番目の外貨獲得手段となった。
エコツーリズムは熱帯雨林を守ったが、新たな問題も生じてきた。例えばエコツーリズムによって、多くの人を受け入れる設備-駐車場、遊歩道、あるいはネイチャーセンター-のない公園に、何千人もの観光客が押し寄せるようになった。ごみや歩道の浸食が問題となっている地域もある。多くの外国人観光客が訪れることにより、地域独自の文化が消滅するのではないかという懸念も生じている。
ケースC:コンゴ民主共和国の木炭生産
木炭はコンゴ民主共和国において、調理や食料生産のための主要なエネルギー源である。何百年にもわたって彼らの文化の一翼を担ってきたものなので、多くの人々は木炭を好む。それらはエネルギーが集約された形態であり、薪よりも熱く、きれいに燃焼する。森林で得た肉は普通木炭によって調理され、珍味として扱われている。
木からできているため、木炭は実は薪炭材の一種である。木炭生産は森林で始まっており、そこでは木が取り除かれ、伐られている。伐られた木は炭焼き釜に入れられ、酸素を制限した状態でゆっくり燃やされる。この過程で、木は最も基本的な炭素含有物に変えられる。
木炭を生産することは地域の人々に重要な仕事をもたらし、また農作業と並行して行うこともできる。生産者は、原材料(天然林からの木材)を無料で使用し、需要の大きい、市場で売れる商品に変えることができる。しかし、コンゴ民主共和国では、木が再び成長するよりも早いペースで人々が木を伐るので、木炭生産は森林への大きな脅威でもある。この問題により森林面積は縮小し、木炭の価格は上昇した。木炭がこれまでにない長距離を輸送されるようになったため、その価格は着実に上昇している。この上昇により今度は、木を利用する小規模産業が打撃を受け、家計への圧力が高まってきた。さらに、木炭の使用により、地球温暖化の原因となる主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2) の排出量が増加している。
これらの理由により、多くの人々が木炭生産は完全にやめるべきだと考えている。しかし、コンゴの人々は調理に木炭を使用したいと考えており、代替エネルギー源はより値段が高いので、木炭の生産あるいは使用を禁止する試みは、ほぼ不成功に終わってきた。
ケースD:韓国の高齢者向け住居
韓国(以前の南朝鮮)はかつて、木々が青々と茂っていたが、何百年にもわたる過剰な利用、外国による占領、戦争などによって、1900年代までに森林がほぼ消失してしまった。1980年代になって、韓国は植林と保護林の設定を開始した。これらの森林が成熟するまで、韓国は建築その他に利用するすべての木材を輸入しなければならない。
人口密度が非常に高く、資源が限られており、輸入木材に頼る小さな国の市民として、韓国の人々は非常に効率的に木製品を利用する術を身につけてきた。彼らが現在向き合っている課題の一つに、高齢者を持続可能かつ快適で健康的な生活環境の下で暮らせる住居をいかに提供するか、がある。韓国は2026年までに「超高齢化社会」つまり人口の20%が65歳以上になると予測されているので、この問題は非常に重要である。
伝統的に、韓国の住居は建築材料として多くの木や石を使っている。今日、多くの韓国の世帯は、産業化された都市にあるセメントでできた高層のアパートやマンションに住んでいる。このタイプの住居の一戸一戸は一般的に、多世代が一緒に暮らすのを支えるには狭すぎるし高額すぎる。さらに、韓国の高齢者の多くは日照と木に満たされた、森林や山が見える住居を好む傾向がある。
(P.71)
社会的、経済的、そして環境的なニーズを考慮した高齢者向け住宅を計画することにより、韓国は持続的な成長に向けた実現可能な解を見つけようとしている。この「緑の」アプローチでは、高齢者向け住居を都市の周縁部、汚染や騒音から隔離された自然に近い場所に配置することになっている。また、持続可能な手法で伐採され、効率的に生産された木質材料を用いる。これにより、他の方法に比べ断熱性が高く、エネルギー効率もよくなるとされている。
ケースE:ペルーのマホガニー-「緑の金」
人々は、その美しい色と加工のしやすさ、丈夫さから、長い間マホガニーの木を大切にしてきた。中でもマホガニー材は高価な机、おもてなし用の設備、ギター、高級パネルなどに使用されている。一度加工されると、一本のマホガニーの木からつくられる製品の価格は10万ドルにもなる。そのため、数百万ドル規模のマホガニービジネスは、「緑の金」というニックネームで呼ばれてきた。
