崩落少年(3) | 続・崩落少年

崩落少年(3)

力任せに腕を引かれ、岸の上に戻された僕はそのまま斜め後ろに倒れる。そして反動で前に倒れた有希は鋭い眼光で僕を睨む。
「馬鹿じゃないの!?そんな事しても何の意味もないよ!」
「意味ないって…」
「こんな事で澪くんが喜ぶとでもいうの?昊くんは満足なの?」
有希は僕に反論する間さえ与えてくれない。
「あたしはどうなるの?昊くんのお父さんとお母さんは!?」
「無理だよ。僕は"僕"だけど僕は"澪"でもあるんだ」
「昊くんと澪くんは違う!」
「お前に僕らの事なんか分からないだろ!」
「分かんないよ!分かんないけど、昊くんは昊くんだからあたしは好きになったの!別々に生まれた時点で、昊くんと澪くんは別の人間なんだよ?」
「僕は…"僕"?」

一瞬で分からなくなった。僕が信じて来た世界がほんの少しの心の揺らぎで分からなくなてしまった。
だけど、崩れ始めた僕の心の壁の向こうに、小さくても必死に輝く光が見えた気がした。


澪。
まだ生き永らえている僕を許してください。
そして生き永らえてゆく僕を見守っていてください。



(完)