崩落少年(2) | 続・崩落少年

崩落少年(2)

今から丁度一ヶ月前。僕は体を失った。
通学途中の事だった。僕らの乗った電車が脱線し、世界が崩落した。事故が起こった瞬間は覚えていない。その部分の記憶は真っ白だ。
気が付けば、目の前に血塗れの澪が横たわっていた。世界が紅く、何よりも紅く染まっていた。
あの電車には通学、通勤途中の沢山の人が乗っていた。その多くの人が犠牲になったという。
その中に澪もいた。

「やっぱり此所にいた」
「どうして分かった?」
僕は驚く訳でもなくゆっくりと振り向き、岩場を登って来る女性を見据える。
「空と海が一番よくみえる場所だからね」
彼女‐有希は呆れた様に溜め息をついた。
「それだけ?それだけで此所まで来たのか?」
「…何年貴方の事見て来たと思ってるの?これぐらい容易いわ」
「それ一歩間違ったらストーカーだぜ?」
「恋は盲目、なんてね」
「なんてねって…。でも良かったよ。最期にお前に逢えて」
「最後?なんの最後?」
「…僕らは一つだった。一人の人間だったのに、どうして別々に生まれてしまったんだろう?」
「…そんなの分からないけど、きっとなにか意味があるんじゃない?」
「意味…ね。僕がこうして腕を失ったのも意味がある訳だ?」
僕は流し目で自らの左腕を見る。肘から下がそっくりなくなった腕を。
「きっとね…」
「じゃあなんで澪は死ななきゃいけなかったんだ?なんで澪なんだ?」
僕はギプスの右足を庇いながら少しずつ前に進んでゆく。
「どうして僕は生きているんだろう?」
「昊くん…?」
「空と海の様に僕らは一つだから…」
断崖の先端に立ち、松葉を捨てた。そのまま重心を前にずらすとギプスの足では支え切れずに前方に倒れ込んでゆく。
「昊くん!!」