マホガニーの木は中央アメリカと南アメリカの熱帯雨林で成長する。かつてはブラジルが最大のマホガニー輸出国であったが、違法伐採を厳重に取り締まるようになったため、今は多くのマホガニーはペルー産である。2002年、ペルーは45,000立方メートル(160万立方フィート)のマホガニーをアメリカの港向けに輸出しており、これは1992年の輸出量の20倍にあたる。
成熟した木は、37メートル(120フィート)を超える高さになることもあるが、かつてはアンデス山脈東側のペルーの熱帯雨林じゅうにそびえ立っていた。伐採者たちはアクセスの容易な区域から木を伐り始め、今では熱帯雨林のより奥深いところまで移動してきている。インディアンのために留保された区域からも伐採されているし-国立公園や保護区からさえも伐採されている。
ペルーはマホガニー伐採に関する国連のガイドラインを採択しているが、ペルー産マホガニーの90%は違法伐採されたものである。輸出業者は合法的に伐採された木であることの証明書を取得することとされているが、認証システムは汚職にまみれており、証明書はわずか120ドルで入手できる、あるいは簡単に偽造できる。
出典(略)
(P.72)
生徒用ページ「どのような結果になったか?」
自分たちのグループのケースについて、次の質問に答えなさい。多くの質問には「正しい」答えがあるわけではないことに注意しなさい。
1. どのケースを分析したか?
2. そのケースでは、森林はどのように利用されているか?
3. 人々はなぜ、そのように利用しているのか?
4. その利用法により、誰が利益を得ているか?
それぞれの受益者グループについて、この利用法はどのくらい不可欠なものか?(1=それほど必要ではない、5=生存に関わるほど重要)
5. この利用法が森林そのものに与える影響に点数をつけなさい。(1=影響は小さい、5=影響は大きい)
6. その影響は短期間(1年未満)、長期間(100年を超える)、あるいはその中間だろうか?
7. もしより多くの人々が同じように森林を利用したら、その影響はどうなるだろうか?
8. どうすればこの利用法による影響を軽減できるだろうか?
9. この利用法は持続可能だろうか?そうでないならば、持続可能性のどの要素が欠けているのだろうか?
(P.73)
生徒用ページ「森林の持続可能性の三要素」
過去100年の間、人間は生態系、生物多様性、養分の循環、エネルギーの流れについて多くのことを学んできた。これらの新しい知見を得たにも拘わらず、私たちはいまだに森林を持続可能な形で利用する方法についてジレンマに直面している。
森林の持続可能性は、将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代に生きる世代のニーズを満たすように森林を管理すること、と定義できる。それは多くの場合、社会の森林に対する要求と、森林の健全性と多様性を保全するニーズとのバランスの問題として現れる。多くの人々は、三つの要素-経済、環境、そして社会-に注目することによって持続可能性を検討する「トリプルボトムライン」アプローチを用いている。
これら三つの要素を考慮する一つの手法を図1に示す。各要素-経済的繁栄、環境保護、社会的幸福-は相互に依存しており、ある特定の状況においてはその程度が大きくなったり小さくなったりする。森林の持続可能性の究極の目標は、中央の影付きの部分に示す通り、全三要素の調和がとれることである。
持続可能性の三要素について考えるもう一つの手法を図2に示す。この図が示すように、人間の経済は社会と社会的幸福に依存している。同様に、社会は大気、エネルギー、食料、工業原料などを与えてくれる環境に依存している。こうして、経済は社会に依存し、同様に社会は自然環境に依存していることになる。
森林の持続可能性の本質的な考え方は、環境、社会、経済の論点や理想が、森林に影響を及ぼす決定や行動に含まれ、同時に将来と現在のニーズについても考慮されることである。
図1.持続可能性の要素
環境保護:森林自体が健全に機能すること
社会的幸福:森林に依存する地域社会が社会、文化、政治的に健全な状態
経済的繁栄:森林に依存する人たちの経済的繁栄
(中央)森林の持続可能性の目標はこれら三要素の調和である
図2.持続可能性の「トリプルボトムライン」 経済 社会 環境
出典(略)