晃 | 続・崩落少年

晃

『今の僕はあの頃の空を一体幾つ覚えいるのだろう


僕はある日、病に蝕まれると共に徐々に視力を奪われ始めた。
失明するのは時間の問題で、身寄りもない僕には死を先刻された様にさえ思えた。
そんな僕にも唯一心の支えがあった。
昔からいつだって優しく僕を見守っていてくれた"空"があった。

今思えば確かに馬鹿げている。自分の頭上に広がる空に恋焦がれていたのだから、本当に笑える。だけどあの頃の僕には彼女しか居なかったのだ。


「僕には親も兄弟も友達もない。この上視力さえも失くそうとしている…。だからいつかこうして君を見上げることも意味を失くすんだ」

病院の中庭で空を仰ぐのが僕の日程だった。

「だからせめて、一秒一秒正確に君を記憶しよう。見上げればいつでも思い出せるように…」

その日から僕は今までに増して空を見上げることが多くなった。視力を失って行く瞳で脳裏に空を焼き付けた。そうすれば、独りと認めなくてすむから。
少なくとも空がいてくれると思ったから…。


それから数ヶ月の内に僕の瞳は光を映さなくなった。

そしていつしか僕が空を見上げることもなくなった。』