ある日の旦那さん
「夕べ、ピアノやっていたよ。あの…
    美人なピアニストがさ…」

はは〜ん。仲道郁代さんでしょって
言ったら、その通りで、比較的近くで
演奏会があるので、行って来ました。
(二人で

ネタバレありますので
ご了承のほどよろしくお願います。


日時   9月16日 (日)
場所   南大沢文化会館(東京 八王子)



何かで聞いていましたが、本日も
解説付きのリサイタル。

初めのベートーヴェンから熱く語ります。

「悲愴はため息のメロディ。」

はあ、そうなんだ。

全体を通しての共通する感想ですが
かなり自由に弾く方かなと思いました。

ソナタとして弾く時はやはり第2楽章は
さっぱりと弾いています。あまり感情移入
しすぎない方が、まとまるということ
でしょう。

また、ペダルの使い方がよく見えて
とても参考になりました。

浅く踏むのも、半分だったり
ほんのチョコッとだったり。

それによって、ニュアンスだけなのか
重なる音の連なりをボリュームたっぷりに
表現するのか、
使い分けがよくわかりました。


トロイメライのメロディは
「天使(4度)と憧れ(6度)で
   できている。」

こういう解説があると、自分が弾く時の
イメージ作りにとても役立ちます。

憧れ(私にとってはユンディ💖)を
持って弾くと自然と明るい艶がある
音になりそうです。


この後、予定にない曲、ブラームスの
間奏曲op118-2を弾かれました。

私も習った曲でしたが、いまいち、
メロディが手につかない感じだったのを
覚えています。

仲道さんはこの曲をロマン派らしく、
メロディを揺らしてきて
聴く人の感情を盛り上げるのが上手い。

また、重くなりすぎない音の広がりが
ありました。

ブラームスが亡くなる5年前に書かれた
作品とのこと。クララ・シューマンとの
葛藤なども考えると、愛だけを歌った
作品ではないのでしょう。

前半最後のドビュッシーの2作品。

なかなか派手な曲で、なんとなく
私もフランスものをいつかは弾きたいと
思っていました。ちなみに今の私の
先生はフランスものがお得意のよう。

喜びの島は弾いてみたいと感じました。


後半はショパンで魅了します。

プレリュードは8曲弾かれました。
雨だれなど、とても洗練されていました。

そして、最後の3曲を聴いたあたりから
あ、この方はピアニストだけど
エンターテイナーなんだなと
思い始めていました。

つまり、ノーマルに弾くのではなく
ちょっと言い換えると、異端な雰囲気
すらある、そんな見せ方です。

ノクターン20番は、ちょっと聴いたこと
がない弾きっぷり。


バラードとポロネーズの解説は
とても良かったと思います。


バラードは敵方に乗り込んで、やがて
自分の国と闘うことになる将校の話

ポロネーズのポロはポーランドを意味する。
式典や戦いに行くような大事な局面で
演奏する曲で、ショパンが演奏すること
で、ポーランドから亡命してきている
人たちがパリで元気づけられたこと。

たとえ皆死んでもピアノがあれば
そこにまた集まって新たな輪が広がる。


ショパンの心を代弁しているようでした。

そんな解説の後に聴くショパンの気持ち
は、格別な意味を持ち始めました。


「自分の心臓は祖国へ届けてほしい」

(2017年撮影  ショパンの心臓が眠る
   ワルシャワ 聖十字架教会)


わかってはいても
ピアノを弾く時は、難しいパッセージや
表現に精一杯で、作曲家の気持ちは
思い出すことはない。

仲道さんの語りは
それを思い直させる意義ある語りでした。

ただ、ポロネーズはとても感情豊かで
思わずほろっときたのですが
やっぱり、ノーマルではないかな、
こうしてみるとユンディの方が
スピードが早いだけでノーマルかな

そんな印象でした。

アンコールはショパンの別れの曲と
エルガーの愛のあいさつ。

とても素晴らしかったです。


一つ気になることがありました。

それは音価です。

つまり、その音の長さのことで、
音の命なのですが
それが短く感じる場面が、
まま、ありました。

たぶん、即興的に感情込めて弾くせい
かなと思いましたが、そんなところに
ノーマルな弾き方とは違う何かを
感じたのかもしれません。

それも、たくさんの経験を踏んできた
熟練のピアニストだからできること
なのでしょう。

(前半の衣装 Facebookからお借りしました)


「中世では宇宙はハーモニーでできている
   と考えられていた。」

とてもインスピレーションを得た
言葉を教えていただきました。

一度は生で聴きたいと思っていた
ピアニスト。

得たものは、とても大きかったです。