夫は私と正反対で山奥の
小さな町で生まれた
5人兄姉の末っ子
義父は公務員だったから
裕福とは言えないがそれ程
貧しくもなかったようだ
それでも 末っ子の夫が高校に
行く頃は義父も定年退職していたので
生活が苦しいと義母に言われ
学費を出してもらう事が
心苦しかったそうだ
兄姉たちが優秀だったらしく
腕白で聞かん坊だった夫は
かなり先生や周りをあきれさせたらしい
すぐ上の姉は喘息であまり
学校に行けなかったが
成績はトップで義母の
自慢の娘だったらしい
もう一人女の子が欲しくて
あんたを生んだのにと
よく言われたそうだ
育てるのも嫌だったのか
赤ちゃんのころ
一番上の兄が学校を抜け出しては
ミルクを与え育てたそうだ
小学生の頃 「なんで僕は
皆にバカにされるんだろう」
と義母に聞いたら
「そりゃ あんたがバカだからだ」
と言われたそうだ
「ああ 僕はバカだったんだ
そうか…」
と妙に納得したと主人は話すけど…
ひどい母親だなと私は思った
私なら言わない
どんな子も大切なわが子
その子供を傷つけるような言葉
私には言えない
突拍子なことする夫は
義母の恥だった
いつも夫を突き放したような
態度をとる義母だったらしい
結婚した時違和感を感じた
親子がとても他人行儀な冷たい印象
初めて会ったとき
私を一切見なかった
勿論言葉も交わさなかった
息子を取られた焼きもち?
ではなくて
私と結婚を決める前 夫を
婿養子に出そうとしていたらしく
それをダメにした私が
気に食わなかったようだ
夫は自分に自信が無かったから
かも知れないが
かなり努力もしたようだ
亡くなってからたくさんの
資格の束が出てきた
仕事関係で とある
発明をして特許を取っている
ことも分かった
夫は一切家族にも 私にも
自慢する事はなかった
私に威張り散らすことも一切なかった
不器用で上司へのごますりも
立ち回りも下手で 出世が
他の人より少し遅れちゃった
と話してくれた事もあった
別に 不自由なく暮らしていけるから
出世なんてどうでもいいよ
でも ちゃんとグループ会社で
統括 所長と言う立場で
いくつもの部署をまとめてたんだよね
仕事の事なんて余り話さなかったから
どんなふうに仕事していたか
知らなかったから
貴方は立派だったよ 頑張ったよ
今さら褒めてあげられないけど
21歳で結婚した私は
それこそ何もできなくて
本を見ながら料理を作るから
失敗もするんだけど
何も言わず食べてくれた
旨くできた時は「うまい!!」と
一杯褒めてくれたし
作るのが嫌になって外食が続いても
一切 文句 言わなった
そんな夫のために一生懸命
料理も勉強したし
誕生日のケーキも
週末のパンも
全部手作りで頑張った
夫が喜んでくれたから 何でもできた
喜んでくれる顔を見るのが嬉しかった
夫が居なくなって何もやる気の出ない
毎日が続いている