13話『失意のコンサート』 | 真実のノート

13話『失意のコンサート』

その時!?


「きゃあ!!!!」

女の悲鳴と、同時に

「キキキィーッ!!!!」

と 言う かん高い、車のブレーキ音が

私達のいる 歩道橋の下から

けたたましく、鳴り響いた!!!!



「何!?」


慌てて 私は 歩道橋の柵から 身を乗り出し 下を見た
「何が あったんだ!?」

五嶋さん 安藤さん 美紀
それだけではなく、歩道橋の上にいた 全員が真下を見ようと、 まるで早い者勝ちの様に 柵に一斉に 飛び付く!!

「いやぁぁー!!!!」


女のけたたましい 悲鳴に近い、叫び声!!

車は 急ブレーキを かけた為
二車線を 潰し またぐ様に斜めに 止まっている
微かに 白い 噴煙が 上がり ゴムが 焼けるような 匂いが 辺り一面に、たちこめた。

その噴煙の中 中央分離滞の植え込みの、芝生の上に 1人の男が うつ伏せで、倒れている

「おい!引かれて はね飛ばされたんじゃないか?」

周囲が 一気に ざわめき出した。
背中に緊張が、電流の様に、走り抜ける!!
私は(ゴクリ)と 唾を飲み込んだ。

その時!?


突然 その男は 身体を 起こし 立ち上がった。すると 男の身体の下には 泣きじゃくる 子供が いた。
「うわぁぁぁん!!!!」

泣き叫ぶ 子供!男は 両手で その子供を 一瞬抱き締めると ヒョイと 抱き上げ 路肩で 腰を抜かした様に 座り込む 母親だろうか? の元に 子供を運んで行く

「ママ!!」

子供は 途中から 男に 降ろして貰うと 赤いスカートをなびかせ、母親の元へ叫びながら 駆け寄った。


「マリ!!」

母親は 大きな声で その娘の名前を 呼ぶと 胸に 飛び込んで来た 娘を しっかりと 抱き締めた。


「パチパチパチ…!!!!」

先程から 事の成り行きを固唾を飲んで 見守っていた 周りのギャラリーから一斉に 拍手が 沸きおこる
私のいる 歩道橋の上でも拍手と歓喜の 声があがっていた。

「いやぁ~ 良かったよね!」

隣の安藤さんも そう言いながら 手を叩く

「本当にね~」

私も そう 言いながら 子供を 助けた 男性に 拍手を送った。

見ると 遮断された道路には 車の渋滞のライトが 光の帯を 長蛇に、光らせていた。


男は 余りの大きな 無数の拍手の音に びっくりしたのか!? 振り返る!!


対抗車線から 来た 車のライトが その男の顔を 照らした。


「えっ!!!!!!」


その瞬間!


私の拍手の手は ピタリと 止まった。


(ま…こ…と!?)



(まさか!!)


考えるより 先に 私の足は
人混みを かき分け 走り出していた。



「すいません!! 退いて下さい!!」

私は 大声で そう叫びながら 歩道橋の階段を 駆け降りる!!


人が多すぎて、思う様に 前に進めない!!


男は 黒っぽい スーツを 着ていた!
髪は 黒く短く…
あの頃の誠とは 全く 違う
だけど
例え、ライトで一瞬照らし出された顔でも…
私が 誠を 見間違う 筈が無い!!

(間違いない!!誠だ!!!!)


人混みの中…ぶつかる人達に 「すいません!! すいません!!」


何度も 繰り返しながら
私は そう 確信していた。
(誠!!誠!!誠!!)


心が 叫ぶ!!


私は 歩道橋の階段の下にたたずむ ギャラリー達をかき分けた。

(この向こうに 誠が いる!!)

そして


私の視界には 子供を抱き締めながら 何度も 頭を下げる 母親の姿が 映った。
そして、照れた様に 子供に手を振り 立ち去ろうとする


「まことぉー!!!!!!」

私は力の限り、声を振り絞
り、叫んだ!!


誠の背広の肩が 一瞬 (ピクリ)と 動く

そして 誠は 振り向いた
誠の視線と 私の視線が

空中で 絡みあった。


「ま…こ…」

私の足が 誠に向かって 一歩前に、踏み出す。


その瞬間!!


「!!!!!!」


誠は くるりと 私に 背を向けた。

私に背を向け 歩き出す 誠

とり囲んでいた ギャラリー達の 分散が 始まる

「まことーっ!!!!」

私は もう一度 誠の名前を
叫んだ!!


けれど…振り向かず 去って行く…誠の背中


(待って!!)


私は 追いかけようと もう一歩の足を 前に出した

その時!?


後ろから (グイッ)と 手を引かれ

「えっ!?」

私は 振り返った


「どうしたの?佐奈ちゃん!!急に 顔色変えて 走り出したから びっくりしたよ!」


安藤さんは そう言うと
握った 私の手に 力を込めた。

「ごめんなさい…」

私は そう安藤さんに 謝ったけど


(それ所じゃない!)


(早く 追いかけないと 誠を 見失ってしまう!!)


私は もう一度 誠の方を 振り返った。


すると


「!!!!!!」


そこには…誠の肩に 赤いマニキュアのついた 爪を乗せ
親しげに話す 女性の姿があった。


(まこと!!)


愕然とする私


誠の横顔に 浮かぶ 笑顔

安藤さんに捕まれた手を 振りほどこうとした 私の頭の 思考回路が…模索を始め 困惑を繰り返す

やがて、誠は 女性の頬に顔を 近ずけ 軽く キスをした。


(………)


その瞬間!


踏み出そうとした 片足が 止まり

私の思考回路は 一気に 停止した。


「佐奈ちゃん!!どうしたの?」


安藤さんの 手が 私の肩に回る。


誠は そのまま 隣の女性と
腕を組みながら 夜の街に
小さく…消えていった。
(ま…こ…と…)
気がつくと 私は 路上に
水滴を まるで 先程から
降りだした 雨粒の様に

一つ 又 一つ と 落としていた。


誠に 彼女がいた!

長い 空白の中に 流れた それぞれの時間

これが 現実…


でも…何より 耐え難かったのは…

誠と 確かに 目線が 合ったのに…

誠は 私に 背を向けたと
言う 事実

微かに…口角を上げる位

してほしかった!


誠は… 私の存在さえ…


忘れていた。


私は あの日から… 貴方を
忘れた事など ただの一度も 無かったのに…


(どうして!? どうしてよぉー!!)


「ひっく!」


私は 大きな しゃくり声をあげた…


(ひどいよ…誠… )


うつ向いた、私の視界は
もう 何もかもが 歪んで まるで万華鏡を 覗き込んだ 時の様に 幻想的に アスファルトの 灰色が 何十にも重なり…浮かび上がっている。

(これは…夢?)


そんな言葉が 頭に浮かぶ

その時


私の顔は 安藤さんの 胸に強く 叩きつけられた。


「佐奈ちゃん!!」


背中に 回された 安藤さんの両手が 私を 窒息しそうな程 強く 抱き締める!!

「安藤さん!?」

突然の行為に、ビックリした私は 安藤さんの胸に 顔を埋ずめたまま 安藤さんの名前を 呼んだ。


「何が、あったのかは、分からない!だけど…佐奈ちゃんが、悲しいのなら 思いっきり 泣いて!」

安藤さんは、そう言うと 更に 私を 抱き締める手に…力を込めた


(安藤さん…)


一旦 止まった 私の涙腺が 再び…活動を始めだす


気がつくと…


私は 安藤さんの胸で

「わぁぁぁー!!!!」


思いっきり 声をあげ


泣き叫んでいた!!